【ダーク・プレイス】
「ゴーン・ガール」原作者ギリアン・フリンの小説を映画化した悲しきサスペンス
ダーク・プレイス 映画あらすじ
幼い頃、実の兄が家族を惨殺するという悲惨な事件で一人生き残ったリビー・ディは、寄付金に頼りっぱなしの人生を送っていたが、それも底をつこうとしていた。
しかし、ある日、『殺人クラブ』という謎の会から事件のことを語って欲しいと、謝礼つきで招待される。
忌々しい事件のことや、過去に自分の証言で終身刑になった兄のことを“ぶしつけ”に聞かれ、リビーは不快になるが、金に困っているため再び事件を振り返りはじめる。
ダーク・プレイス 映画レビュー
世界最恐の女を観られる映画といったら、以前なら『蜘蛛女(1993)』や『氷の微笑(1992)』だったが、いまならば『ゴーン・ガール(2014)』という感じだろうか。
そして、その『ゴーン・ガール』の原作者ギリアン・フリンによって生み出された小説を、再び映画化した作品が、この『ダーク・プレイス(2015)』だ。
主演は『マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015)』のフュリオサ大隊長を演じ、世界を魅了したシャーリーズ・セロン。
彼女は15歳のとき、実生活でひどくショッキングな事件を目の当たりにしている。しかも、関わっているのは実の家族であり、彼女も当事者だ。
今作品のような事件とは全く違うが、決して遠くはない体験をしているのだ。
だからこそ、この映画の主人公を演じると知ったとき、彼女の強さと勇気、そして役者魂に感服した。
演じれば、否応なく彼女自身のつらい経験を思い出すだろうと想像できるからだ。
しかし、どうやらシャーリーズ・セロンは、もっと自然な雰囲気で出演を決めたようだ。
原作となる本を読んだ段階で気に入り、出演だけではなくプロデュースも行おうと決めたらしい。
なにか「しっくりくるもの」と「縁」を感じたという。
「フュリオサ大隊長」や、『モンスター(2003)』の「アイリーン・ウォーノス」など、過去に演じた数々の作品を観ればわかるように、彼女が演技に向かう姿には、威圧されるほどの凄みがある。
それでいて、思わず言葉を失うほど美しいのだ。
この映画でシャーリーズ・セロンが演じたリビー・ディは、世間の同情を一身に集めた少女の成長した姿だ。
幼く弱々しい悲劇の少女だった面影はなく、働かず、努力もせず、身なりを整えることもしない。
友人もつくらず、ただ、タバコの煙にまみれながら無気力に生きるのみ。
が、そんな人物を演じていても、シャーリーズ・セロンの美しさだけは、どう頑張っても隠せない。
無造作なショートカットで、ほぼスッピン。
しかし、深くかぶったキャップから垣間見える整った顔立ちに「ほ~」とため息がでる。
ストリート系のファッションかもしれないが、洋服は基本的にはボロボロだ。
しかし、壁に寄りかかりタバコを吸っているときの足の長さに、思わず見とれてしまうのだ。
キャップをとり金髪のショートカットをあらわにして、黒い下着と黒いタンクトップに、無造作にネックレスを重ねづけしている姿は、クラブに遊びに来たモデルさんにしか見えない。
そうかといって、彼女の美し過ぎる容姿が、その演技を邪魔することは一切ないのだ。
それもこれも、過去に彼女が魅せた役者魂で、世間の人々を納得させているから。
彼女は自分のルックスが、役者としてのキャリアを伸び悩ませると考えていた時期もあったらしい。
しかし、今では多くの人が「アクションも完璧な、美し過ぎる、演技派女優」という認識をもってるはず。
なお、この作品には、『ウォーム・ボディーズ (2013)』や、シャーリーズ・セロンと共演した『マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015)』で、個性的な憎めないキャラクターを演じたニコラス・ホルトも出演している。
今回の役柄は、若く温厚な落ち着いた青年だ。
また、『キック・アス (2010)』のクロエ・グレース・モレッツも、強烈なキャラクターを演じている。
しかし、正直なところ、今回のような悪女役はクロエちゃんにあまり似合わない。
まだしも、『イコライザー (2014)』で演じた若い娼婦のような…人生を諦めていても、性根が腐っていない役柄の方が似合っている。
しつこいが、やはり、彼女はマーベルやDCコミックのキャラクターが絶対似合うと思うのだけど…。
今回シャーリーズ・セロンの演技は、力みがなく自然体だったように思う。
そのせいか、心を苦しくさせる映画でありながら、ラストシーンでリビー・ディの穏やかな表情を目にしたとき“救い”を感じ、静かな涙を誘った。
もちろん、過去の悲しみは消えるものではないけれど「許し」は未来を与える心の処方薬になるのだろう。
ライター中山陽子(gatto)でした。
ダーク・プレイス(2015)
監督 ジル・パケ=ブランネール
出演 シャーリーズ・セロン/ニコラス・ホルト/クロエ・グレース・モレッツ/タイ・シェリダン/コリー・ストール
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