【アフター・ザ・ストーム】
ヘミングウェイ原作の小説「嵐のあとで」を映像化したベンジャミン・ブラット主演作品
アフター・ザ・ストーム 映画あらすじ
バハマ諸島の楽園で宝探しや便利屋をしながら暮らすアーノは、何にもとらわれず自由気ままに暮らしていた。
夢のような楽園の裏に潜む「悪」に引きづり込まれることもなくアウトローな存在を貫いていたが、ある日、豪華客船が嵐で沈んだことを知ったアーノは、恋人のコキーナと船に積まれていた財宝をいち早く見つけようとする。
しかし、同じく財宝を狙おうとする者たちや、凶暴な生き物が、2人の行く手に立ちふさがる。
アフター・ザ・ストーム 映画レビュー
「ミッド・ナイト・イン・パリ(2011)」ではコリー・ストールがズラをかぶってハンサムなアーネスト・ヘミングウェイを演じていたが、この作品はその文豪が書いた「嵐のあとで」を映像化したもの。
実は、この映画を観賞するにいたったのは、何を隠そうセクシーおじさんベンジャミン・ブラットが出演しているからだ。
日本では限りなく知名度が低いが、お顔は少しばかりサッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドに似ている。
そんなハンサムでダンディでセクシーなベンジャミン・ブラットの姿を拝めるだけではなく、ヘミングウェイ小説を映像化したものだと知りますます興味がわいた。
しかし、この「アフター・ザ・ストーム(2000)」の日本におけるDVDパッケージを観たとき、思わず驚愕してしまったのである。これが、そのDVDパッケージだ。
「え?ヘミングウェイのサメが出てくる映画?」
しかし、鑑賞してさらに驚愕した。
サメは出てくるが、
200%サメのパニック映画ではない。
そして、さらに見続けていくと、またもや驚愕した。
サメのCGが、類を見ないほど酷いのだ。
「え…えぇーーー!?」という声を出さずにはいられないほどだ。
しかし、このCGのまま映画を公開したのは、ある意味「ドラゴンへの道(1972)」のなかで、日本人武術家・長谷平を演じたウォン・インシック氏に「おまいがぁあタンロンかあ?」というマグマ級に下手っぴな日本語を言わせてしまったことに等しいぐらい、すごい。
とはいえ、裏切りや、熱を帯びた視線、疑惑がとりまく人間模様がジリジリと灼熱の太陽の下に浮かび上がり、テレビ映画ながら非常に面白く仕上がっている。登場人物ひとりひとりの真意はわからないまま、人間の『欲』が光を恐れず昼夜亡霊のように飛び回っているのだ。
また、油断ならない人間模様とは相反し、自由気ままに見えながら、主人公アーノが一人になった時に見せる哀愁に胸が締め付けられる。
登場時間は少ないが、ジェニファー・ビールスが演じた、不幸な女性の存在にもだ。
なんにしても、テレビ映画ゆえに予算が厳しかっただろうからサメのCGはいいとしよう。
しかし、DVDのパッケージだけは如何せんいただけない。せっかくの文豪作品が台無しではないか。
逆に、サメのパニック映画を観ようとポップコーン片手にスタンバイしたら、思いのほか物語がドロドロで立ち直れない人が続出してしまうかもしれない。
そして、特筆すべきことはまだある。いや、注意事項と言うべきかもしれない。
それは、アーマンド・アサンテさんのディープキスだ。
正直なところ相当数の映画を観てきたが、あれほど“ねっちょり”したキスにはなかなか出会えない(出会わなくてもいいけど)。
いきなり画面で“ねちょ~”っと始まるので注意が必要だ。
そして、もうひとつ肝心なことがある。
それは、ベンジャミン・ブラットがセクシーすぎることだ。
フェロモンが画面を通して放出されるので、鼻血を出さないように注意して欲しい。
物語の最後は、やはり夢のような楽園の、のんびりした風景を見ることができる。しかし、その時に感じるのは、爽快感とはほど遠い『空虚』ではないだろうか。
『嵐』と『欲』はもたらさず、奪っていくばかりだ。
ライター中山陽子(gatto)でした。
アフター・ザ・ストーム(2000)
監督 ガイ・ファーランド
出演者 ベンジャミン・ブラット/アーマンド・アサンテ/ミリー・アヴィタル/モーネ=エリーゼ・ジラード