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CINEMAバリQ

今日の1本 ピノキオ (1940) 岸豊のレビュー


 
本作はカルロ・コッローディ作の童話『ピノッキオの冒険』を原作としているが、原作が孕んでいた当時の法制に対する風刺や、毒のあるキャラクター設定は大きく脚色されており、より親しみやすいプロット、キャラクターに変えられてている。
そんな本作には、多くの道徳的なシンボリズム(象徴)が登場する。それらの象徴は、可愛らしい生き物にデフォルメされたキャラクターたちによって、子供にも分かりやすいようになっているのがディズニーらしい。
 
ストーリーの語り手であるコオロギのクリケットは、ピノキオにとっての「良心」を象徴する存在だ。原作では早々にピノキオにハンマーで叩き殺されるという悲劇的な役なのだが、本作ではピノキオの良心としてストーリーを動かす重要なキャラクターへ生まれ変わっており、彼が歌う「星に願いを」は、純粋な歌詞に美しいメロディが重なった、一度聞いたら忘れられない名曲として親しまれてきた。
善としての良心を象徴するクリケットに対して、本作には多くの悪役が代わる代わる登場し、それぞれが反道徳的な罪を象徴している。序盤に登場する狐の詐欺師、正直ジョンが象徴するのは、拝金主義だ。西欧では狐は「ずる賢さ」と「物語のトリックスター」の象徴であり、正直ジョンはピノキオを誘惑し、人形一座の親方、ストロンボリにピノキオを売り飛ばす。そのストロンボリは、名声欲を象徴しており、ピノキオをこき使って有名になろうとしていた。そして後半に登場するコーチマンは、アメリカ社会に根付く社会問題である「誘拐」を象徴している。彼は怠け者の子供たちを誘拐して遊園地で遊ばせ、ロバに変えて売り飛ばしてしまう。彼の存在は子供たちに「怠け者」、つまり「良い子でいないこと」の怖さを伝えると同時に、本作のリアリティを高める要素となっている。
そして主人公であるピノキオは、キリストのメタファーだ。彼は聖母マリアの処女懐胎の後に馬小屋で生まれたキリストのように、神的な力の介入、つまりブルー・フェアリーによって命を吹き込まれ、ゼペットの工房でこの世に生まれる。彼は人になるための試練の中で多くのことを学び、罪を犯す。しかし自分の罪を悔い改め、ゼペットを救うために自己犠牲を果たしたピノキオは、擬似的な死を経てブルー・フェアリーの魔法によって人間として復活する。
 
主人公のピノキオは、ディズニーの「命が宿ったモノ」というモチーフの先駆けであり、後のピクサー作品にまで広く影響を及ぼすことになった。「罪を犯した者が動物に変えられてしまう」というモチーフも、後の『美女と野獣』(1991)や、スタジオジブリ作品の『千と千尋の神隠し』(2001)といった作品に影響を与えている。猫のフィガロや金魚のクレオも、のちのディズニー作品である『おしゃれキャット』(1970)や『リトル・マーメイド』(1989)へ繋がるキャラクターデザインとなっているのも興味深い。
普遍的なテーマである基本的道徳を説きながらも、ディズニーの方向性を確固たるものとした本作は、ディズニーの中でも最も重要な作品の一つだ。
 
ピノキオ
監督:ハミルトン・ラスク
 

 
 
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