【アフタースクール】
引き込まれて最後に驚かされるサスペンス・コメディ
アフタースクール 映画あらすじ
一流企業に勤務する木村は、身重の美紀と朝食をとったあと「いってきます」と笑顔で言い出かけたが、そのまま行方不明になってしまう。その前には、親友で中学校教員の神野に「あいつを頼む」と伝えていたのだ。それから少しして神野のもとに、かつての同級生だと名乗る男が訪ねてきた。しかし、じつはその男、同級生ではなく汚い仕事も請け負う探偵の北沢だった。それから、偶然撮られた写真によって、木村が若い女性と一緒にいることがわかる。木村はなぜ身重の美紀を置いて若い女性と行方をくらませたのか。また、北沢の目的とは何なのか……。そして、事態は想像もつかない方向へと向かっていく。
アフタースクール 映画レビュー
何がいったいどうなっているんだろう? と疑問を抱きながら、その真相が知りたくて物語にどんどん引き込まれた。そして、登場人物の意外な行動に驚かされ、のちに明かされていく真実とカラクリと、小気味よい展開に心踊らされた。悪いやつも登場するし、大人の関係も物語の重要な要素として組み込まれているけれど、怖さはないし、ドロドロもしていない。優しくてノスタルジックな、とても面白いサスペンス・コメディだった。
最初から観客は、真実を目の前にしながら真相を知ることができない。しかし、時折見せてくる意味ありげなシーンのせいで、「何かあるな」「いや、そんなわけがない」「もしかしてこうかな?」という感じに、ジワジワ推理させられる。それが、まったく飽きない理由かもしれない。
そして、なんといっても、愛すべきお人好したちが大それたことを成し遂げるといったところがポイントなのだ。
もちろんマッチョでかっこ良くて頭脳明晰なスパイが、とんでもないミッションを成功させる映画も大好きだが、平凡な感じの人々が、気張らず無理なく、それでいて驚くような展開をテンポよく見せてくれるのは、なんとも痛快なのである。
また、いい大人たちが主人公でありながら、アフタースクール(放課後)というタイトルどおり、青春時代からの想いがすべての根源となっている部分も魅力的だ。なんというか、汚れたものを、瑞々しい空気がすべて浄化してくれるような感じがする。
ただ、強いて言えば、悪人にあまり「悪人」としての凄味を感じなかったため、ラストの盛り上がりで少し緊迫感に欠けたような印象もある。たとえコメディだとしても、「なんて野郎だ」と悪人への憎しみが積もれば積もるほど、スカッとする度合いもさらに大きかっただろうに。また、個人的には、大泉洋さんと堺雅人さんは役柄にぴったりとハマっていたが、佐々木蔵之介さんだけはこの役柄に、すこ~しだけしっくりこない。まあ、というか、そもそも心がすさんだ男というイメージがわかないのかもしれない。実のところ、そう感じてしまうのはこの映画だけに限らない。
まあとにかく、きっとこの“あくどさ”が少ない全体的に優しい感じは、内田けんじ監督の持ち味なのだろう。だからこそ、また観たい、なんどでも味わいたいと思えるような、とーってもフレッシュで美味しい映画なのだろう。
ライター中山陽子でした。
アフタースクール(2008)
監督 内田けんじ
出演者 大泉洋/佐々木蔵之介/堺雅人/常盤貴子
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