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フィッシャー・キング/映画あらすじ・レビュー(テリー・ギリアムが独自の世界観で描く心の再生ストーリー)

フィッシャー・キング あらすじ

過激なトークで人気を博し、多くのものを手に入れ慢心したDJのジャックは、ラジオでの不用意な発言で惨事を招いてしまう。
全てを失いドン底まで落ちたジャックは、ある日一風変わったホームレスのパリーに危機を救われる。
この出会いが、2人の光を遮っていた暗い雲をどかす力となっていく…。

フィッシャー・キング レビュー

「慢心」と「絶望」ほど恐ろしいものはない。どちらも幸せを奪い取るものだからだ。
しかし、この映画のなかに登場する人気DJジャックは、その2つを経験することになる。

テレビやインターネットと違い、ラジオはまるで自分に語りかけてくれるような気分にしてくれるメディアだ。
だからこそ、多くのラジオパソーナリティは最新の注意を払っているに違いない。

なおさら、この映画の公開は1991年。携帯もなければインターネットも普及していない。
テレビとラジオという2つの選択肢のなかで、もしも孤独な人間ならば語りかけてくれるラジオを拠り所とするのも無理はないのだ。

しかし、都会の景色を高層から拝める超高級マンションに住み、人気ラジオDJとしてテレビ出演への道を約束されたジャックには、「配慮」というものが片鱗も存在していなかった。
もちろん、自分のファンがこのうえなく孤独で、無責任なアドバイスを極端に解釈するなんて想像もつかなかっただろう。
しかし、それを抜きにしても彼の発言はあまりにも不用意だったのだ。

不用意発言のあとジャックは富も名声も職も失いドン底に落ちるが、はた目から見るとそれ程ドン底ではない。
「髪結いの亭主」よろしく、レンタルビデオショップのセクシーな女性オーナーが我儘をすべて許し面倒を見てくれるし、人から指をさされ続けているわけでもない。
しかし、忌々しい事件と、過去の名声が記憶から離れず、彼はすっかり絶望してしまう。

そんなジャックの前に現れた不思議なホームレス男性パリー。実のところ、置かれている状況は彼の方がもっと深刻だった。
しかし、当の本人は天真爛漫で、そんな様子をまったく感じさせない。
だからそこ、ジャックはパリーの秘密を知ったとき驚愕してしまうのだった。

ジャックを演じるのはジェフ・ブリッジス。数々の作品で評価を得ている素敵な俳優さんだ。
「アイアンマン(2008)」でトニー・スタークを窮地に陥れる重役オバディアを演じたとき、ビックリするほど老けてハゲているっ!と大絶叫したが「クレイジー・ハート(2009)」でもとのセクシーロン毛おじさんに戻っていたので安心した。
(ジェイソン・ステイサムのようなセクシーハゲは“似合う似合わない”があるのだ)

パリーを演じるのはロビン・ウィリアムズ。
この俳優さんの演技力は説明するまでもないが、ひたむきに誰かを愛する役柄が本当に似合う。

内容は全然違うが、そういえば「ストーカー(2002)」ではその名の通りストーカー役を演じていた。
この映画でも最初は軽いストーカーを行うが、あくまでも健全に、一途で誠実な想いを、世界最強に不器用な女性リディアに寄せているだけ。
彼の、愛の告白はこのうえなく心に染みるものだった。

その世界最強に不器用な女性は、「パルプ・フィクション(1994)」のハニー・バニー役でファミレスを襲撃していたアマンダ・プラマー。
ちょっぴり変だけど憎めない女性を演じさせたら天下一品だが、パリーの言葉に一筋の涙を流すシーンの彼女は、純粋に清らかで美しかった。

そして特筆すべきは、ダメダメ男のジャックを母のように包み込む、豹柄セクシー姐さんアンだ。
この役柄を演じたのは骨太な女優さんマーセデス・ルール。実生活の父親は本物のFBI捜査官だったらしい。

彼女はこの映画でアカデミー助演女優賞を受賞したが、これには首捻挫しそうなほど何度も大きく頷いてしまう。
やり手で毒舌を吐くし、ビッチな雰囲気もあり最初はホームレスのパリーにも辛辣だ。
しかし、結果的に彼女を動かすのは「愛」と「情」。
やり手の色気ババアの内面が、感動的なほどイイ女過ぎたために、個人的にはこの映画のナンバーワン・キャラクターとなった。

また、彼ら以外にも魅力的なホームレスのキャラクターがたくさん登場する。
わずかな出演時間だが、シンガー・ソングライターのトム・ウェイツも傷痍軍人役で印象深いセリフを残している。
若かりし頃の「パーフェクト・ホスト(2010)」の変態おじさんデヴィッド・ハイド・ピアースも出演している。

映画のなかで、パリー(ロビン・ウィリアムズ)のフル●ン踊りが果して必要だったのかわからないが、もしも、ひどく落ち込んだときは、魅力的なキャラクターたちと、時折登場する幻想的な空気、優しい感動を与えてくれるこの物語が、心を癒してくれるかもしれない。

映画と現実の狭間でROCKする中山陽子(gatto)でした。

フィッシャー・キング(1991)

監督 テリー・ギリアム
出演 ロビン・ウィリアムズ/ジェフ・ブリッジス/マーセデス・ルール/アマンダ・プラマー

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