【トゥモロー・ウォー】
既視感バリバリなのに、なぜか心をつかまれた親子SF&エイリアン戦争の話。※ネタバレあり
未来で待っていたのは、成長した娘。そして、希望と絶望だった
【あらすじ】
そうしたなか、思うように転職活動ができず落ち込んでいた元軍人の生物学教師ダン。彼も徴兵され、未来へ転送されることになる。だが、そこで司令官を務めていたのは、美しく、たくましく成長したダンの娘ミューリだった。 生物学が専門のダンは娘と協力し、普通の毒では倒せないホワイトスパイクのメスをも倒す毒の開発に成功。
が――しかし、最終的な段階で思いもよらぬ事態に陥る。それは、ダンとその仲間が「あまりにも危険なミッション」を迫られる事態にほかならなかった。
既視感があるのに新しい。ちょいショボもあるのに重厚。矛盾が心地いいSFアクション
【レビュー】※ネタバレします!
● 既視感はあるが新しい?
この映画を鑑賞したとき、あ、これ――
『インターステラー』(2014)と、
『オーロラの彼方へ』(2000)的な?
と言う感覚がありました。自分にとっては2作品とも大好きな映画。受け取ったのは “いい” 既視感とでも言いましょうか。
時を越えて “出会えないはずのタイミング” で親子が出会う(やり取りする)こととか、SFなのによりリアルな危機感(地球環境の悪化、戦争、連続殺人事件など)に襲われることとか……。
また、やたら動きが速くて狂暴なTレックス(あくまでも映画で描かれるTレックス像)とエイリアンが合体したような「ホワイトスパイク」が、人間を捕食して増殖しまくるあたりは、よくあるモンスターパニックやゾンビ映画にも共通する部分があります。「はいはい、これ系ね」的な。
それなのに、新しさも感じた理由は――
SF作品でありながら、最終的な解決方法がとても古典的だったからからかもしれません→(人間が出向いて、その場にいることを目視し、眠っている間に直接毒を盛る)
なんというか、アナログだけにプロセスに質量を感じたのです。つまり、軽い印象ではなかったということ。
正直言えば、宇宙船のシーンは規模感に多少の物足りなさ(訳:しょぼさ)はあったんですけどね。
また、じつは「ホワイトスパイク」が大昔に不時着した宇宙船の貨物(生物兵器)だったとわかり、それがあると想定されるロシアの氷河(ってどこやねん)まで行って見つけて毒殺&爆破。で、アメリカ政府がちゃっかりお手柄を横取りして「あれは当局の精鋭が~」とか。
国際問題に発展せんのかいな、それ。
――な展開をぶちかます作品です。
● 下手な講釈がないのも◎
そして、この映画で気に入ったところは「はい、未来から来ました~。助けを求めてます。もう物語をどんどん進めますよ」てな具合に、“未来からの転送” に関して下手な講釈を垂れずに話を進めてくれた部分です。
子孫が助けを求めにやって来たことが起点なので、観衆はその次の展開を観たいわけですが、時として、それがどんな技術で、どんな経緯があったのか説明する場合がある。その内容が秀逸ならいいのですが――
単につじつまを合わせようとして、説明のための説明が入ったりすると、「いや、この話いったいなんだったんだっけ?」と脳のワーキングメモリがパンパンになってしまうわけですよ。
そうしたことから、この映画のように「起こったこと」はまず事実として受け止め、そこから話を進める姿勢。筆者は意外と好きです。
ただ、にわか訓練で一般人まで戦場に、しかも敵はエイリアンという状況を「真面目に軍が遂行」しているあたり、
「それ、どうスっころんでもありえね~~~~」なんですがね。
● ムキムキおじいちゃん J・K・シモンズ
すみません、見出しの「ムキムキ」というワードはこの章にほぼ関係ないのですが、この事実も無視できないので一応挙げときました。
ご存じのとおり J・K・シモンズ氏はムキムキおじいちゃんで有名ですが、やっぱりこの映画でもムキムキムッキムキでした。彼は、ダンのお父さん役です。普通なら、高齢の父親を危険なミッションに参加させるなどありえない話しですが、この人ならやってくれそうな感じです。
ってか実際にやりました。
ラストの、「激強ホワイトスパイクのメス」との死闘シーンです。
親子が力を合わせて、「激強ホワイトスパイクのメス」を攻撃しながら親が子を、子が親を助け合うのです。ホワイトスパイクのメスもどんだけ強いんだ、という感じでしたが、この親子も負けずに最強。
で、最後の最後、謝罪と別れの言葉を告げ「親」が自らを犠牲にしようとしたとき――
そうはさえないぬーーーーーーーん
な感じでダンがタックルしたんだったかな? とにかくぶっ飛ばして、ぶっ刺して、再度トドメを刺したのです。
主人公らがしっかりと最後まで戦い抜いて(仲間は何人か失ってしまったのですが)、お涙ちょうだいで終わらせなかったことで納得感と爽快感をしっかりと味わえました。
ちなみに死闘の場は先述したようにロシアの氷河(ってどこやねん)。真っ白な空間で、真っ白いエイリアンと闘い抜くところ。
まったくジャンルは違うのですが、『ウインド・リバー』(2017)をふと思い出しました。
やり切ったことと、白銀の世界、そこに居た人の強い信念しか共通点はないんですけどね。
(ライターgatto)
トゥモロー・ウォー(2021)
監督:クリス・マッケイ
出演者:クリス・プラット , イヴォンヌ・ストラホフスキー , ベティ・ギルピン , J・K・シモンズ


