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今日の1本最後のブルース・リー/ドラゴンへの道(1972) gattoのレビュー

今日の1本最後のブルース・リー/ドラゴンへの道 映画レビュー

テレビをつけると身勝手な犯罪のニュースで腹が立つばかり。
なので、我らが師匠の映画を観てスッキリすることにした。

この映画はブルース・リーが企画・監督・脚本・武術指導・主演の5役を担ったことは有名である。
香港映画としては、初めての海外ロケだったらしい。

あらすじとしては、中国拳法の達人である主人公(タン・ロン)が知り合いに頼まれ、ローマで中華料理店を営むも、マフィアに目をつけられ立ち退きを迫られている美しい娘を助けに、はるばる香港からやってくるというもの。

海外で勃発している立ち退き問題を、香港の山奥から出てきた男が中国拳法でなんとかしようという設定には、もはや潔さを感じてしまう。

この「ドラゴンへの道」は珍しくコミカルなブルース・リーを見ることができる貴重な映画である。
彼と親しい人々は「この映画の明るい雰囲気が、最も“素”の彼に近い」と伝えているそうだ。

途中、本当に必要なのかと思える「タン・ロンの、おっちょこちょいローマ珍道中〜」的なシーンがたくさん映し出されるが、のちに見せるアクションシーンでの気迫や、涙なしでは観れない伝説的なコロッセオでの戦いシーンとのギャップを引き出すことに役立っている。

ブルース・リーの映画を観ていると「アクションで語る」という言葉が脳裏に浮かぶ。
敵を睨みつけたとき、ブッ飛ばしたとき、蹴り技を決めたとき、ヌンチャクで神業的な動きを見せたとき、相手に対し同情的になったとき、敬意を表したとき。

戦いの場であるがため終始無言だが、そこにはあらゆる言葉が空中に舞い、ついには言葉という存在を超えて観ている人のハートに猛スピードで「語り」が飛び込んでくる。

もはや逃れようがない。あの戦いっぷりを観たら、男も女も惚れるだろう。というか惚れて欲しい。惚れてくれ。

物語が佳境に入ると、お決まりのようにマフィアが刺客をあちらこちらから呼び寄せる。

そして、そのなかには胸毛と背毛がもうもうと生える、アメリカ史上最強の男といわれたチャック・ノリス兄貴もいる。

このチャック兄貴と、ブルース師匠の戦いは、もちろんこの映画のメイン・イベントであり、ファンの間で永遠に語られるであろう伝説の戦いだ。

しかしっ、それよりもなによりも日本人の空手家役として登場する、韓国の武道家であり俳優の、ウォン・インシック氏の日本語が強烈だ。

「おまぃはぁ、タン・ロンかぁ」というセリフが2度あるが、2度とも日本語がわかる人ならば椅子から転げ落ちるだろう。
日本語がヘタとかそういうレベルではない。もはや、これも伝説だ。

可哀相なことに、映画のなかでウォン・インシック氏はもう一発日本語のセリフを言わされている。ブルース師匠にブッ飛ばされたあとにこう言うのだ!

「ぁ…あ…いた…あ〜いた(痛)…」

…武道家は、戦いの最中に言わないだろう、それ。

まあ、そんな突っ込みも、チャック・ノリス兄貴以外の敵がやたら弱いという突っ込みも、心から愛せる映画「ドラゴンへの道」。

映画としては「燃えよドラゴン」も大好きだが、ブルース・リーの顔つきや体つきは、この映画が一番好きだ。

用心棒として香港の山奥からやってきた純粋な男が、修復不可能なぐらい引っ掻き回して帰っちゃった的な感じがしないでもない映画だが、根底にあるものは間違いなく勧善懲悪。

日頃のニュースで被害者が苦しむ世のなかを嘆き、怒りが湧いたら、是非観て欲しい。

映画と現実の狭間でROCKするgattoでした。

最後のブルース・リー/ドラゴンへの道

監督 ブルース・リー
出演 ブルース・リー

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