【グッド・ネイバー】
ただただ胸くそが悪くなる映画
グッド・ネイバー 映画あらすじ
押しが強く行動的なイーサンと、知能指数が高く裕福な親を持つショーンは、ある実験の記録をはじめる。その実験とは、遠隔操作で人為的に怪奇現象を起こし、その場にいる人間のリアルな反応を観察するというもの。そして、その被験者となったのは、イーサンの家の隣に住む気難しい老人ハロルドである。他者とのかかわりを一切断っている孤独な老人だ。しかしハロルドは、イーサンやショーンがどんなに偽物の怪奇現象を起こしても怯えず、逃げも隠れも、通報もしない。それどころか、斧でドアを破壊したり、日ごろは鍵をかけている地下室に何時間もこもるなど、不可解な行動を見せ彼らを不安にさせた。やがて『幽霊プロジェクト』と名付けられたその実験は、老人の真実を明らかにしていく。
グッド・ネイバー 映画レビュー
この映画のキャッチコピーは、「このジジイ、かなりヤバい」。そして、ジジイというのは、あの『ゴッド・ファーザー』シリーズでソニー・コルレオーネを演じたジェームズ・カーンだ。これは期待するなという方が無理なはなし。それゆえに鑑賞前は思い上がった若者に、彼らの想像をはるかに超えたヤバいジジイがこっぴどく制裁するんだと思っていた。
しかし、この映画は、期待とは違う方向にドーンと落ちる。
観終わったあとの個人的な感想は、「ただただ胸くそが悪い」だった。
だがジェームズ・カーンの存在感と、その演技を堪能できたのだけは良かった。俳優さんの魅力を味わっていると、もれなく不快な現実を目の当たりしてしまう映画、という感じだろうか。
実は自分がこの俳優さんのファンになったのは、『ゴッド・ファーザー』でも『ミザリー(1990)』でもなく、『誘拐犯 (2000)』を観てから。ベニチオ・デル・トロを見たいがために鑑賞したら、思いのほか異様なまでの存在感と、ただものではないオーラを放つジェームズ・カーンに強く惹かれた。それからずーっと好きな俳優さんだ。
人気ドラマ『HAWAII FIVE-0』のダニー・ウィリアムズ捜査官役(通称:ダノ)で有名な、スコット・カーンのパパとしても知られている。『HAWAII FIVE-0』にジェームズ・カーンがゲスト出演したとき、息子のスコットは嬉しさを隠しきれない様子だった。またパパのジェームズは物語とまったく関係なしに息子をハグしまくっていて、なんだかとても微笑ましかったのである。ちなみに、スコットが小さいころ両親は離婚しているが、母親とも父親ともそれぞれ一緒に過ごす時間はしっかりとあったようだ。
今作品では、そんな存在感のある俳優さんが演じた一筋縄ではいかない老人を、浅はかでバカな少年が勝手に被験者にしてしまう。あとからこの老人に対し、この実験を行うことになった経緯が明かされるが、いずれにせよ彼らが行った実験はひどくバカげている。そして何が浅はかでバカかって、とっくに不法侵入して監視カメラやら盗聴器やら溶液やらを老人の家に仕込んでいたくせに、再び老人宅に入り込もうと考えた際、「ダメだよ!不法侵入で捕まるぞ」って、今さら何のこっちゃ。そもそも、そんなもんネットで配信したら、もれなく逮捕だ。知能指数が高いんだか低いんだか。
少年2人のうち、とくに映画の冒頭から傍若無人な振る舞いをするイーサンに腹が立ったが、もちろん彼にもかわいそうなところがある。しかし、彼のような家庭環境で、誰もが彼のようになるかといえば、絶対にそうではないはず。むしろ、片親や兄弟姉妹のために、驚くほど頑張っている子供がたくさんいる。時にはその存在が、いい大人である自分に対し「もっとしっかりしろ」と諌めることもある。そんな私の想いは、映画の最後、絶大的な権力を持つ黒人男性の“個人的な言葉”が代弁してくれた。だが、そんな人物さえジレンマに陥らせる司法ってなんなんだ。
つい先ごろ日本のニュースで聞こえてきた、一人の女性の人生をめちゃくちゃにした人物に下された判決には、心から脅かされた。本当に、本当に司法ってなんなんだよ。
また、ネットで有名になるために非人道的な行為を犯すという事態は、日本においても同様に起こっている。だからこそ、この映画はある意味とてもリアルなのだ。
ライター中山陽子でした。
グッド・ネイバー(2016)
監督 カスラ・ファラハニ
出演者 ジェームズ・カーン/ローガン・ミラー/キーア・ギルクリスト/ローラ・イネス
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