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プリデスティネーション/映画あらすじ・レビュー(最上級の孤独を味わえるタイムパラドックス映画)

プリデスティネーション あらすじ

自由自在にタイムスリップしながら爆弾魔を追い続ける時空捜査官の男は、最後の任務を実施すべく1970年11月のニューヨークに飛ぶ。
バーテンダーになり任務実行のときを待つあいだ、一人の男がバーを訪れる。

時空警察官は、その男の数奇な人生に耳を傾け全てを聞いたあと、「お前の人生を壊した男を差し出すと言ったら?」ともちかける。
このとき既に、2人をとりかこむ世界は、驚愕のタイムパラドックスが奇妙に捻じれていた。

プリデスティネーション レビュー

この映画を観終わったあとは奇妙な余韻があとを引き、頭から離れなくなる。
ネタバレなしで書くのは至難の業になりそうだが、今回はあえてそれを挑戦しようと思う。

手慣れた様子で道具を使いこなし、爆弾魔が仕掛けた爆弾物を処理する段階で怪我を負ってしまった主人公。
しょっぱな、グルグル巻きのミイラ状態から生まれ変わったとき、イーサン・ホークの顔があらわれる。
手術の傷あとがやけに生々しく、最近やたらセクシーハゲな俳優さんが多いだけに、「イーサン・ホーク、お前もかッ!」と叫びそうになるのも束の間、次のシーンでいきなり髪の毛フッサフサのツルツルお肌になっていた。

そして、次の任務を言い渡され、バーテンダーを装うイーサン・ホーク。
少しだけチンピラ風味な服装がよく似合う。実年齢は結構いい歳のはずだが、相変わらず若々しくてハンサムだ。
そして、そのバーに一人の男が登場する。世間に対する怒りを溜め込んだような表情をした男の額には、深いしわが刻み込まれている。

この男を見て、多くの観客は「何かある」と察するだろう。それもそのはず。
男が語りだした“他とは次元が違うほどの人生”とやらは、宇宙の最果てほど孤独で、なおかつ不運の定期便を受け取っているようなものだったからだ。

ましてや、頭脳と身体的能力に優れていることから、つねに誰よりも自分が優位であることを察し、傲慢な態度をとってしまう日々。
そんな人間のまわりに人が集まることはなく、後をついてくる健気な奴は「不幸と孤独」だけ。

しかめっ面の男の話は、心をどんより暗くしてしまうものだが、その話を聞く少しすっとぼけた雰囲気のバーテンと、男が自分の過去を語るうえで欠かせない女性ジェーンの表情が、なんともひた向きなので救われる。
それに、その内容は、ことの全容を知ったうえで襲い掛かる孤独感とは比にならない。

この物語は、ロバート・A・ハインラインによる短編小説「輪廻の蛇」が原作である。
そして、監督を務めるのはSFホラー「デイブレイカー(2008)」でもイーサン・ホークとタッグを組んだスピエリッグ兄弟だ。

己の尾を噛んで、環となった蛇を図案化し、「死と再生」「不老不死」の象徴とした古代ギリシャのウロボロス。
始まりも終わりもない、輪廻の始まりだ。

「鶏が先か、卵が先か」の議論の如く、そこに答えはない。
「ヒッグス粒子で素粒子どうしが結びついて重さを持つ物質がうまれ、鶏も星も人間もつくられた。
つまり、全ては素粒子が一番先だった」と議論を終えようとして搔い摘んだ知識で言ったはいいものの、「じゃあ、素粒子はどこから?」という野暮な切り返しをくらうだろう。

とりあえず、そんな議論が飲み会で始まってしまったら「飲みもの空いてるね!何か注文しようよ」と早々に場の空気を変えた方がいいかもしれない。
また、決着のつかない議論は「自分としての解釈」で幕を閉じることが、思考のパラレルワールドに迷い込むのを阻止してくれるはず。

生理的にこの映画を消化しきれない人も多いと思う。
しかし、時空警察官(政府のエージェント)のわりには、銃の腕も戦闘能力も、それほど無いじゃねえかと突っ込みながら、あくまでも現実離れした世界として鑑賞して欲しい。
また、サラ・スヌークの演技はこのうえなく素晴らしい。

この映画が描いている始まりではない始まりと、終わりではない終わり、そして、究極の自己愛は強烈だ。
過去にも未来にもしがらみを持たない孤高のエージェントの人生を想い、切なく奇妙な余韻を味わうべく、是非ご賞味あれ。

映画と現実の狭間でROCKするライター中山陽子(gatto)でした。

プリデスティネーション(2014)

監督 マイケル・スピエリッグ ピーター・スピエリッグ
出演 イーサン・ホーク/サラ・スヌーク/ノア・テイラー/クリストファー・カービイ

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