【レジデント】
かなりイライラさせるデンマークのゾンビ映画
レジデント 映画あらすじ
デンマークの首都コペンハーゲンの北。この地域の閑静な住宅街で暮らすディノと妻は、反抗的な態度をとる長男グスタフに頭を悩ませていた。当のグスタフといえば、隣に住みはじめた女の子のことで頭がいっぱい。だが、住民たちがいつもの生活を送る陰で、原因不明のウィルスが広がっていた。そして、ついには外出禁止令が出されてしまうほど蔓延。政府による厳戒態勢は異常をきたし、ディノとグスタフは逆らう民間人に発砲する軍の行動を目撃する。
レジデント 映画レビュー
異常な状況下におかれた人間の心理や関係性を、狭い視野のなかでリアルに描いていた部分は卓絶だった。そもそもデンマーク製ゾンビ映画ということ自体が興味深い。それに、「親とはいえ完璧な人間ではない。だが、やはり親なのである」という部分で心に訴えるものがあった。
しかーし。個人的には長男のグスタフにイライラしているうち映画が終わったという印象。また、DVDパッケージやポスターは、それにしちゃいかんだろうに。
感染地域にいる民間人が戒厳令によってあらゆる権利を奪われる展開は、ゾンビ映画ではよくあること。そのなかで、だいたいは保身しか考えない政府の人間や大企業の上層部が、ゾンビ以上に非情なことをしでかす。この映画も例外ではないが、それ以上にディノの息子グスタフがいちいちやらかすのだ。
国防省の対処がいいとか悪いとか、一般人の行動が正しいとか間違いだとか、死者が歩き回るような異常事態では判断が難しい。そのなかで、国民を守る立場からはかけ離れているが、感染者がどう変貌するかを知る軍の行動や、家族のため“人でなし”になった父親ディノの行動よりも、本能のまま動くグスタフにイラっときたのである。
もちろん、すべてを隠蔽し秘密裏に動く政府の行動を民間人が知ろうとするのは当たり前のこと。なおさら、大人よりも純粋で怖いものなしのグスタフが大胆な行動に出るのは仕方ない。
以前開拓者として荒れはてた土地に移住し、やっと長年苦労して開拓した挙句、結局また国のせいでその土地を追われた人が「国は何もしてくれないから、頼ってはいけない。自分で判断し、自分で生きていくしかない」というようなことを言っていた。その言葉どおりのことはたくさんあるだろう。
「国がなんとかして事態を収拾してくれる」と思っていても、実際には何も起こらないことが多いのだ。そういった意味で、結果は別としてグスタフの行動は悪くない。それに、遅かれ早かれあの状況に陥ったはず。
しかし、何かというと親に背を向け、親を責めることばかり。自分が誰よりも正しいような顔をして、本能のままかわいい小娘とエッチに励むグスタフへの苛立ちは、どうしても止められなかった。そして、若いカップル2人が森をスタコラ走って逃げる姿は、自分を怒りの頂点へと押し上げた。
そんな息子に言いたいことを言われていたディノが、ゾンビの激しい追撃から逃れようとドアを無理やり閉めているシーンは、『シャイニング(1980)』のワンカットとかなり似ている。
また、感染からゾンビになるまでの速度が、終盤ご都合に合わせ急に早くなっているが、グスタフを演じたベンジャミン・エンジェルは透明感のある美少年だし、恋人のソニアを演じたマリエ・ハマー・ボダもすこぶるかわいい。父親ディノを演じたスキンヘッドのトールス・リュービューも、友人キャスパーを演じたミケール・ビアクケーアも何気に男前なので、ストレスがたまっていない時にでもご賞味あれ。
ライター中山陽子でした。
レジデント(2015)
監督 ボー・ミケルセン
出演者 トールス・リュービュー/ミレ・ディーネセン/ベンジャミン・エンジェル/エラ・ソルゴード
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