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CINEMAバリQ

【ロング・キス・グッドナイト】
当時と現在の印象が変化したジーナ・デイヴィスとサミュエル・L・ジャクソン出演のアクション映画

ロング・キス・グッドナイト 映画あらすじ

サマンサは、愛する家族と平和に暮らす主婦。しかし、なぜか8年以上前の記憶がない。
そのため、私立探偵を雇い自分の身元調査を始めるが、その矢先に交通事故に遭ってしまう。

また、そのショックで記憶が少しずつ戻り始め、同時におかしな行動をとるようになる。
おまけに、見知らぬ男が家に侵入し、襲い掛かってくるという事態が発生。
ところが、サマンサは、無意識に強靭な戦闘能力を発揮し、凶暴な男を倒してしまう。

そんな事態に危機感を覚えたサマンサは、自分の過去に秘められた真実を探るべく、私立探偵とともに旅に出る。

ロング・キス・グッドナイト 映画レビュー

公開当時、この映画はかなり酷い評価を受けていた。また、実際に観た自分も相当モヤモヤしたけれど、今観るとアクション満載でかなり面白い娯楽映画である。
オイオイどこまでアクションを重ねるんだという「特別大盛具だくさん丼」的な気前の良さと、ジーナ・デイヴィスの手足の長さと、すご腕ではないのに不死身に近い私立探偵(サミュエル・L・ジャクソン)の姿にグッとくる。

女版ジェイソン・ボーンというべきか…記憶にない謎に包まれた過去を持つ女を演じるのは、「ザ・フライ (1986)」「偶然の旅行者 (1988)」「テルマ&ルイーズ (1991)」などの作品で演技を高く評価されていたジーナ・デイヴィスだ。

筆者の場合は、当時マドンナの大ファンであったこともあり、そのマドンナやトム・ハンクスらが名を連ねた「プリティ・リーグ (1992)」に出演していた印象が強かった気がする。
そんな彼女が主演のパワフルなアクション映画で、しかも「ダイ・ハード2(1990)」のレニー・ハーリン監督作品と知り、大いに期待したものだ。

しかしながら、長身のジーナ・デイヴィスが、豪快かつスタイリッシュなアクションを繰り広げることを期待して観たところ…アクション以前の問題にぶち当たってしまったのだ。

物語のなかで、ジーナ・デイヴィスが演じる主婦サマンサが微妙に野暮ったいのは、そのあとのギャップをより強烈にするためだと思いワクワクしていた。
しかし、とうとう待ちに待った本来の彼女の姿に戻ったとき…強烈なアライグマ的厚化粧に、驚愕してしまったのである。

当時のジーナ・デイヴィスは、長身でありながらフェミニンな雰囲気が魅力だった。
もちろん、この「ロング・キス・グッドナイト(1996)」で演じるキャラクターは女性らしい女性が主体ではない。

しかーし!とにかく、ある特殊な能力をもつ女、すこぶるカッコいいはずの女が、華麗なるその姿を観客に拝ませる肝心なとき、あの化粧はないではないか。
100歩譲って「化粧はアリ」にしたとしても、ジーナ・デイヴィスにはすこぶる似合わない。
ついでに、チャーリー・ボルチモア(ジーナ・デイヴィス)がすご腕なのか、すご腕じゃないのか、時々わからなくなってしまう状況にも、しばし混乱させられた。

おまけに、監督のレニー・ハーリンは「ダイ・ハード2 (1990)」や「クリフハンガー(1993)」で大ヒットを飛ばしその地位を確立するも、当時妻だったジーナ・デイヴィスを主役に置いた「カットスロート・アイランド(1995)」「ロング・キス・グッドナイト(1996)」で大コケシし、おまけに離婚までしてしまうという悲惨な状況に追い込まれた。

とにかく色々要因はあるが、特にチャーリー・ボルチモア(ジーナ・デイヴィス)のビジュアルが気になって、当時はまったく物語に感情移入できず、モヤモヤとした印象を残した。

ところが、この作品にはかなり不思議な“後味”があり、「なんか久々に観たいな~」という、謎の(ゆるめ)禁断症状に見舞われることがある。
その“後味”とは、強い女が主役で、強面だけどイイ奴キャラがいて、スッキリ気分爽快にラストを迎えられる部分だ。
すご腕の女が悪ガキを子供として扱わず、容赦なく静かに脅すシーンも気に入っている。

そして、再鑑賞するたびに驚いてしまう。
「こ~んなに、アクション満載だったけ?」と。
しかも、敵は弱いがメイン・キャストはどいつもこいつも不死身だ。

何にしても、ご都合主義やジーナ・デイヴィスがおかしな厚化粧で魅力を台無しにされていた部分を取り除いても、この作品はけっこう楽しめるのだ。

1990年代はアクション映画が花火のごとくバンバン打ち上げられた時代。
そのなかで、要素を詰め込み過ぎて(ついでに)化粧を塗りすぎて、逆に個性を欠いたかもしれない今作品だが、意外や意外、今観ると面白い。

蒸し暑い季節に、シュパッとビールをあけて気楽に鑑賞するには、もってこいの作品だ。
是非ご賞味あれ。

ライター中山陽子(gatto)でした。

ロング・キス・グッドナイト(1996)

監督 レニー・ハーリン
出演 ジーナ・デイヴィス/サミュエル・L・ジャクソン/クレイグ・ビアーコ/パトリック・マラハイド

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