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CINEMAバリQ

【雨あがる】
暑すぎてアイスクリームの「PARM(パルム)」中毒になりつつあるので思い出した好きな作品

雨あがる 映画あらすじ

江戸、享保(1716年~1735年)の時代。剣の達人でありながら、なかなか仕官になれない浪人「三沢伊兵衛」と、その妻「たよ」は、長雨で安宿に足止めされていた。
その宿には、同じく足止めされた貧しい人々がひしめき合っていたため、窮屈な空間で次第にギスギスした感情がぶつかり始める。
しかし、伊兵衛の機転で場は和やかになり、彼らに尊敬の念を抱かれるようになる。

そんななか、若侍の果し合いを仲裁した伊兵衛は、藩主の目に留まり、剣術指南番の役職に就くことを勧められるが…。

雨あがる 映画レビュー

ほぼ中毒の状態で、毎日バニラアイスに濃厚なチョコレートがコーティングされている「PARM(パルム)」というアイスバーが食べたくなる症状に見舞われているが、そのお蔭で好きな邦画を思い出した。それがこの映画「雨あがる(1999)」だ。

言わずと知れた、この映画の主役である寺尾聰氏は、アイスバー「PARM(パルム)」のCMキャラクター。
アイスで思い出した映画ではあるが、本当に好きな映画の上位に入る映画なのである。

この物語の原作は山本周五郎氏の短編。それをもとに、故・黒澤明監督が脚本を執筆していたが、完成することなく、この世を去ってしまったのだ。

その意志を、助監督としてサポートしていた小泉堯史氏が受け継いで映画化に至ったという。
それだけに、映画を観進めていくと、黒澤明監督へのオマージュがひしひしと感じられた。

雨に閉じ込められイライラする人々でギュウギュウ詰めの安宿で、夜鷹(江戸時代に道端で客をとった遊女)と、説教爺さんがケンカをおっぱじめた様子を見かねて伊兵衛がご馳走を振る舞うが、そのご馳走で宴会を始める貧しい人々の雰囲気が、まさに黒澤映画だと感じた。

まるで黄砂が舞うような、なにか埃っぽいような映像のなかに、村人が生き生きとする雰囲気だ。
貧しさや、最悪な状況をものともせず、目を輝かせ“その瞬間”を生きる。
まったくの想像だが、故・黒澤明監督は、底辺から湧きあがる捨て身の底力にこそ、人間が持つ本物の「生命の輝き」を感じていたのではないだろうか。

しかし、この映画は決して黒澤明監督へのオマージュだけに留まる作品ではない。

この映画のなかで、伊兵衛が剣豪であることを示すシーンが何度も登場するが、一番ハッとさせられたのは、伊兵衛が珍しくイライラして、丁寧な物腰ながらも襲い掛かってきた連中を淡々と討つところ。
「ヒョイ」「ヒョイ」という感じの動きなのに、ものすごくバイオレンスを感じたのだ。
もちろん血しぶきによる演出もあるが、「刀」というものをリアルに描いていたせいかもしれない。

以前、剣道の大会で優勝して本物の刀を授与された身近な人間に、「刃は触れるだけで手が切れるから、絶対に触れるな」と言われたことがある。
よくある1話完結の時代劇では、豪快に刀を振り回してバッサバッサと敵を切るが、実際のところは、もう少し淡々としたシンプルな動きなのではないかと思う。
そんなリアル感が、この映画の殺陣シーンには感じられた。

また、この映画は、少し滑稽に人間の真髄を描いている部分がある。伊兵衛は、出世して女房に楽をさせたいけれど、なかなか出世できない。
しかし、それは彼が到底人が追いつかないほどの剣豪であり、なおかつ、あまりにもお人好しだから。

つまり、完璧すぎて人々の癇に障るのだ。とはいえ、カチンときてしまうのはプライドのある連中ばかり。
貧しい人々は、すぐに伊兵衛の器の大きさや気の良さに気付き、素直に敬意を表している。
ただ、プライドの高い連中のなかでも、少し短期で子どもっぽい部分があるけれど、裏表のない藩主には好感が持てる。

ちなみに、この藩主・永井和泉守重明を演じるのは黒澤監督と縁が深かった俳優・三船敏郎の息子、三船史郎氏だ。
あまりにも偉大な父親を持つだけに世間の目は厳しいようだが、一部の人が言うように、私もこの人が演じた重明が好きである。

そして、何よりも心をつかんで離さなかったのは、妻である「たよ」の言葉。
藩主につかえるコバンザメ連中に対して、まったくひるまず堂々と言い分を伝えたときは、思わず拍手喝采したくなったほど。
伊兵衛の良いところも、悪いところもすべて受け入れ、誰よりも自分の夫を誇りに思っている「たよ」の強さと愛情深さに感動を覚える。

本来ならば故・黒澤明監督が考えたラストシーンは違うものだったらしい。撮影もしたようだが、最終的には今のかたちに落ち着いたとのこと。

筆者としては、この映画の終わり方がとても印象深かったので、良かったと思う。
また、宮崎美子さん演じる「たよ」が、夫をチャーミングに励ますところも好きだった。

雨あがり、夫婦の絆もより強くなったあと
爽やかな余韻が「これも勝利なのだ」と教えてくれる。

やっぱり今日もアイスが食べたい
ライター中山陽子(gatto)でした。

雨あがる(1999)

監督 小泉堯史
出演 寺尾聰/宮崎美子/三船史郎/吉岡秀隆

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