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シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~/映画あらすじ・レビュー(ジャン・レノが一流シェフを演じる作品)

シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~ あらすじ

フランス、パリ有数の三ツ星高級レストランのシェフ、アレクサンドルは、目新しいもの好きなレストランの若社長とそりが合わず、料理もスランプ気味で三ツ星存続が危うく、おまけに一人娘ともギクシャクする毎日。

そんななか、料理と舌が天才的でありながら、信念を通すあまり、どこのレストランでも雇ってもらえず老人ホームのペンキ塗りをしていたジャッキーと出会い、起死回生を図る。

シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~ レビュー

この映画は、アイアンマンの監督が本当に作りたかった映画!のキャッチコピーで宣伝されている「シェフ」ではなく、ジャン・レノ主演の方。
ジャン・レノといえば「グラン・ブルー(1988)」と「レオン(1994)」で知られるフランスの俳優さん。

「グラン・ブルー」公開当時、私の周囲では男も女もこぞって「エンゾ(ジャン・レノが演じていた役柄)カッコいい!」と持ちきりで、可哀相なことに肝心なジャック・マイヨール役のジャン=マルク・バールのことは話にも出なかった。
その時、私はどちらかというとジャン=マルク・バールの味方だったため、誠に勝手ながらアンチ派に。

やがて「レオン(1994)」でジャン・レノ人気が最高潮に達すると、けったいなことだが私のアンチ意識がますます沸々と煮えたぎったものだ。
が、今はというと、多くの役を演じるこの役者さんジャン・レノにおめおめと完敗し、無駄なあがきの末、当たり前のことながら普通の一ファンになったのである。

悪役から傲慢な役、武骨な刑事に、心優しい男、フランス映画でもハリウッドでも、主役でも脇役でも、チョイ役でも、あのこわもて顔であらゆる役柄をこなすジャン・レノは、ハリウッドでいえばサミュエル・L・ジャクソンのような感じだろうか。

そして、特に今回の映画「シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~」のように、ちょっと頑固でワガママだけど、優しさと信念がある愛すべき人物を演じる彼が最も好きかもしれない。

この作品では、スランプ気味の一流シェフと、天才的な無名のシェフがタッグを組む。
ご想像の通り「天才的な無名のシェフ」は、いわゆる生意気な若手シェフ。

歳を重ねた多くの人が、若者と接したときに一瞬でも頭をよぎることがあるだろう。
「くっそ生意気ガキだな!」しかし、それを言葉に出さず陰口を言うかもしれない。
もしくは、言葉に出して、二度と修復できない関係になるかもしれない。

しかし、この映画のなかで一流シェフは、若いシェフの言うことを誰よりも信頼せざるを得なくなる。
もちろん、窮地に追い込まれているという理由もあるが、それだけではない。
「天才的な無名のシェフ」ジャッキーは、「一流ベテランシェフ」アレクサンドルを心から崇拝しているからだ。
それゆえに、尊敬する大大大好きなシェフが間違った選択をすることが許せない。

天才シェフ(ジャッキー)が一流シェフ(アレクサンドル)のレシピを勝手に変えたことで2人が厨房で言い争う場面がある。

「俺(アレクサンドル)の料理を勝手にアレンジするな!」
「私(ジャッキー)は彼(アレクサンドル)の料理を熟知している!」
「彼(アレクサンドル)は私(アレクサンドル)だぞ!」
「俺はアンタ(アレクサンドル)より彼(アレクサンドル)を知っている!」

もはや何を言っているのかわからないが、最高の口説き文句ではないか。
こんなん言われたら、どんなに生意気な後輩に対しても、思わず「あ、そうなの?」と言ってしまいそうだ。

一流シェフ(アレクサンドル)は、天才シェフ(ジャッキー)の天才的な料理人としての素質を見込んで厨房に呼び寄せたが、一緒に時を過ごせば過ごすほど、彼が本気で料理と向き合っていることをヒシヒシと感じてしまうのである。

おまけに、アレクサンドルとアレクサンドルの料理を崇拝しながら、当人には一切媚びない。
アレクサンドルは、まるで自分のように頑固で料理に心酔するジャッキーに対して、深い信頼を寄せ始める。

映画のなかでは、シャトーホテル「レ・ゼダン・ドゥ・コロー」の著名な若手シェフ、ブノワ・ボルディエ氏が考案した料理の数々が登場するので、映画鑑賞とともにフルコースを味わった気分になれる。

食材の性質をふまえ、化学テクノロージーを駆使して作る、まったく新しいビジュアル、新食感、新感覚の「分子料理」も登場する。
料理が出てくると、まず説明されないと何だかさっぱりわからない。

どうやって食べたらよいのかわからない料理だ。
古い奴だとお思いでしょうが~(by鶴田浩二)、個人的意見を言わせてもらえば
もう少し食べているものが何なのかわかる料理がいい。

ちなみに、アレクサンドルとジャッキーが時代錯誤な日本人の夫婦に変装して、敵シェフのレストランに出向き分子料理を調査するシーンがあるが、コメディ映画の爆笑シーンとしても、あの部分はちょっといただけない。

ブルース・リーがリンダ夫人とデートしたときに、オードリー・ヘップバーン主演の「ティファニーで朝食を(1961)」で、日本人役の中国人俳優のコミカルな演技を観て気分を害するシーンが「ドラゴン/ブルース・リー物語 (1993)」で描かれている。
それと同じ感覚か、それよりひどい。コメディとはいえ、2012年という時代であれを描くとは。
「ライジング・サン(1993)」のフンドシと女体盛にズッコケてから19年。日本人の印象って、まだそんなもんか。

まあ、私にとってはマイナスポイントである日本人夫婦のシーンも、気にせず大爆笑したという日本の方は大勢いるし、オープニング・クレジットのグラフィックセンスは最高にお洒落だし、料理も美味しそう。
凸凹コンビや、凸凹チームも微笑ましく、終始明るく爽やかな気分になれる映画だ。

天才若手シェフのジャッキー役は「変態ピエロ (2007)」ミカエル・ユーン、その奥さん役には、ラファエル・アゴゲ。
彼女が、まるでリュック・ベッソン脚本「TAXi (1997)」に出ていたころのマリオン・コティヤールのように、とてもキュートでかわいい。

是非ご賞味あれ。
パリに平穏が戻りますように。

映画と現実の狭間でROCKする中山陽子(gatto)でした。

シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~(2012)

監督 ダニエル・コーエン
出演 ジャン・レノ/ミカエル・ユーン/ラファエル・アゴゲ/ジュリアン・ボワッスリエ

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