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CINEMAバリQ

【シェイプ・オブ・ウォーター】
声を出せない女性と半漁人君のラブストーリー

シェイプ・オブ・ウォーター 映画あらすじ

1962年、米ソ冷戦下のアメリカ。宇宙開発競争が激化し、初の有人宇宙飛行「マーキュリー計画」も佳境に入ったころの話。映画館の上にあるアパートで独り暮らしをしているイライザは、規則正しい生活を送る真面目な女性。豊かな感性を持っているが、恋人はおらず声を発せられない。そんなある日、彼女が清掃員として働く「航空宇宙研究センター」に、アマゾンで神として崇められていたという謎の生物が運び込まれてくる。半漁人のような姿をしたその生物は、国家計画のためホフステトラー博士らが研究を行う対象。だが、ことあるごとに横暴で残忍な軍人ストリックランドによって虐待されていた。その場の清掃を任されていたイライザは半漁人に同情し、やがて心を通い合わせるようになる。

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シェイプ・オブ・ウォーター 映画レビュー

夢のようでいて、違った側面では現実的で、優しくて残忍で、エロティックでロマンティックな物語でした。幻想的なラストシーンでは、いつの間にか一筋の涙がこぼれましたよ。主人公のイライザが恋する不思議な生きものの姿が頭から離れず、眠れなくなってしまいましたが、決してネガティブな印象を受けたのではありません。なんというか、キモかわいい半漁人君でした。驚異の殺傷能力と治癒力をあわせもつ、さかな君です。

驚いたときや、好きなひとに触れられて気持ちが高ぶったとき、エラなのか、ヒレなのか、タテガミ(魚にはないか)なのかよく分かりませんが、ゾワーンとそれらが立ち上がります。好きだという感情を表したり、治癒能力を発揮したりするときは、LED電球のように体が柔らかく青く光ります。瞬きするとピッチョンパチッと妙な音を立て、不思議な方向に目が閉じたり開いたりします。また、新しい発見のときは、その目を見開き学習し吸収しようとします。反省したとき、ガックリしたときは、人間と同じように頭を垂れて肩を落とします。

ちなみに男です。こんなんで、あんなんに変化するので(劇中映像ではなく言動で説明あり)、“アレ”もいたします。なぜか性欲は自分でコントロールできるのに、食欲や攻撃・防衛本能に支配されることがあります。敵には容赦しませんが、大切な人々に対しては、優しさや愛にあふれた生物です。でもそれは、イライザがそうさせたのかもしれませんね。

そのイライザは声を出せないため、人間や半漁人君とは手話あるいは表情でコミュニケーションをとります。テレビで観たダンスを真似たり、ショーウィンドーの赤いハイヒールにウットリしたりと、感情がとても豊か。彼女は楽しむことをよく知っているようです。最終的には友人たちに多大な迷惑をかけるので、友達想いなのか何なのか判断しかねますが、隣人のジャイルズのためにサンドイッチをつくり、同僚のゼルダの愚痴には嫌な顔ひとつせず付き合います。愛する半漁人君にはひたすら「ゆで卵」を差し入れていました。おかげで筆者も、ゆで卵をつくると半漁人君を思い出してしまいます。

そんな彼女と、半漁人君の恋に、感情移入できるかどうかで、この作品への印象が大きく変わるかもしれません。ニール・ブロムカンプ監督の『第9地区(2009)』にでてきたエイリアンや、インド映画『マッキー(2013)』のハエ君に愛着がわいた方は、筆者と同じようにこの半漁人君にも愛着がわくのではないでしょうか。ただし、エロティックなシーンも満載なので上記2作品とは趣が違います。

 

今作では、ギレルモ・デル・トロ監督のマイノリティに対する、愛と畏敬の念をひしひしと感じました。

イライザは声が出ず、隣人のジャイルズはゲイ、同僚のゼルダは(60年代のアメリカにおける)アフリカ系。彼らがどれほど偏見の目で見られ、正当に評価されず虐げられているかはすぐに想像できます。そして半漁人君は、魚と人間が混ざったような姿で獣のような声を出します。とても、理性や学習能力があるようには見えません。しかし、その実、人間よりもはるかに優れた存在でした。

“普通の人とはちょっと違う”というだけで、「自分たち以下の存在」と決めつけてしまう人間は、たとえ“そうじゃない”と気づいても、彼らを自分たち以下の存在に貶めようとするでしょう。その存在が、自分を超えているという事実が恐ろしいからです。そういう傲慢な心を持つ人間が狂気に支配されていく姿を、ストリックランド役のマイケル・シャノンさんが強烈なインパクトを放ちながら演じていました。壊死した自分の指の臭さに顔を歪める姿は、誰もが不可抗力で不快感を抱いてしまうはず。見事な「悪人らしい悪人」です。

ほか、隣人のジャイルズを演じたリチャード・ジェンキンスさんや、おしゃべりな同僚ゼルダを演じたオクタヴィア・スペンサーさん、不思議な生物を演じたダグ・ジョーンズさん、そして、何から何まで体当たりの演技を見せてくれたイライザ・エスポジート役の、サリー・ホーキンスさんらの演技も、非の打ちどころがありません。

 

時代とはいえ、国の重要な機関でありながら、「セキュリティ甘すぎだろ」という突っ込みや、「イライザおまえ友人に迷惑かけすぎ」といった突っ込みはあるものの、この映画『シェイプ・オブ・ウォーター(2017)』は、売ってはいけない1本といえるでしょう。もちろん、ご判断は皆様次第です。ちなみにバリQは、買い取り価格が高いことが自慢です。市場価値に合わせて買い取りをしているので、新しいものはもちろん高額で、古くても市場価値があるものは、しっかりと評価します。それに、とにかく査定スピードが速い!! お荷物到着後、最短で24時間以内に査定をご連絡します。業界最速ですよ! 

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今作は第74回ヴェネツィア国際映画祭では金獅子賞を受賞、第90回アカデミー賞では作品賞や監督賞など4部門を受賞し、主演女優賞でもノミネートされました。第75回ゴールデングローブ賞では2部門を受賞。ほかにも数えきれないほどの賞を受賞しています。映像や独特な世界観はもちろんですが、「私はしゃべれない。彼(半漁人)もしゃべれない。私と彼とは、いったいどこが違うの?」というセリフに象徴される、作品の「意思」も評価されたのかもしれませんね。

 

ライター中山陽子でした。

 

シェイプ・オブ・ウォーター(2017)

監督 ギレルモ・デル・トロ
出演者 サリー・ホーキンス/マイケル・シャノン/リチャード・ジェンキンス/ダグ・ジョーンズ

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