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CINEMAバリQ

【オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主】
追悼…アントン・イェルチン

オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主
映画あらすじ

オッド・トーマスはフリーターのごく平凡な青年。しかし、実は強烈な霊能力の持ち主であることを世間に隠していた。
平穏に暮らしたいと願いながらも、この世に無念を残す霊に導かれ犯人逮捕に貢献するため、ワイアット・ポーター警察署長とは強い信頼関係で結ばれていた。
また、オッドには良き理解者である最愛の恋人ストーミーの存在があった。

そんな彼の前に、ある日、おびただしい数の悪霊を引き連れた男が現れる。

オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主
映画レビュー

「スター・トレック」シリーズ、「フライトナイト/恐怖の夜(2011)」「ターミネーター4(2009)」「アトランティスのこころ(2001)」といった数々の有名な作品で、その若き才能を発揮していたアントン・イェルチンがこの世を去ってしまった。
あまりにも突然のことで、ただただ言葉を失う。

しかし、彼が出演した作品のなかで、どれが一番好きかと聞かれたら瞬時に迷わず答えられる。
それが、この「オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主(2013)」だ。

この映画は、ベストセラー作家であるディーン・R・クーンツの小説「オッド・トーマスの霊感」が基になっているという。
原作は読んでいないが、映画そのものに独特な雰囲気を感じることができる。

監督はB級モンスターパニックの傑作ともいわれる「ザ・グリード(1998)」や、「G.I.ジョー」シリーズ、「ハムナプトラ」シリーズを手掛けたスティーヴン・ソマーズなので、SFアドベンチャー、アクション、モンスター、ホラー系はお手のもの。
しかし、この映画から発せられる独特な雰囲気は、その類に手慣れた監督の“~らしい個性”とも、また違う。

それは、もしかして、原作から染み出した空気だったのかもしれない。
そして、俳優さんたちの持つ、少し神秘的なパワーだったのかもしれない。

正直なところアントン・イェルチンを認識し始めたとき、少し不思議な感じがした。
「フライトナイト/恐怖の夜(2011)」でもイケイケな彼女にモテていたし、今作品でも驚くほどかわいい彼女と、美しい女友達がいる役柄だ。
それに、「ターミネーター4(2009)」では、ジョン・コナーの父であるカイル・リースの若き青年時代の役を演じていた。

なぜ不思議かというと、なんとなく、アントン・イェルチンの雰囲気が「イジメられっこだけど芯が強く、オタクで賢い青年」に見えるからだ。
その勝手なイメージのまま彼が出演する作品を観ると、遠からず近からず…でもやはり、その印象とは少し違うのだ。

そのせいか、いつしかこの役者さんを常に意識して観るようになってしまった。
「アントン・イェルチンの魅力は一見しただけではわからない」という想いがどんどん強まり、自分のなかで特別な存在へと変化していったのだ。

それだけではない。彼は、どことなく神秘的なオーラをまとっている。
だからこそ、このオッド・トーマスという役に抜擢されたのだろう。

オッド・トーマスは、人には見えない霊が見えてしまうが、それを世間は知らない。
とはいえ、その行動はあまりにも突飛なので、周囲からは「変わった人」という目で見られる。

しかしながら、彼はいつでも自然体だ。変な目で見られようとも、無理に取り繕ったりはしないし、かといって、特別なアプローチもしない。
そんな対応が、この青年を大人の男にしているのだ。

ただ、オッド・トーマスはスーパーマンではないので、変身もしなければ、腕力に自信があるわけでもない。
彼が特殊なのは、人には見えない霊が見えてしまうこと。その霊が、誰も知り得ないことを彼に教えてくれるというわけだ。

それに、頭の回転も速いし行動力もある。孤独ではないけれど、とても自由な精神の持ち主で群れに留まらず、単独行動が多い。
いうなれば一匹狼だが、それでいて気負う様子がない。
このように、オッド・トーマスというキャラクターは、ごく普通の青年に見えて数多くの魅力を備えているのである。

この映画で、オッド・トーマスの存在を高く押し上げたのは、原作で構築されたキャラクターであり、それをビジュアル化した監督であり、そして、演じたアントン・イェルチンではあるが、一番効果的だったのは、オッド・トーマスの恋人であるストーミーがあまりにも魅力的だったことかもしれない。

同性から見ても、本当に非の打ちどころがないほどストーミーはかわいい。
キュートでセクシーなのに肝が据わっていて、下町の娘さん的雰囲気もある。
スルスルとしなやかにオッド・トーマスにじゃれついて、母性のオーラで彼を包み込み、自分の人生もしっかりと生きる。

ストーミーを演じるのは、アディソン・ティムリン。はにかんだような表情で笑ったかと思うと、時折、愁いを含んだ表情をする。
この女優さんには、この映画ですっかり魅了されてしまった。

物語自体は単純で子供っぽい。
「ゴースト・バスターズ(1984)」的な霊が登場して目を楽しませるし、ハラハラ・ドキドキもあるけれど、見どころは登場人物の魅力と、その関係性ではないかと思う。
オッド・トーマスの良き理解者ワイアット・ポーター警察署長を、強面おじさんウィレム・デフォーが演じているのも嬉しい。

そして、このストーミーの魅力にハマればハマるほど、
オッド・トーマスとの純粋で優しく穏やかな恋人関係に、心を癒されれば癒されるほど、
この映画を忘れることができなくなる。

この映画を思い出す度、胸のギューッとした苦しさを覚える。
それほど、この青春映画のようなホラー作品は思いがけないストーリー展開を見せ、強い印象を残すということなのだ。

しかし、違った意味でますます忘れられない作品になってしまうとは、思いもよらなかった。
どうか、アントン・イェルチンの霊が安らかでありますように。

ライター中山陽子(gatto)でした。

オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主(2013)

監督 スティーヴン・ソマーズ
出演 アントン・イェルチン/アディソン・ティムリン/ググ・ンバータ=ロー/ウィレム・デフォー

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