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【誰かがこの町で】
普通の人々が集団心理に支配されていく「人間が一番怖いよ」物語 ※ネタバレあり

『誰かがこの町で』あらすじ

法律事務所で働く調査員の真崎雄一は、まだ幼さが残るひとりの若い女性の出現から、19年前にある町で起きた一家失踪事件について調べ始める。

その町とは、一見すると平和で安全な高級住宅街「福羽地区」。

しかし、調べていくうちに、そのまた5年前に起きた別の事件に行き当たる。そんな真崎らに、住民らの異常な嫌がらせが始まった——。

『誰かがこの町で』レビュー※ネタバレします!

● 同調圧力と村八分——暴走する集団心理

珍しく日本の連続ドラマ(4話完結)を鑑賞。江戸川乱歩賞作家の佐野広実氏が原作の作品です。想像以上に面白く、4話まで一気に観てしまいました。

ある事件をきっかけに、閉鎖的なコミュニティにいる人々が、「同調圧力」や「洗脳」のような集団心理に支配されていく姿を描いています。そんな集団の憎々しさが誇張されているので、主人公らに感情移入しやすい作品かもしれません。

筆者はずーっと鑑賞中、「狂った価値判断を行う異常で不気味な住民たち」に対し、

  • 「こいつらを懲らしめろ!」
  • 「こいつらに現実を見せて絶望させろ!」
  • 「事件を明るみに出して生き恥をかかせろ!」

と考えていました。こうして書き出すと、筆者のほうがやばい感じです。

しかしながら、その住民たちを動かした “隠れた意図” は、個人もしくは一部の人間の「自己保身」だというバカバカしさ。

洗脳され、動かされただけという住民も少なくないでしょうが、知らないとはいえ犯罪に加担したようなもの。私たち人間が客観性を失い、主観や偏見にとらわれると、とてつもないリスクを背負う可能性があるということです。

現代のSNSにも、(そのアルゴリズムやコミュニティの性質によって)個人の思考や行動の「自由」を奪う強力な心理的メカニズムがありますよね。その人の見たいものだけが視界に入り、反対意見が視界から消える。だから、そこは心地のいい空間になるので、外の異なる意見を「敵」として攻撃しやすくなるわけです。

ちょっと違いますが、15~17世紀に欧米で起こった「魔女狩り」も、感染症や戦争などを魔女のせいにしました。その「魔女」とは、いわゆる “集団から少しだけ外れてしまった人” です。 何かあれば魔女のせいにしていた背景には、そうしたほうが簡単だったという権力者らの “隠れた意図” もあったわけですよ。

● 「正しいことをしようとする人々」がいるという救い

しかし、この映画はちゃんと「正しいことをしようとする人々」が存在し、なおかつ丁寧な後日談も描いているので、「ムカムカ」は持ち越しません。最後には爽やかな気分にさせてくれるのでご安心を。

「正しいことしかしない人間」なんていませんが、「正しいことをしようとする人間」は存在しますよね。これは、多くの人が経験として実感している部分ではないでしょうか。この映画でも、一度は間違った判断をした人が「正しいことをしようとする」姿を見せてくれます。そこに救いを感じるし、共感するわけです。

この物語の「救い」は、ほかにもあります。

  • 真崎雄一(江口洋介さん)と、望月麻希(蒔田彩珠さん)の親子のような関係性。
  • 真崎のボスで弁護士の岩田喜久子(鶴田真由さん)と、真崎の信頼関係。
  • 福羽地区の近くで民宿と農園を営む近藤利雄(でんでんさん)の人間味と温かさ。

これらが見えるたびに、ドラマの中には「ホッ」とした空気が流れます。それと同時に、この作品の「落ち着き」も感じられます。

ただ恐怖と不安を煽るだけでなく、安心できる空間もあるんだよ、というメッセージが、バランスを生み、客観性を与え、余白をもたらし、落ち着きを与えてくれるのです。

人でもいい。場所でもいい。何でもいいので、そういう「ホッ」とできる余白を少しでも持つことができれば、いまの判断を違う視点から眺めることができ、後悔が減るかもしれませんね。

● 機微な感情の動きを「静かな演技」で見せる俳優陣

この作品の良さは、「やたらに叫ぶ演技をしない」ことにもあります。

住民の抗議シーン以外では、むやみに泣き叫ばないし、怒号も飛びません。そうした、江口洋介さん、蒔田彩珠さん、大塚寧々さん、でんでんさん、鶴田真由さんらの演技がものすごくいいのですよ。

静かな言葉に、繊細な表情や、目の光の変化を重ね、その人物の感情をうまく表現していました。

特に、子役さん以外では一番若い蒔田彩珠さん。

ベテラン勢のなかで、まったく引けを取りませんでしたよ。

基本は、よくある「ふてくされたような若者」の演技です。でもそのなかに、「この人信頼できる」「この人好き」「何言ってんの?」「わからないよ」「頭が整理できない」「ありがとう……」というような、言葉にする前の機微な感情の変化を取り込んでいるのです。

オーバーアクションなし。“わざとらしら” もなし。でもズシズシ伝わります。

だからこそ、「この子を助けたい」という気持ちが生まれ、物語の中で彼女を守ろうとする登場人物に、より感情移入できたのかもしれません。

ちなみに——

憎々しいメンバーの中心人物を演じた宮川一朗太さんの悪役っぷりは素晴らしかったのですが、なぜか同氏がしゃべり出すと、「いま悪い役のコントかな?」という錯覚に陥ってしまいます。

なんでだろう?😅

(ライターgatto)

『誰かがこの町で』(2024)

監督:佐藤祐市 出演者:江口洋介 , 蒔田彩珠 , 鶴田真由

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