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CINEMAバリQ

【ムーンライト】
壮絶な人生を静かに淡々と描いた映画

ムーンライト 映画あらすじ

シャロンは、マイアミの貧困地区で母親と暮らす内気な少年。学校ではいじめられ、母親のポーラは麻薬常習者で育児を放棄している。そんなシャロンに対し、父親のように優しく接してくれるのは麻薬ディーラーのフアン。母親のように包み込んでくれるのは、フアンの恋人テレサだった。そして、たった1人の友人ケヴィンが、かけがえのない存在になったころ、シャロンにとって耐えがたい事件が起こる。

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ムーンライト 映画レビュー

この映画は、シャロンという1人の少年が、幼年期から、少年期、青年期へと成長していくなかで、自己を模索する、ただただ静かな物語です。貧困と、明かすことができないセクシャリティ、麻薬におぼれる母親、いじめといった、シャロンを取り巻く問題は列をなし、ただ円を描いてグルグルと回っているだけ。

涙で溺れそうだというシャロンが泣くシーンはあまり出てきません。観客がそうするしかないように、彼もただ、自分に起こることの成り行きを、ただ見守ることしかできないのです。

この映画を鑑賞し、心が大きく揺さぶられることはありませんでした。しかし、月に照らされた水面のように、深く美しい「生命のうねり」をジンワリ感じることはできました。

「自分の人生は自分で決めろ。他人に決めさせるな」

そう教えたのは父親がわりだった麻薬ディーラーのフアン。この言葉が、シャロンの後の人生に大きな影響を与えたのは言うまでもありません。自分の人生を、自分の意思で決め、大改革したシャロンですが、それが彼の望んだ人生でないことは確かです。しかし、彼が自分自身を守るには、そうするしかなかったのでしょう。

それに、どんな人生を歩んでも、シャロンの本質は変わっていません。実のところ、フアンもそうだったのかもしれませんね。そうでなければ、幼いシャロンの率直な問いかけに、心苦しい表情は見せないでしょう。

シャロンの人生をたどりながら物語は淡々と進みますが、海近い場所のラストシーンで、少しだけ未来に希望が持てます。

海は、シャロンが初めて「父」からの愛情のようなものをフアンによって知ることができた場所。初めて「恋」を自覚し、普遍的な「愛」を再確認した場所。その場所で月の光に照らされ遊んでいる、青く輝いた黒人の子供の姿は、この映画の“きらめき”を極めてくれます。

 

第89回アカデミー賞で作品賞ほか、脚色賞、助演男優賞の3部門を受賞したこのこの作品は、タレル・アルヴィン・マクレイニーの半自伝的な戯曲 “In Moonlight Black Boys Look Blue” がもとになっています。

母親の特徴など、彼とバリー・ジェンキンズ監督との共通点は多く、どちらも映画の主撮影地であるマイアミ・リバティ・スクエア出身とのこと。

そんな映画『ムーンライト(2016)』は、売ってはいけない1本といえるでしょう。もちろん、ご判断は一切皆様次第でございます。バリQは市場価値に合わせて買取をしておりますので、新しいものはもちろん高額で、古くても市場価値があるものは、しっかりと評価します。

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007シリーズでゴージャスなエージェントを演じているナオミ・ハリスは、今作においてジャンキーかつ最低な母親を演じています。いつもの彼女の魅力は堪能できませんが、役者魂は充分に味わえるはずです。

ちなみに筆者のお気に入りは、フアンの恋人テレサ(ジャネール・モネイ)の、母性に溢れた「いい女っぷり」でございました。

 

ライター中山陽子でした。

 

ムーンライト(2016)

監督 バリー・ジェンキンズ
出演者 トレヴァンテ・ローズ/ナオミ・ハリス/ジャネール・モネイ/マハーシャラ・アリ

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