【LIFE!/ライフ】
一歩踏み出す勇気を与えてくれるベン・スティラー監督・主演の心に響く映画
LIFE!/ライフ 映画あらすじ
「LIFE」誌のネガフィルム管理を担当するウォルター・ミティは、自分がワイルドなヒーローであるという空想を頭のなかで繰り広げながら、現実では毎日変わらぬ地味で規則正しい生活を送っていた。
想いを寄せる女性が、独身の男女をマッチングするサイトに登録しているため自分も登録してはみたものの、結局は思い切った行動は何ひとつできずじまい。
そんななか、会社が事業再編することとなり、「LIFE」誌は廃刊することになってしまう。しかも、よりによって最終号につかう写真のネガが見当たらない。
ネガをよこせと新しい責任者から追い詰められる状況に陥り、ウォルターは、その写真を撮影したフォトジャーナリストに会うため、初めて空想ではないリアルな冒険へと旅立つ。
LIFE!/ライフ 映画レビュー
今作品は、もしも、自分の人生を変えたいと思ったことが少しでもあるならば、グイグイ心のなかに入り込んでくる映画だ。
自分の場合は、現実の合間に白昼夢を見てしまう主人公のキャラクターに深い共感を覚えた。
思い通りにならない歯がゆさに心がきしむと、思い通りに事が運ぶ自分を想像し、密かにうっぷんを晴らした経験が何度もある。
ベン・スティラーが演じたウォルター・ミティというキャラクターは、雑誌「ニューヨーカー」の編集者・執筆者として知られるジェームズ・サーバーの短編小説で生まれた。
地味で冴えない男が、空想のなかで英雄となりアドベンチャーを繰り広げる「ウォルター・ミティの秘密の生活」というタイトルの短編小説だ。
既に1947年には映画化されており、この「LIFE!/ライフ」は、その映画のリメイク作品となる。
ジンワリと、爽やかな感動を心のなかに残すこの作品は、大自然のこのうえなく美しい映像で目を楽しませてくれるが、並外れてド迫力の「妄想」映像も見ものである。
途中、徹底的に嫌な奴として君臨し、ひげチームを率いる新たな責任者テッド・ヘンドリックス(アダム・スコット)と、妄想上で「GIジョー(2009)」か?と突っ込みたくなるほどの激しいアクションを披露するが、ブルーバック合成ではなく、実際に道路を閉鎖し、走らせている車のうえで格闘シーンを撮影している。
また、ウォルターがリアルな冒険へと旅立ち、大自然のなかでスケボーにのっているシーンは、スタントマンが演じている部分もあるが、ベン・スティラーも実際に演じていることがメイキング映像などでうかがえる。
つまり、映像からわきでる臨場感は、正真正銘本物なのだ。
そして、一見近代的だがどこか懐かしさのある会社の風景は、実際にアメリカで戦前から2007年まで、写真を中心とした誌面でジャーナリズムを続けた「LIFE」誌の、いまは既にないオフィスを参考にしたらしい。
そんな風に細部までこだわり生まれた作品は、音楽においても心を鷲づかみにする。
主人公が、初めて大胆な一歩を踏み出す際に流れるホセ・ゴンザレスの「Step Out」には、魂を揺さぶるようなエネルギーを感じことができる。
また、スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅(1968)」に触発され生まれたデビッド・ボウイの名曲「スペース・オディティ」が挿入歌として流れるが、これがまたたまらなく良い。
特にお気に入りは、クリステン・ウィグ演じるシェリル・メルホフが、空想上グリーンランドに現れギターを手に優しく歌い、もう一歩踏み出せとウォルターに勇気を与えるところ。
歌も良いし、なんといってもクリステン・ウィグが本当に魅力的だ。
サイモン・ペッグの「宇宙人ポール (2010)」で、これでもかという下ネタギャグをぶちまけていた彼女は、コメディエンヌとしての才能だけではなく、そのチャーミングさが多くの人を魅了するはず。
シェリル・メルホフは、嫌味な奴らがウォルターを茶化すなか、このうえなく自然体で包容力のあるオーラを放ち、優しい言葉を彼に投げかける。
しかしながら、結局のところ、ウォルターは冴えない地味な男かもしれないが、彼は冒険に出る前から、また、空想なんかしなくても、最初から地に足がついたヒーローだと思えた。
幼少時代に父を亡くしたあと、自分のすべてを犠牲にして、母と妹のために働き通した。
そして、その仕事ぶりは、不動の真面目さと責任感で支えられている。
それは、母や妹、部下や一筋縄ではいかないようなカメラマンから向けられる「信頼」が雄弁に物語っている。
そして、ウォルターが最後、嫌味なヒゲ男がぐうの音も出せないほど、完璧な言葉で圧倒するシーンがある。
そのセリフを言い放ったのは、冒険から戻り一皮むけたウォルターではない。始めから存在した、誰よりも男らしいウォルターそのものなのだ。
人は生まれ変わりヒーローになるのではなく、誰の心のなかにでもある「勇気と誇り」、その存在に気付くことでヒーローになれるのだ。
映画と現実の狭間でROCKするライター中山陽子(gatto)でした。
LIFE!/ライフ(2013)
監督 ベン・スティラー
出演 ベン・スティラー/クリステン・ウィグ/アダム・スコット/キャスリン・ハーン/シャーリー・マクレーン
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