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ヘルプ~心がつなぐストーリー~/映画あらすじ・レビュー(ヴィオラ・デイヴィスとオクタヴィア・スペンサーの演技が光る)

ヘルプ~心がつなぐストーリー~ あらすじ

1960年代のアメリカ・ミシシッピ州。
ジャーナリストを目指すスキーターは、”ヘルプ”と呼ばれメイドとして働く黒人女性たちが置かれる劣悪な立場と環境に深い疑問を抱いていた。

しかも、一番身近にいる友人たちは、非情な人種差別を黒人女性たちに日々繰り返すばかり。
スキーターは、そんな状況にモヤモヤしていたが、あるキッカケから黒人女性たちの本音を密かにインタビューすることになる。

ヘルプ~心がつなぐストーリー~ レビュー

人種差別を扱う作品は、時に悲惨で目を覆うものがある。
しかし、この作品は気分を激しく落ち込ませない。
それは、多分、醜悪な部分を詳細に描いていないからだろう。

「何故、ただ人種が違うだけで、そんな酷いことをするの?」と頭を悩ませても、そこに「何故」の答えはない。
そこに存在するのは、ただただ理不尽で身勝手な思い込みだけ。

この作品のなかでも、病気がうつるからとメイドのトイレを外につくるシーンがある。
暑くて暑くて頭がおかしくなりそうな外のトイレで用を足していれば、綺麗に着飾った雇い主の若い母親が、出掛けるから早くしろと急かす。
雇い主の若い白人女性は自分自身がまだ子供で、まともに子育もできない。
そんな状況を、メイドである黒人女性は感情を見せずに達観しているのである。

この物語が人種差別を描きながら激しく気分を落ち込ませない理由は、過激な描写がないことと、黒人メイドの女性が賢者のような雰囲気を持っていたり、チャーミングだったりと魅力に溢れているからだ。
今も差別が残るというアメリカ、ミシシッピー州における60年代の物語。
本来ならば、この映画のように物事が軽く済んだり、スパッと爽快であるはずがない。
しかし、魅力的なヘルプ(黒人メイド)たちが、そんな恐怖感を魔法のように払拭してくれる。

ジーン・ハックマンとウィレム・デフォー出演の、「ミシシッピー・バーニング」という80年代の映画がある。
この作品は、1964年ミシシッピ州フィラデルフィアで公民権運動家3人が惨殺された事件をもとにつくられている。
映画でも描かれていたが、実際に起きた事件での犯人はKKKと呼ばれる白人至上主義者で、そのなかには副保安官も含まれていたそうだ。

この映画で描かれる人種差別、そして不合理な利己主義者の横暴さは目を覆うものだ。
映画ではジーン・ハックマンとウィレム・デフォーが演じた熱血FBI捜査官たちが、事件の解明に全力を尽くしている。

しかし、実際に当時の状況を知る人によれば、そんな風に虐げられた人々が巻き込まれる事件や状況に対し必死になってくれるFBI捜査官は存在せず、マスコミで取り上げられない限り、政府も動かなかったのだという。
このように、60年代のアメリカ南部の差別は、目に見えているものも見えていないものも、想像を超えて悲惨なものなのだ。

だからこそ、その部分を優しくオブラートに包んだこの映画は、ある意味ファンタジーの世界だ。
映画のなかで描かれる差別は見ているだけで胸くそが悪いが、メイドさんたちの方が一枚も二枚も上手だし、クールなのだ。
だからこそ、とても心地のよい映画と言える。

思慮深く穏やかでありながら、強い意思を持つ黒人のメイド、エイビリーンを演じるのはヴィオラ・デイヴィス。
この作品で、第84回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされている。

悲しみと怒りの炎を理性でおさえこんでいる雰囲気や、静かに奮起する姿、そして、面倒をみる白人の小さな女の子を愛おしむ姿に感動を覚える。
最近は、「殺人を無罪にする方法」という穏やかでないタイトルのドラマで、敏腕弁護士を演じている姿を良く目にする。
彼女が魅せる、安心の演技力を是非堪能して欲しい。

そのエイビリーンが息子をなくしたとき、そばに居て彼女の生きる光となったミニー役は、オクタヴィア・スペンサー。
ユーモアたっぷりの激情型。
それでいて情に厚く、料理の腕が最高というミニー役で、見事に第84回アカデミー賞助演女優賞を獲得した。

その、クルクル変わる表情は限りなくチャーミングで、決してこの映画を暗いものにさせない力があった。
雇い主である白人女性に対する、臭い立つような!?強烈な”仕返し”も、彼女だからこそ面白おかしく観れたというものだ。

主役を演じたのは「アメイジング・スパイダーマン」でお馴染みのエマ・ストーン。
白人でありながら、黒人たちの良き理解者であり、男っ気が無い仕事熱心で不器用な女性を演じている。
素敵な女優さんだが、この映画では才能ある女優さんたちに囲まれ過ぎて、すっかり観客の視線を彼女たちに奪われてしまったかもしれない。

そして、なんといっても意地の悪い女を演じたらピカイチなブライス・ダラス・ハワード。
この映画で彼女が演じたヒリーは、クラスのいじめっ子でいうところの誰も逆らえない親分的存在。
婦人会の会長をつとめ、ほぼ子分の友人を常に引き連れて歩いているイヤな女を完璧に演じていた。

彼女はこの映画のなかで「アレ」が入ったパイをモグモグ食べるシーンがあるが、実生活では小麦と砂糖を一切口にしないので、あのパイのなかには、ブライス・ダラス・ハワードが食べられる成分のパイが隠れて入っていたらしい。
「ビューティフル・マインド」のロン・ハワード監督の娘でもある。

加えて、おバカだけど心がキレイで優しい白人シーリアを演じたジェシカ・チャスティンはベジタリアンなので、映画のなかで食べているフライドチキンは、実際には大豆などでつくられているとのこと。
ジェシカ・チャスティンは映画「ゼロ・ダーク・サーティ」で高く評価された女優さんだが、この映画でも第84回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。

人種差別という重苦しい題材でありながら、かなりゆるめにユーモアを交えて描いたことで、かえって、その問題を直視しやすくしてくれる映画かもしれない。
女優さんたちの魅力と才能あふれる演技に、是非酔いしれて欲しい。

映画と現実の狭間でROCKするgattoでした。

ヘルプ~心がつなぐストーリー~(2011)

監督 テイト・テイラー
出演 エマ・ストーン/ヴィオラ・デイヴィス/オクタヴィア・スペンサー/ブライス・ダラス・ハワード

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