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CINEMAバリQ

【パッセンジャーズ】
寂しさと温かみが入り混じるサスペンススリラー

パッセンジャーズ 映画あらすじ

セラピストのクレア・サマーズは、尊敬する恩師から飛行機事故の生存者をカウンセリングしてほしいと頼まれる。しかし、カウンセリングの様子を何者かが覗いていたり、グループカウンセリングのメンバーがひとりずつ失踪したりと奇妙なことが次々と起こる。不可解に思ったクレアは、飛行機事故の原因を隠ぺいしようとする航空会社の仕業だと考え、自ら真相に迫ろうとする。

パッセンジャーズ 映画レビュー

この映画を観終わったあとの“もの悲しさ”と見守られているような温かい感じ。

この感覚は、ある映画を観たときのものととても似ている。だが、それを書いてしまうと恐らくネタバレになるので止めておこう。終盤明らかになっていく真実のせいで不完全燃焼になる人もいるようだが、私の場合はとても興味深く鑑賞することができた。

人は誰しも結局はひとりだ。
でも、もしもこの映画のようなことが起こるならば、きっと寂しくはない。

飛行機事故で心が不安定になった人々をサポートすることになったクレア・サマーズ(アン・ハサウェイ)だが、実は彼女自身にもなんとなく不安定な要素が見え隠れしている。そうさせたのは、ケンカが原因で音信不通になってしまった姉の存在だ。それは彼女にとって大きな後悔のひとつなのだろう。

姉は電話に出てくれないし、自宅を訪ねても常に留守。まったく姿を現さない姉の存在は、主人公と観客を不安にさせる。その姉は物語の終わりにやっと登場するが、途中まで推測していたような印象とはだいぶかけ離れている。

そして、クレアを戸惑わせて振り回し、すっかり魅了してしまうのがパトリック・ウィルソン演じるエリックだ。彼が登場したときはかなりの躁状態で、しかも素っ裸。なんだこの人完全にいっちゃってるなと思いきや、ちょっと強情っぱりで潔癖症、そして頑張り屋さん過ぎるクレアにはうってつけな人だった。何にもとらわれず本能のまま自由に過ごすエリックの不思議な魅力のせいで、クレアはとうとうセラピストと患者という一線を越えてしまう。

ただ、エリックも飛行機事故というとんでもない体験をしているので、躁状態だったり悪夢にうなされたり何かに対し恐怖を感じたりと、通常では違う様子をうかがわせる。

そんな2人の恋愛事情と、飛行機事故の真相究明、そして生存者の失踪や謎の人物による接触で、サスペンスストーリーはいよいよ佳境に入る。そして……、

「そうだったのか……。」

人は一度見たものすべてを無意識に脳で記憶しているという説がある。もちろんそれらを、ごく普通に日常生活を送るなかで自然に思い出すわけではない。自覚して思い出すことが一生ない記憶だってあるだろう。

この映画を鑑賞し、そんな無意識の記憶について考えた。自分の脳にある記憶は、ある時どんな風に影響するのだろう。もしもこれから自分があと数十年生きて、たとえば80年分の記憶が蓄積したとして、何かの折に蘇る記憶は意外にも身近なものばかりではなく、ある瞬間たまたま脳に記憶されただけのものもあるかもしれない。

幼いころの記憶と、自分の身近な記憶、そして無意識に蓄積した記憶。
いつかそれが、思いがけず自分を守ってくれたりして……。
もちろん、この映画で大きな役割をこなしているのは、ただの「記憶」ではなく「存在」だ。

でも、なんというかそれは、
「『記憶』と『存在という要素』の結合」のような気もしないでもないのだ。

自分にとってこの映画はそんな想像力をかきたててくれる作品。それと同時に少し切なくて少し温かい……、郷愁というものを感じさせてくれる。

 

ライター中山陽子でした。

 

パッセンジャーズ(2008)

監督 ロドリゴ・ガルシア
出演者 アン・ハサウェイ/パトリック・ウィルソン/デヴィッド・モース/アンドレ・ブラウアー

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