【サイン】
決してミステリーではない家族の絆と温かい何かに見守られていることを感じる映画
サイン 映画あらすじ
愛する妻を受け入れがたい状況で失ってしまったグラハム・ヘスは、神への信仰に不信感が生まれ、牧師をやめて農夫となる。
そんな彼の農場に、ある日、突如としてミステリー・サークルが出現。しかも、それは、これから起こる何かを予言するかのように各地で発見されていた。
そして、その予兆はミステリー・サークルだけではなく、動物や電波、グラハムの娘の言動にも現れはじめた。
サイン 映画レビュー
まるで「小津安二郎」映画かと思うほど、真正面からのショットを切り返す淡々とした登場人物の会話シーン。
舞台はほとんどグラハム・ヘスの農場とお家なので、動きが少なく登場人物もさほど多くない。
ミステリー・サークル出現!といったら、のちにバリバリCGで作成したドでかい宇宙船が現れるだろうと思いきや、この物語にそのような演出はない。
実は、ミステリーホラータッチに描かれ宇宙人も登場するが、この映画は家族の再生物語なのだ。
それも、まるでグラハム・ヘス家を舞台にした舞台劇のようだ。
限られた空間の舞台上で、数人の俳優たちの演技力によって臨場感をもたせている感じ。
それゆえに、ミステリーなドキドキ感で映画を楽しもうとした観客は肩透かしをくらうだろう。
しかしながら、自分はこの映画の雰囲気が決して嫌いではない。
この映画同様に酷評されている「ハプニング(2008)」も興味深く鑑賞できたので、結局のところM・ナイト・シャマランが取り上げるテーマや、醸し出す雰囲気が好きなのだろう。
世の中で起こることは、科学だけでは説明しがたいものがある。
ギリギリのところで助けられた状況に不思議な偶然があったり、まさか会えるはずのない状況で、何度も身近な人物に会うことができたりなど…そんな経験が自分にもある。
物事には意味があり、知らず知らずのうちに、そこに導かれることがある。
それを信仰と考える場合もあるが、特に信仰をもたない筆者でも、その力はあると思っている。
目に見えない何かに守れている感じが常にあるのだ。
つまり、筆者はこの映画で語られている2種類の人間の、後者だろう。
このように、この作品は、優しい力に思いを馳せられる映画である。また、危機的状況下で家族の絆が揺れ動き「雨降って地固まる」展開をかみしめられる。
そして、最後の晩餐的な食事シーンでは、子役含めて見ごたえある演技を目にできるはずだ。
特に、心の苦しみを爆発させたイカレ気味のメル・ギブソンの演技がとても良かった。
しかしながら、CM、ポスター、宣伝がドップリとミステリーホラーであっただけに、そのような心に染みる展開を繰り広げられても「おいおい」と言いたくなる人が多いかもしれない。
公開当時のポスターのキャッチフレーズなんて「M・ナイト・シャマラン監督最新作 戦慄の新世紀スリラー」だぞ。戦慄を感じるシーンなんてほとんどないのに。
この作品は完全に、見えない力に守られ(もしくはそれを信じ)再生する家族のお話なのだから。
とはいえ、この映画の中心にあるテーマの心地良さに身をゆだねていると、椅子からズリ落ちてしまいそうになる危険がある。
それは、宇宙人の登場シーンだ。
テレビ番組で “この地球外生物の映像は本物か?”というテーマで検証を行う際の「どこから見てもこれが本物なワケないだろう」といった、できの悪い映像を見せられている感覚だった。
トウモロコシ畑のシーンはまだいいとして、“映画のなかのテレビ映像”で見せられたものや、主人公と対峙するシーン、そして、最後の方でその姿をあらわにするシーンでは思わず「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の割り切ったヤラセ映像を思い出したわ。
まあ…宇宙人のシーンでは持ってるもんをカチ割りそうになったが、少し不思議な感覚で描く、優しさを節々に感じられる雰囲気は、このうえなくM・ナイト・シャマランらしい。
その雰囲気が好きな人には、今作品は受け入れられるだろう。
なお、メル・ギブソン演じるグラハム・ヘスの弟役はホアキン・フェニックスが演じているが、当初演じるのはマーク・ラファロのはずだった。
しかし、頭に腫瘍が見つかり手術のため降板。当時は「シックス・センス (1999)」監督の最新作を降板になったことが、マーク・ラファロにとって痛恨の極みだったらしい。
とはいえ、今となってはマーベルコミック映画から社会派な映画でも大活躍している。
何があっても、結局は輝かしい場に導かれる運命を持つ俳優さんだったのだなあ。
映画と現実の狭間でROCKするライター中山陽子(gatto)でした。
サイン(2002)
監督 M・ナイト・シャマラン
出演 メル・ギブソン/ホアキン・フェニックス/ロリー・カルキン/アビゲイル・ブレスリン
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