【ハッピーボイス・キラー】
ライアン・レイノルズ主演のサイコキラー映画
ハッピーボイス・キラー 映画あらすじ
ジェリーは田舎町で犬1匹・猫1匹と暮らす孤独な青年。精神面に問題があり、自分にしか聞こえない声と常に会話している。
それでも、精神科医から処方される薬を服用しないジェリーは、会社のパーティがきっかけで、経理部にいるフィオナへの感情を高めていく。
しかし、それが、ジェリーを後戻りできない状況へと追い込んでしまう。
ハッピーボイス・キラー 映画レビュー
感じのいい社長に、おしゃべりな経理部の女子社員たち。
ちょっと冷めていた従業員たちまで仕方なく踊る、滑稽な会社のパーティ。
一見すると田舎町にある会社の平凡な風景だけど、その様子は徐々におぞましいものへと変わっていく。
お肉料理をする前には観ない方がいいかもしれない。
ライアン・レイノルズが演じるジェリーは、少し謎めいた部分をもつ真面目な青年だ。そして限りなくハッピーである。
ボランティアで行う会社のパーティ準備も、「友達をつくれるキッカケになる」と嬉しそうだし、社長からの差し入れピザも「タダって最高」と嬉しそうにパクパク。
しかし、それは、彼が精神科医から処方された薬を飲まないがために作用している、脳の働きのせいなのだ。
彼が見ている世界は、すべて彼にとって都合よく塗り替えられている。
だからこそ、まともな精神では持ちこたえられないような状況でも、彼は前向きでハッピーになれる。
薬を飲まずに心地よく目覚めた日は、音楽を聴きながらノリノリで仕事に励み、ハゲている同僚の、唯一の毛髪部分の毛量を褒めちぎる。
その世界のなかでジェリーは孤独を感じず、恐ろしいことも起こらない。
この映画を観たあとは、グロテスクな事実をもつ大量の保存ケースと、ビジュアル的には相当おぞましい状況なのに、とにかく明るい経理部の3人娘フィオナ、リサ、アリソンと、歌と踊りやカラーによって描かれるポップな雰囲気が、せめぎ合いながら印象に残る。
ジェリーが務める会社で作業する人々は、かわいらしいピンクの作業着に身を包み、ピンクのガムテープで封をする。
会社専用のフォークリフトもピンクだ。
これは、フランスのアニメーション作品『ペルセポリス(2007)』で注目されたマルジャン・サトラピ監督らしい演出かもしれない。
キュートでシニカル、そしてブラックなのに、妙にかわいらしい。
そして、かわいらしいほどグロテスクな現実が、底抜けに明るいほど起こったことのおぞましさが、エッジを効かせて際立ってくる。
そのなかで気になった部分は、ジェリーが時折、とても作為的な人間に見えてしまうことだ。
自分に気があるリサを誘うあたりは、母親に間違った解釈を植え付けられた不運な少年が成長した姿ではなく、その後に進化してモンスターになった姿に思えた。
つまり、「このひと(動物)を苦しみから解放してあげたい」という彼の想いから外れた行動のせいで、終盤の展開が身勝手なご破算に思えてしまうのだ。
しかし、底抜けに明るいラストの手前にMr.ウィスカーズが発した言葉は、単なる「ご破算」ではないことを示している。
ジェリーのなかでせめぎ合っていた感情が、やっと統一されたのだ。
その部分だけが、この物語の救いかもしれない。
ライター中山陽子でした。
ハッピーボイス・キラー(2014)
監督 マルジャン・サトラピ
出演 ライアン・レイノルズ/ジェマ・アータートン/アナ・ケンドリック/ジャッキー・ウィーバー
マルジャン・サトラピ監督作品の買取金額の相場はこちら
ライアン・レイノルズ出演作品の買取金額の相場はこちら
ジェマ・アータートン出演作品の買取金額の相場はこちら