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CINEMAバリQ

【アルバート氏の人生】
グレン・クローズ主演・脚本・製作、男として生きた女性の悲しい物語

アルバート氏の人生 映画あらすじ

19世紀のアイルランド。ダブリンのホテルで住み込みウェイターとして働く生真面目なアルバートは、ただひたすら働いて常連客からのチップをため込み、それを数えては几帳面に記録を残す日々を送っていた。若い連中には少し変わっていると囁かれているが、長年一緒に働いてきたホテルの従業員や常連客からは厚い信頼を得ている。だがある日、泊まり込の作業でやってきたハンサムなペンキ職人ヒューバート・ペイジが、アルバートの部屋で寝泊まりすることに。誰にも言えない自分の秘密を知られるのではとアルバートは恐れたが、この出会いが彼に大きな変化をもたらす。

 

アルバート氏の人生 映画レビュー

グレン・クローズが主演・脚本・製作を担当し、存分にその才能を発揮した映画。第84回アカデミー賞で主演女優賞にもノミネートされた、あまりにも悲しい物語である。

 

アルバートは子供のころから1人で安全に生きていくために、女性であることを隠し男性として生きてきた。カトリック教徒が大半を占めるアイルランド、しかも19世紀。女性の権利や多様性を認めない時代に性別を隠し続けるのは、容易ではなかっただろう。とはいえ、住み込みで働きながら誰とも深くかかわらないのだから、「変わっている」と言われても、まあ仕方がない。

彼は周囲から多くの信頼を得ていたが、恐らく彼自身は誰ひとり信頼していなかったのだろう。コツコツ床下に貯めたチップだけが、自分を幸せにする唯一のものだと信じたのだ。しかし、ペイジ(ジャネット・マクティア)と出会い彼は衝撃を受ける。自分らしく生きるペイジに「自分の理想的な将来像」を重ね合わせたのだ。

「ペイジのように妻を得て幸せになりたい」 

ある意味、その思いがアルバートを不自然な行動に駆り立ててしまった。

 

ちなみに、この映画が「同性愛」を描いているかといえば、そうではない。より制約的だった昔を描いているこの映画の「愛」は、現代のLGBTという表現を超越している。その愛とは「人間愛」だ。

しかし、残念ながらアルバートは、それを経験することはできなかった。

決して態度の悪い金髪娘ヘレン(ミア・ワシコウスカ)に惚れたわけでも、タバコ屋を営むことに情熱を傾けていたわけでもない。愛する人が傍にいる「幸せな自分」を手に入れることが彼の夢だった。幸せになりたい、ただ、それだけだったのに……。アルバート氏があまりにも不憫なので、ペイジと出会わなければ計画どおり1人で店を開いて、静かに安全に生きて行けたかもしれないのにと、無粋なことまで考えてしまう。

ペイジは、勘定高いホテルの女主人ベイカーがすっかり気に入ってしまうほど魅力的な人物だ。生意気な小娘ヘレンも「素敵な方」とぬかしていた。背が高く端正な容姿で、少しクールな部分が女心をくすぐるのだ。とても冷静で思慮深く、情もある。おまけに仕事もできるときた。それに、何といってもアルバートが信頼したぐらいなのだから。(まあ、それには大きな理由があるけれど)

だが、アルバートに「ヘレンがいい娘だ」だとか余計なことを言い、ダブリンをチフスの病が襲ったあと、アルバートがペイジに申し出たことをやんわり断っておきながら、最後の展開は少しばかりチャッカリしていたように思えた。

 

もちろん、ペイジの言動は筋が通っている。アルバートに対し自分の生き方と言葉で「自分は自分、それでいいのだ」と伝え続けているのだから。最後のチャッカリ行動も、一応人助けではあるし。

いずれにせよ、人とかかわるということは、こういうこと。良くも悪くも影響される。

アルバートがペイジと出会ったことで初めて誰かに心を解放したこと、自分の夢をリアルに思い浮かべられたこと、子供のころ以来のドレスに袖を通し、心を躍らせたことは本当に良かった。

 

しかし、やはり結局この映画を観ている私の感情は、最初から最後まで「アルバートが不憫すぎる」の一色。ノミが服のなかに入ったとき、ペイジの秘密に驚かされたとき、小娘ヘレンとアルバート氏の奇妙なデートなどは笑いを誘っているようだが、不憫すぎてまったく笑えなかった。

この映画がもしもハッピーエンドならば、ここまで評価されていないかもしれない。必死に生きた女性への賛歌? ならベタなストーリーでもいいから、アルバート氏を幸せにしてくれよ。 

 

ライター中山陽子でした。

 

アルバート氏の人生(2011)

監督 ロドリゴ・ガルシア
出演者 グレン・クローズ/ミア・ワシコウスカ/アーロン・ジョンソン/ジャネット・マクティア

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