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チャッピー/映画あらすじ・レビュー(「第9地区」「エリジウム」のニール・ブロムカンプが手掛けたSFアクション)

チャッピー あらすじ

治安の悪化が加速したヨハネスブルグは、兵器メーカー(Tetravaal社)が開発製造した高性能の警察ロボット「スカウト」の導入により、犯罪率の低下を成功させた。そんななか、「スカウト」開発で成功をおさめたエンジニアのディオンは、感情を持ち成長できる人工知能を開発するが、社長に却下されてしまう。しかし、彼がギャングに誘拐されたことにより、思わぬ場所で高レベルな人工知能を持つチャッピーが生まれる。その陰で、ディオンに激しく嫉妬する元兵士のエンジニア、ヴィンセント・ムーアが不穏な動きを見せる。

 

チャッピー レビュー

「第9地区(2009)」では温厚で理知的なエイリアンパパの一人息子、リトルCJのかわいさにすっかりやられニール・ブロムカンプのファンになってから、「エリジウム(2013)」へ続き、そして、待ちに待っていた映画「チャッピー」だ。

 

この映画のポスター(ほかDVDパッケージなど)で描かれているような、銃を立てかけた壁に、ちっちゃい子供みたいにお絵かきしているロボットの姿には胸がキュンとするが、“…ボクを…なぜ怖がるの?”のキャッチコピーは映画の中身とはだいぶズレている。

 

このキャッチコピーだと、無垢なロボットが最終的には「キングコングみたいに大暴れするなか総攻撃を受ける」みたいな印象ではないか。

 

決して、そういう流れではないのだ。

 

精魂込めて開発したにもかかわらず、感情を持ち成長する人工知能のロボットを社長から却下されたことで、エンジニアのディオンは廃棄寸前のロボットを持ち帰り、秘密裏にテスト起動しようとする。だが、よりによってそのタイミングで、街のギャングに誘拐されてしまうのだ。

 

しかし、そこはエンジニア!?ギャングに誘拐されているという危機感よりも、ロボットを開発するという執念の方が圧倒的に強靭なのだ。

また、ギャングのアジトで、まだ言葉もわからない赤ん坊ロボットが誕生すると、「彼を教育しなければならないから、また戻ってくるからっ!」と立ち去る。一見弱々しそうなエンジニア君の執念と、たくましさが半端ない。

 

新しい知能で目覚めたロボットが見せる、行動や動作、口調、態度はまるで、初めて文明に接した古代人の、小さな子どものような…なんとも無垢な雰囲気だ。

そして、それに反比例して、そのビジュアルはいかにもブロムカンプらしい古びた金属感。しかし、赤ちゃんロボットは喜ぶと耳がピンと立ち、興味津々に目を見開いたときは眉毛らしきものが上にフイッと上がる。表情はないのだが、その表情が猛烈にかわいいのだ、どういうこっちゃ。

 

図体はでかいけど、まだ幼く小さなロボットは、女ギャングのヨーランディをママだと思い、男ギャングのニンジャをパパと認識し、同じくギャングメンバーのアメリカ(これが名前)とも仲良くなる。そして、エンジニアのディオンを自分の創造者と認識する。そして彼はチャッピーと名付けられる。

 

「おいで」と呼ばれるとヒョコヒョコついていき、お絵かきも、絵本も、人形遊びも大好き。はあ、かわいい。抱きしめたい。

しかし、彼が生まれたのはギャングの家。ディオンが必死にいい子に育てようとしても、彼はものすごい勢い不良少年(?)になっていく。

 

うわあ~ダメだよ~チャッピー!!

 

と思っているあいだに、思いのほかギャング連中に愛着がわいてしまう。やはり、「パパ、ママ」と呼ばれると人は変わるのだろうか。終盤、本気で怒っているチャッピーに対し、バリバリのタトゥーをしたパパのニンジャが本気で「ごめん、チャッピー」と謝っているシーンがあった。あれれ、なんかイイやつだ。彼がもはやラストではヒーロー並。シリアスなシーンで、“テンション”とカタカナがプリントされたスエットを愛用している姿にもシビれるぜ。

 

実はこのヨーランディとニンジャは、カルト的な人気を誇る「ダイ・アントワード(Die Antwoord)」というラップグループの一員。南アフリカ、ケープタウン出身のアーティストで、役柄名は、彼らのアーティスト名でもある。2人は実生活でも夫婦で、すでに大きな子供がいるというから驚き。まあ、ヨーランディの母性にあふれたママっぷりを見ると納得だ。

 

ちなみに、彼らが住みかにしている廃墟ビルのなかで、無造作にラックにかけられている服がやたらめったらお洒落だ。まるで、アメリカソーホーやヨーロッパの、倉庫を改装してつくったセレブ御用達のセレクトショップみたいだぞ。

 

小柄で甘ったるい声で、前髪が尋常じゃなく短いヨーランディはモデルもやっているらしい。ミュージックビデオにでてくるヨーランディのメイクはちょっぴりオカルト風味。音楽も一回聞いたら耳にのこるタイプ。色んな意味で夢にでてきそうだ。

 

そして、ディランを演じるのは「スラムドッグ$ミリオネア (2008)」のデヴ・パテル、兵器会社の社長をシガーニー・ウィーヴァー、賢いが単細胞な悪役には、なぜかヒュー・ジャックマンだ。あの役柄で良かったのかヒュー。

 

そして、チャッピーを演じたのは、ブロムカンプ映画の常連シャールト・コプリー。チャッピーのかわいさに萌えた次の瞬間、ちょっとまてと「第9地区(2009)」でシャールト・コプリーが演じたヴィカスを思いだし冷静になる。しかし、次の瞬間、耳をピンと立てて「うん、ぼくチャッピーだよ!」に萌え…

最終的には、先が明るいのか暗いのかわからないが、でも幸せかもしれないという、チャッピーの未来に思いをはせて、エンドクレジットを眺めることになるだろう。

 

 

いかんせんTetravaal社セキュリティ甘すぎと突っ込みながら、

是非ご賞味あれ。

 

映画と現実の狭間でROCKするgattoでした。

 

 

 

チャッピー(2015)

監督 ニール・ブロムカンプ

出演者 シャールト・コプリー/デヴ・パテル/ヒュー・ジャックマン/ニンジャ/ヨ=ランディ・ヴィッサー