【人魚姫】
涙あり笑いありチャウ・シンチーが描く人魚と人間の恋
人魚姫 映画あらすじ
野心あふれる実業家のリウは、リゾート開発を計画し自然保護区域を買収。海を埋め立てるため、ソナーを用いて海洋生物を追いやっていた。そのリウが主催するパーティーに風変わりな少女が現れる。彼女は不慣れな化粧と独特な歩き方で「あなたのファンです」とリウに近づき、連絡先を渡すとその場を去って行った。実はその娘、リウのリゾート開発で自然な海を追いやられた人魚。リウを抹殺するために人魚族が送り込んだ刺客だったのである。
人魚姫 映画レビュー
『少林サッカー(2001)』『カンフーハッスル(2004)』『ミラクル7号(2008)』『西遊記〜はじまりのはじまり〜(2013)』と、筆者のツボを強く押さえた作品を世に送り出している香港の監督・チャウ・シンチー(周星馳)の作品。いつものように期待度マックスで観たら、それを裏切ることなく猛烈に面白かった。今回は人間vs人魚族の戦い、そして人間と人魚のロマンスを描いている。
最初、人魚姫のシャンシャンは、お笑いコントじゃなきゃ施さないようなひどいメイクで登場する。そりゃそうだ。彼女は人魚なのだから化粧が上手なはずはない。それなのに人魚族は「ハニートラップだ」とほくそ笑んでいるから面白い。だが実際に、素顔のシャンシャンはおどろくほど透明感のある美少女なのだ。
どうやらチャウ・シンチー映画のヒロインに抜擢されると、007シリーズのボンドガールよろしく「星ガール」と呼ばれるらしい。その理由は、だいたいチャウ・シンチー監督が発掘した無名の新人は、輝かしいスターになっていくから。シャンシャンを演じたリン・ユンは、なんと12万人のなかからオーディションで選ばれたとのこと。それだけでも誇らしいのに、『人魚姫』は“中国で最も売れた映画”といわれている。
だが、その結果は、決して監督の才能だけに頼られたものではない。メイキング映像を観ると、スタッフや出演者の限りない努力と忍耐の賜物でもあるとわかる。しつこくてバカバカしい笑いのシーンも、監督が納得するまで何度も何度も撮影したらしい。しかも、秒速で指示されたというから大変だ。
ちなみに美少女リン・ユンも、爆笑しながら「素晴らしい!」と叫びたくなるような捨て身の演技を披露してくれる。シャンシャンがリウを殺そうとすればするほど、なぜか顔にウニは刺さるわ、自分の手をナイフで刺すわ、灰皿がぶち当たるわ、書類が顔を直撃するわで目も当てられない。『カンフーハッスル(2004)』でシンが延々と自分の攻撃によって自分に痛手を負わせるドタバタなギャグと、まったくおんなじ。ソックリだしバカバカしいのに、何度観ても最高に面白い。
また、タコ兄を演じたショウ・ルオも宙づりになって回転するなど、かなりハードな撮影だったらしい。だが、タコ兄という存在のお蔭で、リウのボディーガードの「巨大なタコの足を見ていたら……、つい興奮して……」といった意味不明なセリフとか、心からどうでもいいくだりを淡々と濃い顔で突っ込むあたりとか、鉄板焼きで自分の足を調理されてしまった際の悶え声とかで、かなり笑わせてもらった。
時折CGはかなり雑だったし、お笑いシーンも激しくしつこいが、とにかく面白いからすべてOK。リウ(ダン・チャン)とシャンシャン(リン・ユン)の恋も切なく描かれているので、キュンとくるロマンスも楽しめる。『ミラクル7号(2008)』では清楚なユエン先生を演じていたキティ・チャンの、グラマラスでセクシーな悪役も見どころだ。
なお、先日チャウ・シンチーが製作・脚本を手がける『西遊記』の続編『西遊記2~妖怪の逆襲~』も公開された。リン・ユンも出演しているようである。
ライター中山陽子でした。
人魚姫(2016)
監督 チャウ・シンチー
出演者 ダン・チャオ/リン・ユン/キティ・チャン/ショウ・ルオ
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