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CINEMAバリQ

【サブウェイ】
風変わりでセンス抜群なリュック・ベッソン出世作

サブウェイ 映画あらすじ

大金持ちの実業家から重要書類を盗み出したフレッドは、追手とのカーチェイスを繰り広げたあとパリの地下鉄構内奥深くまで逃げ込む。するとそこには地上と全く異なる世界が存在し、風変わりな人々が住みついていた。やがてフレッドは書類と現金を交換するために実業家の妻と交渉をはじめるが、状況に反して2人は惹かれあってしまう。そんななかフレッドは地下の住人たちとバンドを結成し、メトロ構内でコンサートを開こうと思いつくのだが……。

サブウェイ 映画レビュー

なんかすこぶるワケがわからん映画なのに、強く惹かれてしまったこの映画は、あのリュック・ベッソンの出世作。すぐ爆薬を仕掛けて爆発させちゃうパンクな金髪男と、危うい雰囲気の若く美しい人妻の恋は、意表を突いた展開を重ねて盛り上がっていく。

映像すべてがスタイリッシュで、いちいち反骨精神にあふれていて、それでいてキュンとするセリフ。本当に無意味な内容の連続なのに、どこをとっても魅力的。それがこの映画だ。

一作目の『トランスポーター(2002)』や『フィフス・エレメント(1997)』は大好きな作品だし、『ニキータ(1990)』『レオン(1994)』『グラン・ブルー(1988)』にも多大な魅力を感じている。だが今作品『サブウェイ(1984)』を初めて観た時は、もしかしてリュック・ベッソン作品の中で一番好きかもしれないと思えたほど。

しかし、いったい何がそんなに魅力的なのだろう。物を盗んで追われ逃げ隠れた男が、引き換えに金を要求しつつバンドを組んでコンサートを開くって、全く意味がわからん物語なのに。ちなみに、この映画にはジャン=ユーグ・アングラードやリシャール・ボーランジェ、ジャン・レノといった、後々世界的に有名となるフランスの俳優さんたちが出演している。もちろん、それも魅力を感じる要因のひとつではあるけれど……。

地下奥深くの住人たちが仕事に追われることはなく、美しいブルジョアの人妻エレナも裕福なのでもちろん働く必要がない。一般的なルールを地下世界は必要とせず、大人としてすべき行動を意識する必要もない。あるのは爽やかな執着と、愛と、普通も体制もステイタスもクソくらえな精神だけなのだ。

そこで気がついた。
この映画では、基軸がない世界への間口が大きく開かれている。
そしてそこに基軸はないが、明確な愛がある。
だから心地いいのだ。

それはまるで、世の中になじめない癖のある住人たちが暮らす、ヴィム・ヴェンダースの『ミリオンダラー・ホテル(2000)』だ。たとえ世間からは変わっている人と烙印を押されても、そこに行けば受け入れてもらえるという安心感がある。そんな“ちゃんとしていることを必要としない場所”に、自分は心のどこかで憧れているのかもしれない。

ビジュアル面がパンクな雰囲気なのもいい。クリストファー・ランバート演じるフレッドの爆発したような金髪や、エレナの上流階級に我慢できず爆発させたパンクなヘアスタイル、彼女の服のタータンチェックも、結成されたバンドも、薄汚れた暗い地下の雰囲気も、そのすべてがパンクだ。

また、この映画の中でなによりも破壊力があったのは、人妻エレナを演じるイザベル・アジャーニの登場シーンである。

「息をのむほど美しい」という言葉は、このような時に使うのかと思ったほど。透き通るような白い肌は薄く繊細で、ブルーグレイの瞳は限度を知らない奥深さで人の心を奪う。これじゃあ惚れるなという方が無理だろう。

また、それにも増してフレッドが……、

「少しは好き?」「あとで電話する」
「パッパパラーパララ~♪」

いかん。やられた。
完全に惚れた。
この変てこな映画に。

ライター中山陽子でした。

 

サブウェイ(1984)

監督 リュック・ベッソン
出演者 クリストファー・ランバート/イザベル・アジャーニ/リシャール・ボーランジェ/ジャン・レノ

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