エコーズ
ケヴィン・ベーコン主演作品。あのメガヒット映画に埋もれてしまった良作ホラー
『エコーズ』あらすじ
そんななか、近所の住人たちが集まってパーティーが開かれる。その余興で催眠術をかけられたことを境に、トムは奇妙な予知夢や、何か言いたげな少女の霊など、不可解なものを目にするようになる。
そのせいで、徐々に精神が蝕まれていくトム。そんな夫を心配し、疲弊していくマギー。息子のジェイクだけは、いつもと変わらない様子で、事の成り行きをわかっているようにも見えた。
そして、ついにトムの前に現れる少女の謎が明らかになったとき、すぐそこに大きな危険が迫っていた――。
『エコーズ』レビュー※ネタバレします!
● タイミングが悪かった? 1999年はホラーの当たり年
この映画の公開は、本国アメリカでは1999年。日本での公開は2005年です。
1999年と言えば、社会現象にもなった『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や、M・ナイト・シャマラン監督・脚本の世界的なメガヒットホラーミステリー映画『シックス・センス』の公開年。
しかも本作は、『シックス・センス』より1か月遅れて公開という、かなり苦しい状況に置かれていました。「霊が見える子ども」「霊が何かを訴えている」「霊が見える力で〇〇を救う」という点が似ているので、どうしても後発作品に既視感が生まれてしまうからです。
● 人間の “闇” が、霊と一緒に顔を出す「心霊ミステリー」
でも、実際にはまったく違いますよ。
まず、子ども(ジェイク)は霊が見えることをまったく恐れてはいないし、全体の流れを冷静に見通すことも、無理のない範囲で目の前にある状況をコントロールすることも可能です。親たちも、そんなジェイク君に幾度か導かれ、助けられていました。
あまりにも大人びているので、大人の俳優さんが、CGで子どもビジュアルになっているかと思いましたよ(と言うのはウソだが)。演じたのはザカリー・デヴィッド・コープ君です。
『シックス・センス』のような大どんでん返しも、驚くような展開もありませんが、予知夢や心霊現象の演出の妙と、住宅街に隠された未解決事件の謎を追うプロットが、うまい具合に重なっています。
つまり、日常の裏にある人間の闇が、心霊現象を介して表出していく「心霊ミステリー」としてのおもしろさが、この作品にはあるのです。
● デヴィッド・コープ監督のセンスに唸る
また、この作品では終盤に、「生きている人間も、死者の霊も、平穏を取り戻す姿」が効果的に描かれています。
たとえば、バタバタと引っ越しを進める夫婦が、すれ違いざまに手を絡ませるシーン。セリフはなく、画面にはふたりの手から腕までしか映っていませんが、その描写から多くを感じ取ることができます。
夫婦の絆は強かったのです。「むむぅ……手だけの演出なのに余韻がハンパねー」と思わずうなって唸ってしまいましたよ。
また、霊が「普通」を取り戻す状況を、四コマ漫画みたいに描いたシーンも、すごく “さりげない” のですが、デヴィッド・コープ監督のセンスを感じました。
● 底なし狂気君な夫と、高レジリエンス妻
トムを演じたケヴィン・ベーコンさんが、取り憑かれたように自宅の庭や床を掘り返していくシーンでは、「どこまで掘り続けるんだ」という底なしの恐怖がありました。
その際の、大げさな顔芸を排除した「わずかに狂気がにじんだ表情」が、よりいっそう怖さを引き立てていたように感じます。
ベーコンさん(というとなんか朝食みたいだが)は、本当に “底なし狂気君” の演技がうまい。
そんな夫に妻のマギーは、“強靭なしなやかさと底なしの愛” をもって対抗します(演じたのはキャスリン・アーブさん)。
さすがに疲弊はしているものの、怒りをぶちまけたり、泣き叫んだり、家を飛び出したりするようなことはしません。「はぁ~(溜息)。オーケー。なるほどね。……で、〇〇なの?」と、諦めたように語りかけながら、自分がやるべきことをこなしていきます。
そして、夫の元に、息子の元に、自分たちの家に、必ず戻ってきます。
ギュ―――――ンとしなっても、絶対に折れない竹のように、彼女の心もしなりまくって折れそうになっても、ちゃんと元通り。マギーの心は折れないのです。
家族への深い愛情と、強靭なレジリエンスの持ち主であるマギーに霊感はありませんが、だからこそ最強と言えるかもしれません(目の前に幽霊がいても、彼女は絶対に気づきませんから😅)。
● エンドロール曲でこの映画がスルメ状態に
この映画に魅力を感じた要素は、物語や演出、キャラクターや俳優さんらの魅力だけではありません。エンドロールで流れたPoeの『Hello (Stir of Echoes Remix)』も非常に魅力的でした。
この曲は、ネット回線やパスワード越しに、見えない相手(死者、あるいは失った大切な人)と繋がろうとするような不思議な曲。ミステリアスで、気だるくて、少し皮肉っぽくて、キュートな印象です。
そんな複雑さは、原曲にも、この映画のためにリミックスされた音源にも同じようにあります。なので、素人の筆者には、原曲とリミックス曲の違いがあまりわかりませんでした。
なんにせよ、同曲で物語が閉じられたことで、映画では描かれなかった「ウンザリするほど不穏で、でも興味を刺激するような未来」が、なんとなく脳裏に広がりました。
また何か起こるような不安と期待。耳に残り、やたらと後を引く……。本作を観終わってからは以下を繰り返し聞いているので、恐らくこの曲の再生回数を劇上げしているのは筆者です。笑
トリップホップ/オルタナティヴ・ロックのジャンルだというこの曲。
歌詞のなかには「MOD そこにいますか?」という一文があります。これは、1990年代初頭に実在した、アメリカの伝説的ハッカー集団を指しているという話。
ほかにも、「トーンを設定して同期してください」「切断されたモデム」など、1990年代半ばの「インターネット黎明期」のテクノロジーや文化が、色濃く反映されています。
このように、噛めば噛むほど、知れば知るほど味が出るスルメ曲と、スルメ映画。(この表現でいいのかな?😅)
筆者のお気に入りが、またひとつ増えました。
(ライターgatto)
『エコーズ』(1999)
監督:デヴィッド・コープ
出演者:ケヴィン・ベーコン , キャスリン・アーブ , イリーナ・ダグラス , ザカリー・デヴィッド・コープ , ケヴィン・ダン


