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CINEMAバリQ

【プリズナーズ】
鬼気迫るヒュー・ジャックマンの演技に圧倒される映画

プリズナーズ 映画あらすじ

田舎町で平穏に暮らすドーヴァー家とバーチ家は、家族ぐるみで賑やかに感謝祭を祝っていた。だが気がつくと、外へ遊びに出た両家の幼い娘2人がどこにもいない。すぐに誘拐事件として捜査され容疑者らしき男が捕まったが、決定的な証拠が無いため釈放されてしまう。その状況に苛立だったケラー・ドーヴァーは、我が子を救うため一線を越えた行動を起こす。

 

プリズナーズ 映画レビュー

客観的に捉えにくい映画だった。冷静に考えれば、いくら誘拐された娘の父親だからといって、そこまでやるのは異常だ。しかし、自分が同じ立場だったらどうだろう。もしもその人間が犯人だと自分なりに確信していて、なおかつ大切な人に命の危険が迫っていたら……。

ヒュー・ジャックマンが演じた父親は、我が子のため迷うことなく法律とモラルの一線を飛び越える。よほど思い詰めなければあのような行動は起こさないだろう。「神よ……、なぜここまでやらせるのか……」と腹のそこから吐き出すシーンは、彼の心のなかに葛藤があることを示している。

しかし、彼の行動はやはり「暴走」でしかない。一見先行しているかのように見えて、結局は周囲の人を巻き込み物事を複雑にしていた。それゆえに同情しながらも、少しばかりケラー・ドーヴァーに嫌悪感を抱いてしまった。

だがそれも不本意である。彼はそれまで、なんの落ち度もない娘を愛する良き父親だったのに。

それもこれも、意図的に“不確実なまま”進んでしまう物語のせいだ。確実に犯人ならば迷わず同情なんてしないが、わからないから複雑になる。それに、もしも違っていたらケラー・ドーヴァーは単なる犯罪者だ。また、たとえ相手が凶悪犯だとしても、そこまでやるのは許されないという考えもあるだろう(共感はしないが)。

そして、それこそが、この映画のメインテーマだ。父が起こした行動は、はたして「愛」なのか「狂気」なのか。

 

なお、今作品には実力派がたくさん出演している。ロキ刑事役のジェイク・ギレンホールや、同じく娘を誘拐された母親を演じたヴィオラ・デイヴィス、ケラーの妻グレイスを演じたマリア・ベロ、容疑者を演じたポール・ダノだ。

これほどの面々だが、あまりにもヒュー・ジャックマンの演技が鬼気迫るものだったため、なんだか目立たなかったような印象だ。だが逆をいえば、脇を固める彼らの演技が秀逸だからこそ、よりヒュー・ジャックマンの演技が際立ったのかもしれない。

そして、この映画のラストシーンはなんともアメリカらしい。

ちなみに『失踪 (1993)』という映画は、オランダの『ザ・バニシング 消失(1988)』という作品を、同監督がハリウッド・リメイクした作品だが、より異質でリアルなオランダ版の方が評価は高い。

しかし、筆者はオランダ版を観たとき、しばらく立ち直れなくなり、そのあとアメリカ版を観てなんとか立ち直ることができた。

あまりにも辛すぎると、感情をどこへもっていけばいいのかわからなくなるのだ。そんなわけで、この映画のラストは物語としては都合が良すぎるが、精神的には良さそうだ。

ライター中山陽子でした。

 

プリズナーズ(2013)

監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演者 ヒュー・ジャックマン/ジェイク・ギレンホール/ヴィオラ・デイヴィス/マリア・ベロ

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