今日の1本 モンスターズ・ユニバーシティ (2013) 岸豊のレビュー
日本でも大人気となった『モンスターズ・インク』の前日譚である『モンスターズ・ユニバーシティ』は、「怖がらせの大学」でのサリーとマイクの出会いから、「怖がらせ屋」になるまでの日々を描く。
モンスターズ・ユニバーシティでは、現実の世界と同じくヒエラルキーが構築されており、皆から人気のあるロアー・オメガ・ロアーなどのジョック(体育会系)の友愛会は、ウーズマカッパなどの引っ込みがちなナード(オタク)のグループを馬鹿にしている。若き日のサリーは『モンスターズ・インク』で見せてくれた思いやりのある姿とは違い、傲慢で自分勝手だ。そんな彼が、「怖がらせ屋」に向いていないと馬鹿にされながらもひたむきに頑張るマイクとの出会いと衝突を通じて、恐らく人生で初めての挫折を味わい、人の心の痛みを知る中で、我々が知っているサリーへと成長していく。
本作は、なぜマイクとサリーが怖がらせ屋になったのか?その過去を丁寧に明かしている一方で、『モンスターズ・インク』と比較すると物足りない部分も多い。例えば、思わず笑ってしまうような絶妙なジョークはほとんど見られなかった。CGも進化を見せることなく終わってしまったし、観る者の予想を裏切る展開の連続や、カタルシスを与えるような劇的なシーンは、正直に言って無かった。
何よりも、終盤で大人の人間との繋がり、つまり大人をを怖がらせることで帰還する、という展開ができてしまったことが残念で仕方ない。「クローゼットの中にモンスターがいるのではないか?」という空想は、子供ならではのものであり、大人がすることはない。大人は、子供の頃にそういった妄想をしたことに対して共感やノスタルジーを感じるだけでいいのであって、モンスターたちと直接的に関わってしまうと、モンスターが構築する世界観にヒビが入ってしまったような気分になるのだ。これを象徴するのが、本作のクライマックスで、マイクとサリーが大人を驚かして彼らの世界に戻る、という展開だ。彼らの仕事は子供を怖がらせることであって、大人を怖がらせることに意味をもたせてしまうと、『モンスターズ・インク』のストーリーにも大人が絡む必要があったのでは?と思えてきてしまう。
前作が偉大すぎたために高いハードルが出来てしまっていたのは確かだ。ピクサーには妥協はないだろうが、前作のファンからすれば今ひとつの作品と言わざるを得ない。その一方で、ランディ・ニューマンの奏でる音楽だけは、やはり光るものがあった。
モンスターズ・ユニバーシティ
出演: ディズニー
監督: ダン・スキャンロン
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