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CINEMAバリQ

【ファインド・アウト】
誰も自分の言葉に耳を傾けないとき観て気持ちを強くする作品)

ファインド・アウト あらすじ

ジルは、見知らぬ男に拉致・監禁されたことを、誰にも信じてもらえなかった過去を持つ女性。しかし、ある日を境に妹が姿を消したため、自分を拉致した人物と同じであるに違いないと警察に訴えるが、過去と同様に誰も彼女の言うことに耳を貸そうとしない。そのため、ジルは、たった一人で妹を救うことを決意する。

 

ファインド・アウト レビュー

姉妹の穏やかな会話でさえ、何かを含んだ暗い雰囲気で描かれるこの映画は、「真実はどこにあるのか」を曖昧にして、最後まで観客を惹きつけていくタイプの作品だ。

警察署にアマンダ・セイフライド演じるジルが訪れると、捜査官たちは「またコイツか…」と疎ましそうに対応する。いつもなら、金髪美女でモテ役のはずのアマンダ・セイフライドになんて態度だ!と思ってしまうが、ジルは警察官たちにとって被害者ではなく、狂言を繰り返す精神患者なのだ。

何故ならば、実際に拉致・監禁が起こったという確証はジルの記憶と体感にしかなく、証拠は何一つ見つかっていない。それゆえに、物語を追っていくと、すべては一人の女性の妄想ではないかと観客を不安にさせる。つまり、「夢落ち」ならず、「妄想落ち」といったところだろうか。 ストーリーがすべて“落ち”で片付けられてしまうことから、多くの観客が嫌うタイプの結末だ。

だからこそ、「まさか…そんな落ちじゃないよな~」と不安な気持ちが生まれてしまうのだ。誰もが怪しく見えてくるという演出も、すべては最後の肩透かしな“落ち”のために焦らしているのではないかとさえ疑わせる。もちろん、これは監督の作為的な演出だろう。

 

しかし、この映画には想定外の事態も起っている。 ジルを演じるのが、それほど髪の毛をボサボサにしてゲッソリ感を際立てているわけでもない、小悪魔的魅力のアマンダ・セイフライド“そのまんま”なので、どんなに苦悩で顔をしかめようと悲壮感が今ひとつ漂わない。そのため、ラストの盛り上がりに向かって勢いをつけるがごとく、絶体絶命という事態で引きまくる威力が、多少乏しい。

おまけに、観客の気持ちを鬱積させるために「間抜け」にした警官が、度を超して間抜け過ぎたため逆効果になっている。好敵手ならばリベンジにも力が入るが、あまりにも間抜けだとアホらしくなってしまうではないか。

 

とはいえ、この結末は、この映画で描かれる警察が間抜けだったからこそ成り立つともいえる。それに、もちろん不安を煽ってばかりではなく、主人公のジルが戸惑い困惑しながらも、ジワジワと確信に迫っていく面白さがある。 そして、ジルの恐怖が頂点に達したとき、はたまた、腹立たしさが頂点に達したとき、それとも、心が無の境地に達したとき、美しいジルの鉄拳が鋭く力強く、そして、しなやかに振り下ろされるのを観客は目撃するはずだ。

誰も自分の言葉を信じてくれず、なおさら狂言とまでいわれたら、人は狂っていなくても、狂ってしまうかもしれない。しかし、この作品のなかの主人公は折れそうな気持を必死に持ちこたえさせながら、妹を救うため無我夢中で奔走している。そんな主人公の姿に共感する人も多いのではないだろうか。

 ライター中山陽子でした。

ファインド・アウト(2012)

監督 エイトール・ダリア 出演者 アマンダ・セイフライド/ジェニファー・カーペンター/ダニエル・サンジャタ/セバスチャン・スタン