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CINEMAバリQ

パンチドランク・ラブ(フィリップ・シーモア・ホフマンにも会える、アダム・サンドラーがキレまくる映画)

パンチドランク・ラブ 映画あらすじ

内気で真面目すぎるバリーは、姉たちに口うるさくされ情緒不安定気味になっている独身男。
相棒とともに商売をしながら、航空マイレージの特典がついたプリンを大量に購入する日々を送っていたが、ある日、とうとう運命の女性と出会いを果す。

しかし、このうえなく幸せな時間を得たのも束の間、あることから思いもよらないトラブルが勃発してしまう。

パンチドランク・ラブ 映画レビュー

アダム・サンドラーといえばコメディ映画でお馴染みだが、時には「再会の街で(2007)」のように、シリアスな演技も見せてくれる俳優さんだ。

そして、この作品「パンチドランク・ラブ(2002)」も、従来の明るいコメディ映画とは一線を画している。
しかし、シリアスな映画かといえばそうではない。なんというか、この作品は、シュールで辛辣で可笑しくて、そしてチャーミングな映画なのだ。

それもそのはず、監督・脚本はカエルがバッサバサ降ってくる「マグノリア (1999)」のポール・トーマス・アンダーソンだ。
「ブギーナイツ (1997)」や、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド (2007)」「ザ・マスター(2012)」「インヒアレント・ヴァイス (2014)」などの作品でもわかるように、少しシニカルに社会の側面を見つめ、「絶望」と「愛」を作品にパラパラふりかけ味付ける。
まともに向き合ったら、その味が一体なんなのか皆目見当がつかなくなってしまう。
そして、時には人間の恐ろしい側面にゾッとさせるスパイスをブチ込むから、もう味が複雑すぎて感覚が追いつけないのだ。

しかし、この映画「パンチドランク・ラブ(2002)」を観終ると、なぜか謎の力がわいてくる。

アダム・サンドラーが演じるバリーは情緒不安定でキレやすい性格だが、まあ、あの姉たちじゃあねえ…と納得してしまう部分がある。
異常なキレ方をするバリーより、むしろ姉たちこそ危険人物ではないかと思うほど小うるさいのだ。
とはいえ、観客をイライラさせるのはバリー本人も然り。多くの観客たちが「まったく…なんでそうなっちゃうんだよ」と、ため息交じりで彼を眺めてしまうだろう。

ところが、イライラさせた出来事も、キレやすい部分も、なんだか最終的にはプラスに転がり込んでいく。
窮地に陥り、彼はカッコいいんだか、カッコ悪いんだかわからないようなヒーローに変身するのだ。
それを目にした人の感想がどちらに転ぶかはわからないが、少なくても筆者の場合は、この映画の印象を大きく変えるほど好みの展開だった。

しかも、姿勢をなおしてしまうほどパワフルな展開なのに、吹き出してしまうほどピークがあっけない。
それがまた、この監督のワザなのかと感じたのは、筆者がそこにとても惹かれたからだ。

そして、物語の展開を(微妙な感じで)揺るがすシーンでは、在りし日のフィリップ・シーモア・ホフマンがさすがの存在感を示してくれる。
彼がこの作品に姿を現すのは少ないのに…さすがとしか言いようがない。

やがて、甘く、ユーモラスに、幻想的でおかしなラブストーリーは幕をしめる。

映画を観終わった観客の頭のなかで繰り返しリピートするのは、ロバート・アルトマン監督「ポパイ(1980)」で、オリーブが甘ったるい声で歌っていた「He Needs Me」だろう。
筆者も、この映画のタイトルを目にするたびに、その音楽を思いだす。

すぐに泣くし、すぐにキレていた男は、エミリー・ワトソン演じるリナの愛にあふれた瞳に包まれて安心と強さを与えられる。
強烈な「一目ぼれ(パンチドランク・ラブ)」が巻き起こした可笑しな恋は、「He Needs Me」の歌にのってクルクルと上昇し、世界にハートを撒き散らすかも。

わけわからんが、チャーミングな映画を、大らかな気持ちで是非ご覧あれ。

映画と現実の狭間でROCKするライター中山陽子(gatto)でした。

パンチドランク・ラブ(2002)

監督 ポール・トーマス・アンダーソン
出演 アダム・サンドラー/エミリー・ワトソン/フィリップ・シーモア・ホフマン/ルイス・ガスマン/メアリー・リン・ライスカブ

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