【ソウルメン】
バーニー・マックとアイザック・ヘイズの元気な姿とサミュエル・L・ジャクソンの魅力が堪能できるソウルミュージック満載な映画
ソウルメン 映画あらすじ
マーカス、ルイス、フロイドは、60~70年代にかけて人気コーラスグループ「マーカス・フックス&ザ・リアル・ディール」として大活躍した3人組。
しかし、マーカスの脱退により、大きく明暗を分けてしまう。
ソロとなったマーカスは大成功を収めたが、残されたルイスとフロイドはデュオを組むも1曲ヒットしたのみで、その後は鳴かず飛ばず。
結局、ルイスは道を踏み外して刑務所入りし、フロイドは事業を起こしてひと稼ぎするも甥っ子にすべてを奪われてしまう。
ところがある日、マーカスの訃報と同時に、ザ・リアル・ディールとしてマーカスの追悼コンサートに出演してほしいと依頼が舞い込む。
乗り気のフロイドと、拒否するルイスは、険悪な状態のまま舞台となるニューヨークのアポロシアターへと向かうべく、西海岸から車で出発する。
ソウルメン 映画レビュー
人生の浮き沈みを経験した中年というか初老の男たちの奮闘を、ファンキーな音楽とブラックカルチャーを背景に、ベタなパロディとコメディで陽気に描いたロードムービー、それがこの「ソウルメン(2008)」だ。
最悪の相性である2人が、あり得ないような失敗を重ねながら、西海岸からニューヨークまで車で移動するロードムービーだが、決して単なるドタバタ・コメディではない。
終盤に差し掛かるころ、追悼式でのデュオコンビ再結成に暗雲が立ち込めたとき、フロイドが大泣きするシーンがある。
一見すると滑稽にも思えるその姿は、紛れもなく二度と訪れないであろう「生きがいを獲得するチャンス」にすがりついた男の、悲痛な叫びだ。
筆者が若くはないせいなのか、その様子が不思議と頭にこびりついている。
今の自分を卑下して、周囲に劣等感を抱いてしまう気持ちは、過去にいい時を過ごした経験があればあるほど生じやすい。実のところ、それは自分にもある。
それに、彼らが若いならまだしも、未来を描けず、ひどく落ち込んでしまうこともある年齢だ。
「夢をみるのは何歳だって構わない」とか、「今ある幸せを大切に」といった前向きな言葉や、至極まっとうな言葉が、綺麗ごとにしか聞こえない時期だってある。
なおさら、この映画の主人公は、人が経験できないような名声を得たあと、ドーンと落ちぶれた初老の男たち。
ムショ暮らしのあと最低で孤独な人生を送るルイスと、アーティストとして失敗するも事業で頑張った挙句、状況は不明だが、甥っ子に地位も金も生きがいも奪われたフロイドだ。
かつては同じ人気グループのメンバーだった1人だけが揺るぎない地位と名声と富を持ち、見たくもないのに、嫌というほど色んなメディアで目に入る。
同じ土俵にいた人間だけに、比較してしまうのは致し方ない。
ちなみに、そんな気持ちを強く持っているのはフロイドの方である。
「俺たちは皆に見下されている」というセリフにもあるように、彼は今の人生にひどく劣等感を抱いている。
しかし、それが、より「アポロシアターで再結成!」への想いを強くして、彼をいきり立たせているのだ。
人生を諦めきっていたルイスも、最終的には感化されてしまうほど、その想いはパワーを持っていた。
人生を諦めた人は、あたかも悟っているかのように見え、諦めない人は、滑稽で幼稚にも見える。
しかし、後者が持つパワーこそが、生きる力なのだ。
そんな2人だからこそ、映画を観進めていると愛着がグングンわいてくる。
それだけではなく、プリンスのパロディや、ブルース・ブラザーズを想わせる雰囲気、キング牧師が銃弾に倒れたメンフィスのモーテル、同じくメンフィスに拠点を置いていたスタックス・レコードのミュージアムなどが映し出され、心をとらえて離さない。
そして、このサントラで一目瞭然の、溢れんばかりのソウルミュージックたちだ。
1. Soul Men (Anthony Hamilton & The Bo-Keys)
2. I’m Your Puppet (John Legend, Bernie Mac & Samual L. Jackson)
3. Private Number (Chris Pierce, Leela James, & The Bo-Keys)
4. Water ( Meshell N’degocello)
5. Never Can Say Goodbye(Isaac Hayes)
6. Boogie Ain’t Nothing /But Getting’ Down(Bernie Mac & Samuel L. Jackson)
7. Just Dropped In/To See What Condition My Condition Was In(Sharon Jones & The Dap Kings)
8. Memphis Train(Ryan Shaw & Bo-Keys)
9. Comfort Me (Sharon Leal)
10. You Don’t Know What You Mean/To a Lover Like Me(The Sugarman 3 ft. Lee Fields)
11. I’ve Never Found A Girl/To Love Me Like You Do(Eddie Floyd)
12. Do Your Thing ( Bernie Mac & Samuel L. Jackson)
この映画を知らずとも、ソウルミュージック好きな人をご機嫌にしてしまう音楽に包まれて、ブラックジョークも下ネタも交えながら、この映画はとことんハッピーに終わる。
そして、改めてサミュエル・L・ジャクソンの魅力や演技力を再確認できるとともに、最高にハッピーなバーニー・マックと、アイザック・ヘイズの姿を、エンディングまでしっかりと脳裏に焼き付けられる、最後の作品でもあるのだ。
ライター中山陽子(gatto)でした。
ソウルメン(2008)
監督 マルコム・D・リー
出演 サミュエル・L・ジャクソン/バーニー・マック/シャロン・リール/アダム・ハーシュマン