【イーグル・ジャンプ】
絶対にあきらめない心が力をくれる映画

イーグル・ジャンプ　映画あらすじ

幼いころから足が悪くても運動音痴でも眼が悪くても、とにかくオリンピック出場の夢を追い続けてきたマイケル・エディ・エドワーズは、ある日スキージャンプでイギリス代表になることを決意。その理由は、イギリスにスキージャンプの有力な選手がいなかったからだ。しかし、世界レベルの実力でも危険な競技とされるスキージャンプを、経験のない人間が簡単にこなせるわけがない。エディは強化合宿のため訪れたドイツの練習場で大怪我をしてしまう。そんな彼がその場所で出会ったのは、かつて天才的なスキージャンパーと言われ、今はすっかり落ちぶれたブロンソン・ピアリーだった。エディはピアリーにコーチとして自分を指導してくれと懇願するのだが……。

イーグル・ジャンプ　映画レビュー

こんな映画を観てしまうと、自分の頑張りの足りなさをつつかれている気分になる。これまで自分があきらめてきたことを何ひとつあきらめずに続けていたら、どんな結果が生まれ自分はどんな風に変わっていたのだろう。

この映画の主人公は実在する人物――マイケル・エドワーズだ。根本的に不器用な彼が決してあきらめずに実現したのは、イギリス史上初となるスキージャンプのオリンピック代表選手になったことと、スキージャンプのイギリス記録保持者になったこと。そして、世界的に見ると最低ランクであったにもかかわらず、オリンピックを見守っていた多くの人々から愛されたということだろう。映画はスキージャンプに焦点をあてているが、ほかにもスピードスキーやスタントジャンプでの記録を保持しているらしい。

そう聞くと、普通はよくある実話に基づいた感動ドラマだろうと想像するだろう。それに実在する人物の半生を描いているのだから、物語はいじりようがない。

だが製作に『キック・アス（2010）』『キングスマン（2015）』のマシュー・ヴォーンが名を連ね、監督は俳優として『キック・アス（2010）』にも出演しているデクスター・フレッチャー、そして主役が『キングスマン（2015）』でエグジーを演じたタロン・エガートンと聞いちゃあ、観ないわけにはいかないではないか。どんだけエッジの効いた筋書きとブラックなユーモアを散りばめるのかとワクワクした。

ところが鑑賞してみると、思いのほかストレートなスポーツ感動ものだった。どうやらこの映画を本格的に制作しはじめる前、マシュー・ヴォーンは『クール・ランニング（1993）』を観た自分の子供から「どうして最近こういう映画がないの？」と聞かれ、その質問がもっともだと思ったらしい。

『クール・ランニング（1993）』は、雪とは無縁の国ジャマイカのボブスレー男子チームが、冬季オリンピックに初出場するという笑いあり感動ありの映画だ。物語はフィクションだが、ジャマイカチームが初参加したのは実話である。しかも、彼らが出場したのは今作品のマイケル・エドワーズと同じく、1988年に行われたカルガリーオリンピックなのだ。

そこで、ふと思い出したことがある。『運命じゃない人（2005）』『アフタースクール（2008）』『鍵泥棒のメソッド（2012）』と捻りの効いた映画をつくることで知られる内田けんじ氏が、僕は『ローマの休日』などわかりやすい映画が大好きだ、と言っていたはなし。なんとなくそのエピソードを、マシュー・ヴォーンと今作品との関係性とを重ね合わせて考え、似ていると感じた。

ちなみに、この映画の見どころは実話に基づく「決して夢をあきらめない感動物語」という部分だけではない。いったいどうやって撮影したんだと思うようなスキージャンプシーンもかなり見ごたえがある。特典映像でその方法が明かされているが、なんと2人立て続けにジャンプさせて、後ろ側を飛ぶジャンパーのカメラで前を飛ぶ人を撮影している。それゆえに、この映画の撮影には一流のスキージャンプ選手とコーチが参加したそうだ。どんなに凄腕のスタントマンであろうと、この競技だけは精通した人でなければ難しいそうだ。

そりゃそうだ、あんな高さから落下するんだから。スキーを足につけているから競技として見ているけれど、冷静になって考えたらとんでもないことだぞ。

とまあ、そんなスキージャンプの映画で“あきらめない力”を養いたいときは、ぜひご賞味あれ。ブロンソン・ピアリーを演じたヒュー・ジャックマンの角刈りも、80年代の音楽も、クリストファー・ウォーケンの登場で実は現場そのものが緊張していたというシーンも楽しめるはずだ。

 

ライター中山陽子でした。

 

イーグル・ジャンプ（2016）

監督　デクスター・フレッチャー
出演者　タロン・エガートン／ヒュー・ジャックマン／クリストファー・ウォーケン／イリス・ベルベン

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