【ザ・ロイヤル・テネンバウムズ】
シュールでお洒落なだけじゃない俳優の魅力とベタな家族愛も味わえる映画
ザ・ロイヤル・テネンバウムズ 映画あらすじ
宿泊中のホテルからとうとうツケを拒まれ、別居中の妻が会計士に言い寄られていることを知ったロイヤル・テネンバウムは、一策を講じてバラバラになった家族と一緒に暮らそうとする。
しかし、過去には天才と呼ばれたテネンバウム家の子どもたちは、それぞれが辛い状況にあり、特に長男と長女は父親を嫌っていたため、なかなか事がうまく運ばない。
ザ・ロイヤル・テネンバウムズ 映画レビュー
ファッション雑誌で紹介されるようなオシャレ度の高い映画は、正直言えば少しだけ鑑賞意欲を欠いてしまう傾向にある。
それは、まるで、さほど興味がないアート作品を、「これを理解できないとお洒落じゃない」という強迫観念のなか鑑賞するような気分になるからだ。
そんなわけで、「ダージリン急行 (2007)」然り、「グランド・ブダペスト・ホテル (2013)」然り、今作品「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ (2001)」然り、金太郎アメ並みに、どこから切ってもフォトジェニックなウェス・アンダーソンの映画は、どれに限らずいったん鑑賞を躊躇していた気がする。
とはいえ、やはり気になって観てしまうのは、その作品が持つ「とりあえず映画好きなら観とけ」的な吸引力なのだろうか。
しかし、結果として、どれにも共通するが「意外に泥臭い部分もあって良かった」という感想が生じる。
確かに、色彩もファッションもインテリアも、少し色あせたようなレトロ感のある鮮やかさが、青山か代官山あたりの本屋さんでしか目にしない絵本を開くように美しく少し取っ付きにくい。
なおかつ、シュールな笑いでスノッブを気取る印象があるが、なんだかんだいって、家族の絆や男女関係が意外にベタで温かく、ダメ人間に優しいのだ。
そして、今作品においては、ジーン・ハックマンとアンジェリカ・ヒューストンが演じる、こじれた熟練夫婦の演技が、このうえなく良かった。
ダメ夫を自負し、何度も妻や家族を裏切ったであろう夫は、やはり妻が最高の女であったことを知り、見返りを求めない真実の愛を行使することになる。
そして、妻は、ダメ夫に呆れつつも、母性に似た情を捨てきれない部分が、なんとももどかしくて愛らしい。
ラストは普通のハッピーエンドとは違うが、この2人の男女にとってはハッピーエンドだったのではないだろうか。
多少、グウィネス・パルトローが演じた次女が作為的にシュール過ぎるが、まだ初々しい美しさがそれを助けていた。
クソまじめに偏った方向へ暴走する長男を演じるベン・スティラーも、人は悪くないが間抜けっぷりが突き抜けているイーライを演じたオーウェン・ウィルソンも、それぞれの持ち味を無駄なく披露していた。
次男を演じるのはオーウェン・ウィルソンの実弟ルーク・ウィルソン。関係ないが、この2人に実兄アンドリュー・ウィルソンも加わりハリウッドでは、ウィルソン3兄弟と呼ばれており、3人協力して映画をつくったりと仲良さそうだが、ビックリするほど似ていない。
3人で暮らしていたとき、末っ子のルークは上の兄2人にいじられっ放しだったそうだ。(本作にはまったく関係ない)
また、長男のチャス(ベン・スティラー)ソックリな天然パーマの子どもたちが可愛くて、ベタではあるが、最後には3代で遊びを楽しんでいた様子が単純に微笑ましく感じられた。父の手を握る息子の姿も、ジンワリと…。
そして、最後の方に交わされた、初老の男2人の優しい会話が心に残る。
「みんな俺を嫌な奴だと思っている」
「いや、君は他の人間と少し違うだけだ」
おかしなやつら大集合を銘打つ映画は数多くある。
コメディでも、バイオレンスでも。この映画も、もれなくヘンテコリンな家族大集合の映画。
だけど、家族間では常識でも、他ではちょっと不思議な習慣が1つや2つはあるもの。
むしろ、絵にかいたような「普通の家族」こそ本当にあるだろうか。
もしかしたら、この映画はちょっとオサレでシュールな「渡る世間は鬼ばかり」かも。ちなみに、ナレーターは石坂浩二氏…じゃなかった、アレック・ボールドウィン。
映画と現実の狭間でROCKするライター中山陽子(gatto)でした。
ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(2001)
監督 ウェス・アンダーソン
出演 ジーン・ハックマン/アンジェリカ・ヒューストン/ベン・スティラー/グウィネス・パルトロー/オーウェン・ウィルソン
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