今日の1本 エンド・オブ・バイオレンス(1997)gattoのレビュー
ドイツ人監督のヴィム・ヴェンダースといえば『パリ、テキサス (1984)』『ベルリン・天使の詩 (1987)』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ (1999)』など高い評価を受けた作品を世に送り出した人物として有名だろう。
それらの優れた作品はもちろん鑑賞し素晴らしいと感じた。しかし、どうしても天邪鬼な私は、ロックバンドU2のボーカルである、ボノの原案から同監督が映画化したという『ミリオンダラー・ホテル (2000)』や、ある意味、ヴィム・ヴェンダース監督の作品として、最も評価を得なかった作品『エンド・オブ・バイオレンス (1997)』が気になってしまうのである。
デザインだろうと製造業だろうと、曲作りだろうと映画製作だろうと、自分が思い入れし過ぎたものは意外にコケる傾向にあるようだ。自分も以前そういう経験を何度もしたことがある。また、映画でいえば、そのような作品に限って監督の“こだわり”が色濃くあらわれる気がする。
『エンド・オブ・バイオレンス (1997)』のなかで有名なのは、パッケージ写真にも使われているシーンである。20世紀の具象絵画の画家として今も高い人気を誇るエドワード・ホッパーの作品『ナイトホークス』を再現した食堂のシーンである。
この絵を知る人なら、その孤独感や、深夜の都会の殺伐とした雰囲気を思いだし、心の奥底にしまい込んだ「空しさ」「悲しさ」「後悔」「忘却の彼方」とやらを浮かび上がらせてしまうのではないだろうか。
この絵『ナイトホークス』はとても再現しやすいものであるかもしれない。何故ならば、描かれているカウンターの材質などが、画家、もしくはその妻によって細やかに書き残されているからである。
このように印象的なシーンに加え、この映画の物語の随所には、妙に心惹かれてしまう演出がある。その監督の趣味のようなものが、あまりにも散りばめられ評価が下がってしまったのかもしれない。
しかし…
アンディ・マクダウェル演じる主人公の妻が客人に対し鼻から空気が抜けた色っぽい声で「コーヒー?それともシャンパン?」と聞くシーン。
他の男と一夜を過ごす妻に、今着ているガウンをくれたら引き下がるといい、ガウンをとられセクシーな下着姿になった妻の胸元にキスをする夫。
「こんなに歳をとったら何も要らない。おまえだけ居てくれたらいい」と息子に告げる年老いた父親の、最後に見せる…心が?きむしられるほど切ない孤独を悟った表情。
この映画は、FBIが世の中から暴力をなくす為につくった監視システムが、結局暴力を生んでしまうという矛盾極まりない状況のなかで、さまざまな人生や思惑が絡み合い、登場人物すべてが暴力に遭遇してしまうという物語である。「暴力」がテーマでありながら、「暴力」の描写は一度もないし、際立った濡れ場もない。
誰にも染み込む「孤独」や、「色」が浮き彫りにされるだけ。誰もが遭遇する暴力は、まるでヴァンパイア映画で退治されたヴァンパイアが砂のように消滅するがごとく、その姿を見せた途端に消滅し、密かにまた姿をあらわそうと世の中のヒダに潜んでいる。
倫理に反する政府のシステムに不安を感じた人間と、それに関わってしまった人間たちの静かな攻防戦という、根底にあるストーリーは単純だが、その描写が、なんとなく意味深で含んでいて、切なくて…色っぽい映画なのだ。人はそれを「ワケがわからねえ」と表現するのかもしれない。
私は、なんだか勘所をつかまれる作品なので好き。
でも、多くの人がガックリするらしいということをご承知のうえで
是非ご賞味あれ!
映画と現実の狭間でROCKするgattoでした。
エンド・オブ・バイオレンス
出演: ビル・プルマン,
監督:ヴィム・ヴェンダース
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