【コンティニュー】
ジョー・カーナハン節×グリロ兄貴の筋肉哲学ループ
死のループで “生きる意味” を問うタイムループアクション!
【あらすじ】
死ぬたびに同じ朝に戻るタイムループに囚われたロイは、繰り返す体験のなかで状況を分析し、次第に敵の動きを把握していく。
この異常な現象の背後には、元妻ジェマが関わる極秘の量子装置「オシリス・スピンドル」が存在していた。装置を悪用しようとする軍属科学者ヴェンター大佐の陰謀を阻止するため、ロイはタイムループを利用して戦闘スキルを磨き、真相に迫っていく。
果たしてロイは、この終わりなき死のループから抜け出し、愛する人々と世界を救うことができるのか――。
「諦めない男」がループの果てに見つけたものは――
【レビュー】※ネタバレします!
● タイムループ “なのに” 爽快アクション
死ぬとある地点に戻るタイムループものは、
- 主人公が何度も生き返る安心感からか?
- あるいは、ゲーム的なリトライ感覚がクセになるからか?
多くの映画で繰り返し取り上げられています。筆者も、その魅力に惹かれるひとりです。
……が、つい最近、あまりに退屈で最後まで鑑賞できなかったタイムループ映画を観てしまい、心のなかでは「ほんとにおもしろいの~?」と、やや疑心暗鬼になっておりました。
ところがどっこい
この映画は、同じタイムループものでも状況のバリエーション(さまざまな視点、アングルの変化、ちょっとした状況のズレなど)がしっかりと効いていて、飽きるヒマがありません。
コメディ要素も強く、何よりそれを渋マッチョなグリロ兄貴(フランク・グリロさん)が演じるものですからグッときます。
また、心をつかまれるのは、グリロ兄貴が単なる「巻き戻しゲームのプレイヤー」ではなく、“死を繰り返すからこそ、自分を再定義する男” として描かれているところ。
つまり――彼は同じ日を繰り返しながら、昨日とは違う自分になることを選び続け、自分というキャラクターを毎回レベルアップさせていくんです。
一般的なループものは、精神的に追い詰められる展開が比較的多いような気がしますが、本作は「死ぬたびに強くなる」成長型。リアルなゲーム感覚を味わえるうえ、繰り返しが苦にならない爽快な設定です。
さらに――やりすぎれば興ざめしそうな「殺し屋たちのイカれ具合」も、本作はギリギリのラインで絶妙な塩梅に抑えています。
まあ……、決めゼリフ大好きなアジア系の刀使いキャラなど、若干の違和感はあるものの、物語にはしっかりと入り込めるはずです(たぶん)。
● タイムループは「過去への後悔」をどう描くかの物語装置?
この物語の主人公は、美しい妻とかわいい子どもに恵まれながら、良き夫でも良き父でもありませんでした。
しかし、終わりのないタイムループに囚われたことで、ただ脱出を目指すのではなく、目的を持って「過去の過ちを清算しながら、やるべきこと・やりたかったこと」を実行していきます。
世界の終わりが迫るなか、息子と限られた時間を過ごす姿は、とても美しく胸を打つものがありました。
この映画は、ゲーム感覚でタイムループを楽しませつつ、「いまの自分は、過去の自分と和解できるのか?」と問いかけてきます。
なお、ラストシーンは曖昧で――タイムループを経て、男として、夫として、父として、ほぼ完璧になった主人公が、「これで最後かもしれない。でも、もしかしたら助かるかもしれない」というわずかな希望を残して、量子装置へと消えていきます。
スカッとさせて、笑わせて――――そして、ラストはほんのり切なく、「いまを大切にしろ」と、静かに教えてくれるのです。アクション好きも、タイムループ好きも、ちょっと人生に疲れた人も、ぜひ体験してほしい、痛快でちょっぴり切ない一本です。
ちなみに、グリロ兄貴がバーのトイレでパンツ一丁になり、自分に仕込まれた追跡装置を探しているシーンが筆者のお気に入り。
「追跡装置はいったいどこに仕込まれているんだ!」と全身をくまなく探すうち、ちょうどパンツのなかをまさぐっているときに、バーの客で知人がトイレに入ってきてしまいます。
そこでグリロ兄貴が「ああ、ちょうど良かった! 一緒に探してくれっ!」と声をかけると、知人は「やべー😨」という表情で静かに立ち去る……。
何を探させられると思ったんでしょうか。
ぜひ、お楽しみください(そこかーい)。
出演者も豪華です!
(ライター中山陽子)
『コンティニュー』(2020)
監督:ジョー・カーナハン
出演者:フランク・グリロ , メル・ギブソン , ナオミ・ワッツ , アナベル・ウォーリス , ミシェル・ヨー