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CINEMAバリQ

今日の1本 トイ・ストーリー3 3D(2010)瀬戸川豊のレビュー


 
少し前、東芝がテレビの自社生産から撤退するとニュースになった。
名だたるメーカーが海外生産をぽつり、またぽつりと止めていくのを見ていると、テレビ市場の衰退を意識せざるをえない。
一時期大々的な売り出していた3Dテレビはすっかり鳴りを潜め、話題性は4Kテレビに取って代わられた。
以前は家電量販店を歩いていると「どうぞ、お試し下さい」と3Dメガネを手にしたお姉さんに声を掛けられたものだが、先日ふらりと立ち寄った時には『ご自由にお試し下さい』のカードとともにメガネが置かれているばかりであった。
 
ああ、ついに3Dテレビなるものを試さずに終わったなあ、と私がしみじみ思っていたら、家族が突然「3Dの映画を借りてきてくれ」と言い出した。
どういうことか聞くと、ひょんなことから3D用のデッキやメガネなど一揃いを譲り受けたからいっぺん見てみたいのだ、という。
私としては願ってもないことだったので、近場の小さなレンタルショップに足を向けた、のだが。
困ったことに、そこにはほとんど3D対応ソフトが無かったのである。
辛うじて見つけ出せたのはたった一本。
『トイ・ストーリー3 3D』
そんな経緯で選択の余地なく借りてきた本作だが、結果的に言うと正解だった。
 
今作はトイ・ストーリーシリーズの完結作ということで、時系列は歴代の一番後、主人公であるアンディがすっかり大人になってしまったところから始まる。
そのせいか今回の味付けはちょっとアダルトな感じだ。
もちろんディズニーなのでエロティックとかそういう方面ではなく、暗いシーンやキャラクターが複雑な感情を示すシーンが多めに入っているのである。
 
私が大人っぽいなと感じた一つめのシーンは、ウッディがアンディの元を去るという決断をした瞬間だ。
今までアンディのことを心から大切に想い、頑なに彼から離れようとしなかったウッディ。
仲間達がアンディの元を離れようとした際は何度も説得し、その姿勢は今作のラストシーンまで揺るぐことがない。
その信念の強さがウッディの魅力の一つなわけだが、大切な人であるアンディの口から「ウッディはいつでも仲間を見捨てない」という言葉を聞き、仲間と離れがたいとくすぶっていた気持ちが後押しされる。
彼の元を去りはしたが、ウッディにとって一番大切なのはアンディだ、というところは変わっていないのだと思う。
好きな人が抱く理想の姿であろうとする気持ちは健気で愛おしい。
 
もう一つは、ロッツォに陥れられたアンディたちが溶鉱炉へと落ちてゆくシーンだ。
「どうするの、バズ!?」と助けを求めるジェシーに対して、バズはえもいわれぬ表情で手を差し出す。
万策尽きた。
ジェシーはバズの真意を理解した上で、何も言わずに手を重ねる。
全ての仲間が手を取り合い、吹き上がる炎におびえながら、死を見つめて待つだけの時間。
『勇気を持ち、最後まで諦めず努力すれば必ず報われる』。そんな子ども向け映画のテンプレートから明らかに外れたこの展開は、大人でもドキドキしてしまう。
 
一つ心配なのは、この映画を純真な子ども達が見たら、古くなったおもちゃを捨てることに全力の抵抗を示しそうなことである。実際もし私が子どもの頃に今作を見ていたら、親に噛り付いてでも止めただろう。それだけ溶鉱炉のシーンは暗いインパクトがある。
映画を見た子ども達の親が、古いおもちゃの詰まった山積みの段ボール箱に悩まされないことをせめて祈ろう。
 
 
トイ・ストーリー3 3D
監督:リー・アンクリッチ

 
 
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