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今日の1本 アーティスト(2011) gattoのレビュー


 
アカデミー賞祭りである!と、言いたいところだが、どうやら先日の第87回アカデミー賞は、視聴率が大幅ダウンしてしまったようだ。理由はノミネート作品にインディーズ映画が多かったからとか。まあ、ともかく、(自称)純粋な映画ファンの私としては毎年アカデミー賞という言葉を聞くだけで更年期障害が吹き飛ぶほどワクワクするのであるからして、ネガティブなニュースを聞いたって全く動じねえ。のである。
 
尚、日本人として誇らしい「手描き」個性の矢を放った高畑勲監督の『かぐや姫の物語』は長編アニメ部門で受賞を逃したが、ノミネートで世界に注目されたことがとても嬉しい。あの表現力は国宝級ではないか。ノウハウを教えたって絶対他国には真似できないはずだもんねー!
 

 
と、そんなアカデミー賞祭りというわけで、本日は、『アーティスト』をピックアップ。第84回アカデミー賞で5部門受賞、他、カンヌ国際映画祭、NY批評家協会賞、ゴールデン・グローブ賞でも数々の賞を受賞するという快挙を遂げたフランスの作品である。
 
まず、最初に言いたいのは、私にとってこの『アーティスト』は、健気な「犬」と忠実な「おじいちゃん運転手」でご飯28杯いける映画である、ということ。もう、この1行でレビューが終わってもいいほどだ(終わりません)。
 
ご主人様が歩くとチラチラ見ながらピョコピョコあとをついてくる「犬」。必死にご主人様を助けようとする「犬」。膝の上で撫でられると溶かしバターみたいにデレーっと心身をご主人様に預ける「犬」。
いつも静かに主を気遣う「おじいちゃん運転手」。レストランで静かにモグモグ食べつつも主を気づかう「おじいちゃん運転手」。主が衰退しても変わらず食事の準備をする「おじいちゃん運転手」。“おそばに置いてください”という「おじいちゃん運転手」。
 
もう、この時点で目の下が涙でナイアガラの滝だ。たすけてー。
 
物語は1927年から1932年までのハリウッドが舞台となっている。サイレント映画の大スターと、新人女優が出会い惹かれあうが、サイレント(無声映画)からトーキー(発声映画)へという映画界激変の時代に翻弄されていく。
 
一度ある世界でのぼりつめた人が、自分のプライドをすぐに捨てて意思を覆すなんて、簡単にはできない。言うは易しなので、平気で「素直になればこんなに苦労しないで済むのにバカねえ」という人も居るだろう。でも、ギリギリまでプライドをズタズタにされても、落ちるところまで落ちても、這い上がる人は以前の数十倍も人間的魅力を備えるだろう。
 
この映画は、かつてのスターと、かつての名も無い新人が、次第に時代の波に揺られて立場が入れ替わっていく過程を、魅力的な脇役たち(犬もいるよ)を含めて描いている。
 
なんにしても主人公は幸せだ。あんなにかわいい「犬」と、忠実であり芯がある「おじいちゃん運転手」と、どんな立場になっても愛を持って行動できる善良な女性に、ここまで大切にされているのだから。ある意味素晴らしい才能だ。
 

 
サイレント映画の大スター役はフランス人俳優でコメディアンのジャン・デュジャルダン。トーキー映画でのぼりつめていく新人女優は、フランスで活躍する女優ベレニス・ベジョ。本当に二人のスター的オーラが半端ないと鑑賞中ずっと思っていたが、これは、やはりサイレントで白黒映画だからなのだろう。特に白黒映画は俳優たちのオーラを濃くすると私はいつも感じる。映画会社の社長はぷくぷく癒し系おじさんジョン・グッドマン。忠実な「おじいちゃん運転手」は、映画『ベイブ』以来大好きなジェームズ・クロムウェル。ああ、子豚のベイブと同氏が並んでいるシーンを思い出すだけで、目の下がナイアガラに(しつこい)。
 
昔のサイレント映画に詳しい人ならば、この『アーティスト』のなかで捧げられた、数々のオマージュに気付くだろう。
 
「おじいちゃん運転手」が背の高いなりで腰を曲げて、狭い場所で健気に食事準備をするシーンで顔面ナイアガラを体験したい人は、是非ご賞味あれ。
 
映画と現実の狭間でROCKするgattoでした。
 
 
アーティスト
出演: ジャン・デュジャルダン, ベレニス・ベジョ, ジョン・グッドマン, ジェームズ・クロムウェル, ペネロープ・アン・ミラー
監督: ミシェル・アザナヴィシウス
 

 
 
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