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CINEMAバリQ

今日の1本 パーフェクト・ホスト 悪夢の晩餐会 (2010) gattoのレビュー

パーフェクト・ホスト 悪夢の晩餐会 映画レビュー

本当の恐怖はこれからだ…。
なんて、ついにはウキウキしだしてしまう自分に気付くと、一体どっちの味方なんだか、何が常識なんだか、もしかして私も変態?!と、色々わからなくしてしまう映画「パーフェクト・ホスト」。
まあ、結局のところ、最終的に奇妙奇天烈な変態ホストの魅力にまいってしまうという感じ、それがこの映画だ。

最初は、いかにも素行が悪そうな男の逃亡シーンから始まる。
しかし、この一見、他者に危害を加えそうな男がまた、とことんついてない。
これがある意味、後に展開していく物語への付箋でもあるのだ。

傷を負っているため一時的な潜伏先が必要な男は、お金持ちそうな家を物色しながら門を叩き、小芝居をして中に入り込もうとする。
「ああ、ダメダメ!銀行強盗なんだから中に入れないで…!」と観ている人間の願いむなしく危険な男は、上品そうな中年男性の家に入り込むことに成功する。

ここまでくると誰もが想像するだろう。
真面目そうな青年を装った強盗犯が途中から凶暴性をあらわにし、家に招き入れてしまった家主の地獄が始まるのだろうと…。

ちなみに、この段階にくるまで強盗犯の回想がチョイチョイ映し出されるのだが、これがグイグイ彼の愛すべき部分をサブリミナル効果で印象付けていく。
そのせいで、徐々に「う〜ん、彼にはそうするしかなかったのかな…」と思わず同情的になってしまう始末だ。
しかし、リッチな家に住む紳士な中年男性に対し牙をむく姿は、もはや何をしでかすかわからない男にしか見えない。
ああ、親切な中年男性が危ないっっっ。

が!しかし!…ホストを演じるのは、舞台出身のデヴィッド・ハイド・ピアース。
先日の、渡辺謙氏ノミネートで話題になったトニー賞を2007年に受賞している。

また、11年間放映されていたテレビドラマではコメディシリーズ部門でプライムタイム・エミー賞助演男優賞を受賞しているようだ。
なるほど、舞台でも認められ、コメディもできる実力派の俳優さんだったのかと納得。
何故ならば、彼の魅力なくしてこの映画は成り立たないからだ。
また、ついてない可哀相な強盗犯の役はクレイン・クロフォードが演じる。

少し無機質でリッチなインテリアのなかで、家主を支配しようとした強盗犯がふいに、思いっきり満面の笑みで、一人写真に写る家主の姿を目にしたあと状況は一変する。
もちろん、この写真も付箋である。

あとは、じわじわグイグイ強烈な引力を持つホストの、パーフェクトな変態っぷりを十分に味わってほしい。
中庭のプール、リッチな食事、イカれた友人たち、そしてアルバム…。
思わず笑ってしまうほどの完璧な変態パフォーマンスに、スタンディングオベーションが巻き起こるだろう(巻き起こらないか)。

異常な世界に引き込まれてしまったら最後、すっかり変態おじさんの虜になってしまうという非常に危険な映画である。
バスルームのシーンでは「新婚さんいらっしゃい」の三枝師匠のごとく、座っている椅子から転げ落ちそうになってしまったわ。
厄介なことに、もはやラストシーンを迎えると「次はどんだけ変態になってくれるんだろう」とワクワクしてしまう。心してかかるべし!
是非ご賞味あれ。

映画と現実の狭間でROCKするgattoでした。

パーフェクト・ホスト 悪夢の晩餐会

監督: ニック・トムニー
出演: デヴィッド・ハイド・ピアース, クレイン・クロフォード, ナサニエル・パーカー, ヘレン・レディ

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