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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅/映画あらすじ・レビュー(高齢者と息子のハートウォーミングで静かなリベンジ映画)

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 あらすじ

インチキ感丸出しの大金当選通知をにぎりしめ、年老いたウディは周囲が止めるのも聞かず、ネブラスカへの旅に出発しようとする。
見かねた息子のデイビットは、ガミガミと文句を言う母親から少しのあいだ父を引き離し、違う環境でリフレッシュさせようと考え、当たってもいない当選金を受け取るために父と2人旅に出かける。

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 レビュー

映画のあらすじを聞いただけで切ない気持ちが込み上げ、もしも最後まで救いのない映画なら絶対観るのを止めようと思っていた。

自分と同じような経験のある人がどう捉えるのかわからないが、認知症だった父の記憶がまだ鮮明に残るため、リアルな高齢者の悲哀物語も、お涙ちょうだいな綺麗ごとだらけの高齢者物語も見るに堪えないからだ。
正直マシンガンをぶっ放す最強ジーさんとバーさんの映画「ロンドンゾンビ紀行(2012)」の方がずっと救われる。

しかし、どうやら、この映画は少し違うようだ。
監督は「サイドウェイ (2004)」の監督・脚本を担ったアレクサンダー・ペイン。

“人間の爽やかじゃなくて少しおかしなところ”を、何故か温かい雰囲気に包みこんで表現する人ではないか。
そんなことから、なんとなく観たくなったこの作品。そして結果… 泣き死ぬかと思った。

なんて言うと誤解を与えてしまうかもしれないが、決して、お涙ちょうだいの映画ではない。
抑揚は少なく、盛り上がりはゆるやかで、限りなくのんびりした爽快感がある映画だった。
何故こんなに泣けたかというと、ブルース・ダーンの演技があまりにも秀逸だったせいだ。

映画のなかでブルース・ダーン演じるウディは、“騙されやすい”と表現されていた。
しかし、目の動き、表情、動作、言動、歩き方、どれをとっても微妙に認知症をにおわせている。
その“微妙に”のサジ加減がとてつもなく上手い。実際に高齢の役者さんでもあるし、演技ではないかもと感じるほどだ。

しかし、実際の彼を知っていれば、それが完ぺきな演技であることが明確になる。
ブルース・ダーンはタランティーノ監督の「ジャンゴ 繋がれざる者 (2012)」にチョイ出演しており、同監督の新作映画「ヘイトフル・エイト」にも出演しているファンキーなおじいちゃん俳優だ。
西部劇にも悪役として多くの映画に出演した過去があり、女優ローラ・ダーンの父でもある。

この映画には、無口な父と、ウィル・フォーテ演じる親孝行で優しい次男、ちょっぴり嫌味な長男と、口うるさい母親が登場する。
最初の印象が悪かった長男と母親は、物語が進むにつれ愛すべき人物になっていく。

田舎町を四人家族が車で珍道中をするシーンは大いに微笑ましく、映画冒頭から、主人公の所作が父に似ているというだけで泣き死にそうだった私に笑顔をくれた。
兄弟の結びつきや親を想う気持ちも、何気ないこのシーンで十分にあらわれていたと感じる。

また、ガミガミと口うるさくて、モテている妄想壁のある困った人かと思いきや、たかる連中を一蹴したときの母親は本当に強くて頼もしかった。
あれこれ酷いことも言うが、情をあわせ持ち、人を見捨てない人物なのかもしれない。
ウディの元恋人だというエレガントなおばあちゃんがあまりにも魅力的だったので思わず復縁を願ったが、終盤ガミガミおばあちゃんの魅力に気付き、その気持ちを引っ込めた。

この映画のなかではスッキリするポイントが3つある。
一つは母親がハイエナみたいな連中を蹴散らしたとき。
二つ目は、心優しき次男が父を憐みハイエナ男に怒りを爆発させたとき。

そして、ウディが、淡々と静かにのんびり、リベンジしたとき。
そのジンワリ系スッキリのお蔭で、与えられるのは幸せ感であり、心を苦しくさせる映画ではないと実感した。
孝行な息子という宝くじに当たったんだね、ウディじいさん!

映画と現実の狭間でROCKする中山陽子(gatto)でした。

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(2013)

監督 アレクサンダー・ペイン
出演 ブルース・ダーン/ウィル・フォーテ/ジューン・スキッブ/ステイシー・キーチ

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