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CINEMAバリQ

【スタンドオフ】
トーマス・ジェーン主演の良作サスペンス映画

スタンドオフ 映画あらすじ

両親の墓参りをするため、叔母の恋人に付き添われ墓地を訪れた少女バード。カメラのシャッターを切りながらウロウロしていたところ、偶然ヒットマンの暗殺現場を目撃してしまう。ヒットマンには気付かれたが、なんとかその場は脱出。やがて一軒の家にたどり着き助けを求める。そこは、最愛の家族を失い心に深い傷を追った男、カーターがひとり暮らす家だった。

 

スタンドオフ 映画レビュー

うーむ、思いがけない良作だった。

殺人現場を目撃した少女の逃げ込み場所が、たまたま只者ではない男の家なんて……。いかにも有りがちな設定だけに、よく目にするような映画だろうと高を括っていた。それでも好きな役者さん2人が出演しているので、気にせず鑑賞したのだ。

ところが、想像していた雰囲気とは全く違っていた。

登場人物が少なく、密室劇だけに状況の変化も少ない。それでも飽きることなく、驚くほどハラハラドキドキさせられた。それに、サスペンスとしての面白さだけではなく、心に染みるドラマとしての面白さもある。

墓地のシーンでは、ヒットマンのプロらしからぬ危機管理意識の低さがどうかと思ったが、密室劇があまりにも面白かったので、その辺は帳消しだ。

なお、いまにも朽ちそうな家の住人カーターを演じるのはトーマス・ジェーン。しばしば人間臭い部分を覗かせる、冷酷なヒットマンを演じるのはローレンス・フィッシュバーン。

トーマス・ジェーンは『パニッシャー(2004)』を観てからずっとファンだが、続編の主演を期待するも実現せず、その後『ミスト(2007)』以外はこれといって目立った作品には出演していない。もっと評価されたらいいのにと、常々思っている役者さんだ。

その彼がこの作品で、これまでに無いほど味わいのある演技を見せてくれた。ローレンス・フィッシュバーンという、凄みのある俳優さんと渡り合っても見劣りしないほどだ。

また、以前ジョン・キューザックと共演した作品でのロン毛は全然似合っていなかったが、それど同じような髪型でも、今回は役柄の影響もありカッコよく見えた。『パニッシャー(2004)』と今作品のように、「全てを失った男」という役がしっくりくるタイプなのかもしれない。

疲れと傷の悪化、集中力の途切れも手伝い、カーターとヒットマンが少しだけ本音を覗かせて会話するシーンがある。

常に緊張感がつきまとう内容だったせいか、むしろその静かなシーンが深く印象に残った。

また、少女の心を落ち着かせる「言葉」のエピソードと、それを引用したラストシーンも良かった。

 

「スタンドオフ(standoff)」は、ラグビーの司令塔とも言われるポジションの名前だが、この映画のタイトル「スタンドオフ(STANDOFF)」は、“行き詰まり”を意味しているのだろう。

とにかく非常に面白い作品なので、ぜひご賞味あれ。

ライター中山陽子でした。

 

スタンドオフ(2016)

監督 アダム・アレッカ
出演者  トーマス・ジェーン/ローレンス・フィッシュバーン/エラ・バレンタイン/ジョアンナ・ダグラス

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