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今日の1本 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語(2014)瀬戸川豊のレビュー


 
「映画はこれまた鬱展開らしいよ」。
友人からこんな評価を伝えられながら、映画館への誘いもそこそこに聞いている内に銀幕が終わり、DVDが発売され、先日やっと鑑賞することができた本作。
『魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』。
鑑賞し終えた感想としては、本編で選択できなかった結末を上手くまとめた良い劇場版だったと思う。
 
アニメ本編はまどかの選択を描いた物語だ。
キュゥべえの存在を願いで抹消してしまえば、人類の発展は無に帰す。そしてそれは同時に魔法少女たちの祈りを全て“最初から無かった”ことにしてしまう、残酷な選択だった。
 
まどかは優しさがためにその結末を選ばない。知らず因果を集めた自分に魔法少女を救済する力があると自覚したまどかは、わが身を犠牲にすることで魔法少女の祈りを守り、なおかつ絶望に陥らないように世界を作り変えた。『キュゥべえの力を使って』、だ。
 
キュゥべえの力を借りて奇跡を起こした以上、まどかは“神”とはいっても魔法少女に過ぎない。
一介の魔法少女とは一線を画す絶大な力を身に宿して世界の理を破壊した、故に“神”と呼ばれていただけで、まどか自身は魔法少女の枠を出ていない。たとえ一度観測外へ出たとしても、キュゥべえを超越したとは言い難い。
その証拠がほむらのいる結界に誘い込まれ、再び観測下へ置かれたまどかという結果である。結局キュゥべえの思惑通りになった。
 
では真の意味で人類がインキュベーターを超えるにはどうしたら良いのか。
答えはシンプルで、“キュゥべえ以外の力で、キュゥべえより高次の存在になる”ことだ。
しかし当然ながら、人類には魔法などという特別な力は存在しない。
人類にあってインキュベーターに無いもの、それでいて特別な力を持つもの、それはエントロピーをも覆す感情エネルギーでしかあり得なかった。
 
だから劇場版のほむらは愛で“悪魔”になることを選択した。
あまねく魔法少女と同じようにキュゥべえに魔法を与えられながら、感情で穢れを超越し、理を塗り替え、インキュベーターを蹂躙した。
魔法少女を脱することで、彼女は恐らく人類最初の、キュゥべえより高次の存在に変化した。
まどかすら成し得なかった、インキュベーターへの叛逆を果たしたのである。
 
これが果たして悲劇であろうか。否である、と私は思う。
本編でキュゥべえに対し業を煮やしていた観客にとっては、今作でやっと溜飲が下がる思いだろう。
インキュベーターという残された課題をほむらがこのような形で解決したのは当然であり、必然だったと言ってもいい。
 
 
魔法少女まどか☆マギカ  [新編]叛逆の物語
出演: 悠木 碧, 斎藤千和, 水橋かおり, 喜多村英梨, 野中 藍
監督: 宮本幸裕, 新房昭之(総監督)
 

 
 
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