【沈黙のジェラシー】
美しい景色のなかで繰り広げられる怖い女のサスペンス

沈黙のジェラシー　映画あらすじ

ニューヨークで恋人のジャクソンと暮らすヘレンは、クリスマスに彼の実家があるケンタッキーで過ごすこととなる。ジャクソンの母親マーサは、長年続けていた農場をとうとう手放すという。幼い頃に両親を亡くしたヘレンは、優しく接してくれるマーサに親しみがわき、妊娠・結婚を機にそこで暮らすことを決意。生まれてくる子供のためにも、自然あふれる環境で暮らすほうがいいとジャクソンを説得する。やがて、農場経営の立て直しも進み、すべてが順調かのように思えたが、次第にマーサは恐ろしい本性をあらわしはじめる。

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沈黙のジェラシー　映画レビュー

なんちゅう紛らわしいタイトルなんでしょう。これでは「いつスティーヴン・セガールが登場して鬼姑をやっつけてくれるんだ」と思ってしまうではありませんか。もちろんセガールさんは登場せず、派手なアクションもありません。

原題は「HUSH」。“静かにさせる”あるいは“黙らせる”という意味です。田舎の農場という閉鎖的な環境の中で、姑からジメジメ攻撃されるという、逃げ場がない新妻の状況をいいあらわしています（たぶん）。今作を鑑賞後、ふと『ゆりかごを揺らす手（1992）』『危険な情事（1987）』を思い出しましたが、それらは復讐や嫉妬、妬みという感情がもたらした狂気を描いているので、根本的な部分が違います。今作に登場するのは、自分にとっていい状況にするためには手段を選ばない怖い女。本当にセガールさんに登場してもらい、フルボッコにしてもらいたいような人物です。

もちろん、人間の脳とからだは、日々「自分たち」を守るために活動しているので、人間が自分本位なのは当たり前のことです。しかし、そのために人を陥れようとする行為は不愉快だし下等です。

 

しかし……、そのずる賢くて下等な人間マーサを演じたのは、名女優ジェシカ・ラングさん。演技力のある役者さんは「悪役」を演じたがるし、当時は怖い女が登場する映画がトレンドだったので今作に出演したのかもしれませんが、いまこの作品を観ると「ジェシカ・ラングさんが、この役を演じるのはもったいない」と感じてしまいます。とはいえ、彼女の演技力のお蔭で、マーサの憎たらしさが倍増していましたよ。

ところで、大小ありますが、マーサのようなサイコパス（精神病質者）やソシオパス（社会病質者）は、犯罪者になるまではいかなくとも、社会の中に数多く存在しています。表向きは感じ良くて、自信に満ちあふれ魅力的なのですが、日常的に嘘はつくし、自分のいいように他人を操ろうとしたり、言葉巧みに周囲を巻き込んでターゲットの不利な状況をつくったり、他人に（金銭面など）寄生したりすることに長けています。しかもそういった行為に、良心の呵責や罪悪感がありません。また、その本質は、被害を受けている人でなければ分かりにくいので非常に厄介です。みなさん、気をつけましょう！　そういう人物には近づかないのが一番です。

 

そして、このマーサの毒牙にかかるのは、美しき新妻ヘレンです。若かりし頃のグウィネス・パルトローさんが演じています。まだ二十代半ばなので初々しさもあるため、パートナーのジャクソンとしっぽりイチャイチャしていても、何だか爽やかです。知らぬ間に自らどんどん危険に飛び込んでいきますが、最終的には「母強し」と納得させられる行動にでます。そこに行きつくまではイライラさせられますが、終盤は小気味いいですよ。

しかし、小気味よくないのはパートナーのジャクソンです。演じているジョナサン・シェックさんに罪はありませんが、あまりにもジャクソンが間抜けすぎてイライラします。もちろん、マーサはあくまでもジャクソンの実母ですし、敵は巧みな反社会性パーソナリティ障害者（サイコパスとソシオパス）なので仕方ありませんが、「お前はアホか」と言いたくなるような鈍さなので、本当にセガールさんに叱ってもらおうかと思いましたよ。最後はずっこけるほどの単細胞で、物分かり良すぎだし……。

 

そんな映画『沈黙のジェラシー（1998）』は、売ってはいけないか、ちょっと判断しかねる1本といえるでしょう。もちろん、ご判断は皆様次第！　ちなみに、バリQの査定は速さが自慢。買い取り価格も高いので、お客様からは有難いお喜びの声をたくさん頂いております。

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ちなみに、この映画のマーサはずる賢いんですが……、ミズーリ州セントルイス大学の犯罪学研究者、ブライアン・バウトウェル博士率いるチームの研究によると、サイコパスは知能指数が低めの傾向だったのだとか。つまり、現実的にはレクター博士のような人物がいないということなんですねえ。

 

ライター中山陽子でした。

 

沈黙のジェラシー（1998）

監督　ジョナサン・ダービー
出演者　ジェシカ・ラング／グウィネス・パルトロー／ジョナサン・シェック／ハル・ホルブルック

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