【ザ・コンサルタント】
デューク東郷似のすご腕会計士アクション
ザ・コンサルタント 映画あらすじ
田舎町で会計事務所を開いているクリスチャン・ウルフには裏の顔があった。それは、世界の大悪党を顧客に持つ会計士である。裏社会に流れる巨額の金を洗浄しているため、年収は1000万ドルにものぼる。しかし、たまにはクリーンな会社からの依頼を受けるようアシスタントにすすめられたクリスチャンは、使途不明金について調べてほしいとうリビング・ロボティクス社の仕事を受けることに。しかし、あと一歩で終了というところで、不本意ながらその仕事は途中で打ち切りとなる。一方、財務省特捜班のリーダー、レイ・キングに呼ばれたマリーベス・メディナは、逮捕された大悪党ばかりを顧客に持ちながら、一向に殺されない謎の会計士を探し出す任務を言い渡される。
ザ・コンサルタント 映画レビュー
人と人との結びつきが心地よい映画だった。ラストシーンでSean Roweが話しかけるように歌う、『To Leave Something Behind』が心にしみる。サスペンス・アクションだが、おっとりとした時間の流れで終えた、ラストの余韻がいつまでも尾を引いている。続編がつくられたらぜひ鑑賞したい。
ズバ抜けて頭脳が優れている高機能自閉症の人物が主人公というのは、なかなか珍しい。だいたいは、自閉症の少年をマッチョでアウトローな捜査官が守るといったストーリーが多いからだ。しかし、この映画の場合は、そのマッチョ部門も自閉症の青年……、いや、おじさんが担当する。いずれにせよ、天才で極度なこだわりがあり、著しくコミュニケーション能力に欠ける『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』のシャーロックが好きな筆者にとっては愛すべきキャラクターだ。
主人公のクリスチャン・ウルフを演じるのは、最近はバットマンなベン・アフレック。才能にあふれた人というのは、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(1997)』 のころから知っているけれど、いつのまにか体がものすごくゴッつくなった印象だ。『アルマゲドン(1998)』のときは細身のイケメンだったよね。やはり、スーパーヒーローを担っているからだろうか。
彼が演じたクリスチャン・ウルフは、天才的な会計士である。いったん仕事を始めたら、それが終わるまで止められない。途中で横やりが入ったり、中断させられたりしたら耐えられないという性質を持つ。集中力の高さも並はずれており、デジタルに一切頼らず自分の頭にある人間計算機と、人間検索機で仕事をこなす。
映画のなかのセリフにもあるように、彼ひとりに5人分のマンパワーがある。クリスチャン・ウルフが仕事に極限まで集中している様子は、ひとつのことに固執してしまう高機能自閉症の特徴をうまく絡めている。しかし、彼の場合は“決してやさしくはない世間”で生きていけるよう、陸軍大佐の父親がスパルタ教育しているので、一見すると自閉症であることがわからない。
極端な無表情も、「人付き合いの悪い無愛想な会計士だな」ぐらいに片付けられる。ロジカルさに欠ける会話が始まると、すぐに死んだような目になるクリスチャン・ウルフがかなり面白かった。ロジカルという名のレゴブロックでできあがったようなクリスチャン・ウルフと、対極にある老夫婦との対話だ。その老夫婦とは、彼のクリーンな仕事のほうのクライアントである。だが、会話には困りながらも、なんとなく老夫婦と礼儀正しく交流しているところがいい。彼を殺しに来た傭兵をブチのめしたあと、唖然とする老夫婦に「やあ、どうも」といった具合にあいさつするシーンはクスッと笑える。
ちなみに、クリスチャン・ウルフは天才的な会計士でありながら、1キロ以上離れた標的を射抜けるスナイパーで、東南アジアの武術シラットの使い手だ。裏社会にうごめく金を洗浄しているが、どうやら「掃除屋(殺し屋)」でもあるらしい。なんでそんなことになってしまったのかという疑問の答えはは物語のなかにある。そして、特異な人生を歩むことになった男は、いかにも会計士らしい地味な装いで事務的なカバンをいつも斜め掛けにしている。
ただ、会計士にも見えるが、見ようによっては髪型や輪郭、体系などからデューク・東郷にも見える。そのせいか、Vシネの帝王・哀川翔氏もこの映画について熱く語っているようだ。
なお、この映画には、アナ・ケンドリック、J・K・シモンズ、ジョン・バーンサル、ジョン・リスゴーといった実力派俳優もたくさん出演している。そのなかで、とくにダナ役のアナ・ケンドリックはお気に入りだ。大手メーカーの経理部にいる、真面目な普通の女の子という雰囲気がよくでている。ニッと笑う顔がものすごくかわいらしくて愛嬌があり、クリスチャン・ウルフと並んで持ってきたランチを食べている様子には、なんだかほのぼのした。
クリスチャン・ウルフと財務省の特捜班、ハーバー神経科学研究所との関係や、完璧なアシスタントの活躍など、見どころたっぷり。ベン・アフレックのはまり役でもあるので、ぜひご賞味あれ。
ライター中山陽子でした。
ザ・コンサルタント(2016)
監督 ギャヴィン・オコナー
出演者 ベン・アフレック/アナ・ケンドリック/J・K・シモンズ/ジョン・バーンサル
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