ハプニング／映画あらすじ・レビュー・ネタバレあり（視点を変えれば面白いM・ナイト・シャマラン作品）

ハプニング　あらすじ

ミツバチが全米各地で消える現象が起きて間もなく、次々に人が命を絶つという異常現象が起こる。
バタバタと人が死んでいくなか逃げ惑う人々は、全く原因のわからない死の恐怖に追い詰められる。しかし、それは思いもよらないものの攻撃だった…。

ハプニング　レビュー（ネタバレあり）

この映画のテレビCMが流れたとき、バタバタと人が建物から落ちてくるシーンを目にしてゾッとした。
監督がM・ナイト・シャマランだけに超常現象かと思ったが、ふたを開けてみると“無きにしも非ず”のことだった。

しかし、この映画は残念ながら、ものすごく評価が低い。
それはひとえに監督への期待感や、インパクトのある予告でハードルを上げてしまった結果かもしれない。

また、本来ならば、もっとキュートで魅力的なゾーイ・デシャネルが生かされる役柄ではなかったし、主人公の友人を演じたジョン・レグイザモも、彼の魅力や演技力を生かせる役柄ではなかった。
それに加えて、人々を死と恐怖に追いやっているものが曖昧模糊としていて、それが見えてきたとしても「なんじゃそりゃ」ってことに、なったのかもしれない。

だが、私はとても興味深く鑑賞することができた。先述した通り、超常現象ではなく“無きにしも非ず”のことだからだ。
また、得体の知れないものに追い詰められる恐怖も体感できる。

物語のなかでは、人間を攻撃しているのは植物であるという見解が生まれていたが、それは現実的に起きないことではない。
森林浴をするとリラックス効果が生まれるのは、「フィトンチッド」という香り成分によるものだ。
実はこれ、樹木が身を守るために出す成分である。つまり、自分を攻撃する微生物や細菌、昆虫などを殺す働きがあるのだ。

また、植物は、強いストレスや病気になった場合「サリチル酸メチル」などの香り成分を出し、周囲の植物に知らせるそうだ。
すると、周囲の植物は防御や抵抗力を高めるのだとか。

ならば、もし、集団の人間が脅威をもたらすと植物が判断して、攻撃を始めたらどうなるだろう。
周囲の植物が伝達しあうので、どこへ行こうと植物がある限り攻撃はやまないのだ。
そう考えれば、この映画のようなことは有り得ないと断言しきれない。

また、この映画のなかで人々は、突然自ら命を絶ち始める。加えて、いきなり方向感覚がおかしくなり後ろ歩きしだすのだ。
これだって、有り得ないことではない。

自殺願望が生じると脳の海馬などに異変が起こる。
その海馬は、脳の嗅内皮質という場所から情報を得るのだが、その嗅内皮質は文字どおり臭いを感じ取る部分だ。

そして、嗅覚だけは他の五感と違い大脳に直接届くようになっている。
おまけに、この嗅内皮質は、人の方向感覚に大きく関係していると研究結果が出ているそうだ。
なんとなくではあるが、映画の内容とつじつまが合っているではないか。

植物から発せられる物質が、嗅内皮質を通じて海馬を損傷させたり、委縮させてしまうほど強烈なものだったら…？
ちなみに、通常は10％しか動いていない脳が100％動く世界観を描いたリュック・ベッソン監督の「LUCY／ルーシー （2014）」では、スカーレット・ヨハンソン演じるルーシーの髪の毛が急に伸びたり黒くなっていたが、これも絶対有り得ないことではない。

人間には、自分の意思ではコントロールできない自律神経というものがある。
この神経には2種類あって交互にはたらき、人間の生命を維持するために心臓を働かせ、血液循環や、栄養の消化・吸収、補修などをコントロールしてくれる。

もしも、これを自分の意思でコントロールできたらすごいことになる。
たとえば、早く髪の毛を伸ばしたければ、頭皮へ集中的に栄養を送り代謝を早めてしまうのだ。
また、髪の毛を黒くする物質（ユーメラニン）の合成を促すために、それに必要な物質（チロシナーゼなど）を分泌させることができるならば、いきなり髪の毛が黒くなるのも絶対に無いとは言い切れない。

とまあ、このように、「ハプニング」ならば自然科学、「LUCY／ルーシー」ならば脳科学の視点で鑑賞してみると、もっと楽しめるかもしれない。
ただし、しつこいが、この映画でゾーイ・デシャネルは「500日のサマー （2009）」のような小悪魔魅力を発揮していないので、その部分は期待しない方が良い。

生粋の悪ガキだった過去がもはや思い出せないほど丸くなったマーク・ウォールバーグは、今回まじめな教師役だ。是非ご賞味あれ。

映画と現実の狭間でROCKするライター中山陽子（gatto）でした。

ハプニング（2008）

監督　M・ナイト・シャマラン
出演　マーク・ウォールバーグ／ゾーイ・デシャネル／ジョン・レグイザモ／アシュリン・サンチェス

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