【運命じゃない人】
パズルがコトンコトンとハマっていく内田けんじ作品
運命じゃない人 映画あらすじ
恋人と別れる決意をして、愛の巣を悲愴感たっぷりに出ていく女。有り金はたいて家を買った途端、婚約者に捨てられた男。裏世界に事情通な私立探偵の男。見栄っ張りなヤクザと、強欲でズル賢い女。そんな、てんでバラバラの連中が運命を交差させ、それぞれの思惑を絡ませる物語。
私立探偵の神田は、中学からの同級生で限りなくお人よしな宮田を無理やり食事に誘う。そして、いつまでも前の彼女を引きずらず、新たな出会いを探すよう説得し、1人さみしそうに食事をしていた女性を勝手に誘ってしまう。
運命じゃない人 映画レビュー
第58回カンヌ国際映画祭で4賞に輝いた作品。先に『アフタースクール(2008)』と『鍵泥棒のメソッド (2012)』を観ていたので、内田けんじ監督らしい作品だなあと思いながら鑑賞。
パズルがひとつずつコトン、コトンとハマっていく気持ち良さと、いい具合のユルユル感。そして、キナ臭い雰囲気を醸し出しつつ、なんとなく身近な優しさがある作品だ。
ラストシーンで情とシュールな感覚が入り交じって「プッ」と笑い、「あー、おもしろかった」というのは、全作品に共通しているかもしれない。
また、小津安二郎監督作品とまではいかないが、全編に渡って独特な「間」があるのも特徴だ。どのシーンでもあまり急かされないというか、のんびりした印象がある。宮田君がタクシーを追い猛ダッシュする以外は動きが少ないし、(多分意図的に)役者さん皆表情や抑揚が乏しく淡々としている。それなのに、不思議と臨場感があり物語に引き込まれていく。全体的にこじんまりしていながら閉塞感がなく、未来の広がりさえ感じてしまう。
この映画の要は、その独特な作品の風味と、明確な個性を持つそれぞれの人物像だ。そして、そのなかで一番平凡に見える宮田君こそが、世の中で一番珍しいタイプかもしれない。宇宙レベルで人がいい宮田君に、親友で探偵の神田が「早く地球に戻ってこい」的なことを言っていたシーンは、妙に温かい気分になって心地良かった。しかも、男二人で食べるとは思えないヘルシーでフレッシュな朝食なんだが(笑)
映画だけではなく現実においても、無垢で良きものが、汚れた悪しきものに勝ればいいのに。
まあ、宮田君のように誠実で真っ直ぐで、人を信じて疑わない大人は、ひっくり返ってもこの世にいるはずがないと思ってしまう自分が、一番問題なのかもしれないけれど。
それにしても便利屋やまちゃんは、色んな意味で何でもできてしまう、(見た目に反し)エッジの効いたおっちゃんであった。
ライター中山陽子でした。
運命じゃない人(2005)
監督 内田けんじ
出演者 中村靖日/霧島れいか/山中聡/山下規介
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