ワイルド・カード(ちょっと捻り過ぎたジェイソン・ステイサム主演作品)
ワイルド・カード あらすじ
ラスベガスの裏社会とも協定を保ち、用心棒として街に根付く男ニック・ワイルドは、元特殊部隊に所属していた優秀な兵士。
そんな彼のもとに、サイラスという若者が訪れラスベガス滞在中の用心棒を依頼するが、それと同時に元恋人のホリーが、ある男たちに酷い暴行を受けたとニックに告げる。
裏社会との協定があるため一度は躊躇するが、復讐したいと懇願するホリーのため、ニックはマフィアらしき男たちに不本意な戦いを挑む。
ワイルド・カード レビュー
アクション映画で人気を博してしまうと、いずれ、そのイメージがつきまとい俳優さんの足かせとなる場合がある。
ジェイソン・ステイサムもその人ではないだろうか。
相変わらず不動の人気で数々の作品に出演しているが、最近は酷評を受けることも多い。
そして、この映画「ワイルド・カード」も然り。
しかし、この結果は、第一にアクションを前面に出してしまったイメージ戦略がその要因であると思われる。
そして、もともと存在する“この映画のテーマ”のなかに、観客の期待度が高い“いつものジェイソン・ステイサムのアクション”が入り込むことで、2つの物語が混在したように見えてしまったことではないだろうか。
途中、銃をまったく使わない凄腕アクションで相手をのしてしまうアクションで「さすが~」と惚れ惚れしている矢先、「しつこい」と思うほどギャンブルに執着し、挙句の果てに酔いつぶれるシーンがある。
まったく違う物語に見えてしまうのは、この2つの要素がいずれも大きく主張しているからだ。
イケてる男と、ダメダメ男。その要素をあわせ持ち、魅力的なキャラクターを完成させている作品も数多くあるが、何故かこの映画においては「ダメダメ男のシーンは不要」と思われがちなのである。
何故ならば、どう転んでも、ジェイソン・ステイサムはダメダメ男の役は似合わないから。
もしも、最後までダメダメな状態が続いたら、観客から大ブーイングが巻き起こるだろう。
例えば、同じラスベガスが舞台で、酒に溺れ死へと向かう男と、ラスベガスの底辺で彷徨う娼婦との、切ないラブストーリーを描いた「リービング・ラスベガス(1995)」で苦悩する男を演じたニコラス・ケイジは、その役がはまりアカデミー主演男優賞、ゴールデングローブ賞男優賞を受賞する運びとなった。
しかし、同じ役柄をジェイソン・ステイサムが演じたら全くしっくりこない。
そのため、必ず“無敵な強さ”の描写が組み込まれてしまう。それが、結局作品をどっちつかずにしているのかもしれない。
この作品はウィリアム・ゴールドマン著の小説「Heat」を映画化したもの。
小説は未読だが、映画を観れば、男がアクションで悪に立ち向かうことが主なテーマではなく、「長く歩みだせなかった男の再生物語」に焦点が当てられていることに気付く。
つまり、元恋人も、童顔な若者も、イタリアンマフィアも、男が再生していく過程で背景に見える風景のひとつとなる登場人物だ。
しかしながら、いずれの登場人物も非常に重要で、イタリアンマフィアが「きっかけ」となり、元恋人が「動機」、そして、意外にも幼い若者が「道先案内」となるのだ。
よって、物語の大河を見ることが、この映画を楽しむコツといえるかもしれない。
それに、人間の強さは腕っぷしだけではないことも、ささやかに描かれている。
ちなみに、ジェイソン・ステイサムは今回も相変わらずモテモテのキャラである。
どこへ行っても、女性がすり寄ってくるから超がつくモテっぷりだ。
銃を使わず、食堂のスプーンやナイフなどをつかいマフィアを一掃するのも見ものだが、これは、ホームセンターにあるものを駆使する必殺仕事人を描いたデンゼル・ワシントン主演「イコライザー(2014)」の設定が良かったこともあり、先にそちらを鑑賞していると残念ながら新鮮さを失っている可能性が高い。
また、個人的には超能力者SFドラマ「HEROES」で好感度の高い青年としてお馴染みだったマイロ・ヴィンティミリアが、器の小さい極悪人役だったため複雑な気持ちだったが、いずれにせよ、ジェイソン・ステイサムのアクションは相変わらず秀逸だ。
全編バリバリのアクションではないことを想定して観たら、また違った印象を持てるはずなので是非、ご賞味あれ
映画と現実の狭間でROCKするライター中山陽子(gatto)でした。
ワイルド・カード(2014)
監督 サイモン・ウェスト
出演 ジェイソン・ステイサム/マイケル・アンガラノ/マイロ・ヴィンティミリア/ドミニク・ガルシア=ロリド
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