【アニマル・キングダム】
タランティーノ監督の2010年映画ベスト20にランクインした衝撃作
アニマル・キングダム あらすじ
母をヘロインの過剰摂取で亡くした17歳のジョシュア・コディは、祖母スマーフに助けを求め引き取られる。
やがて、すぐにジョシュアは祖母と3人の息子たちが犯罪に手を染めていると気づくが、「自分には関係ないことだ」と思い込もうとしていた。
しかし、コディ家と家族同然の犯罪仲間バズが警察に射殺されたことを切っ掛けに、ジョシュアも一家の犯罪へと巻き込まれていく。
アニマル・キングダム レビュー
監督・脚本のデヴィッド・ミショッドは、「メタル・ヘッド(2010)」の脚本を書いた人である。
一見キリスト風の破天荒なタトゥー男が節操なく暴れまくって、不思議と周囲の人々の生きる力を喚起する映画なのだが、「大絶賛⇔不快感」という両極端な評価に分かれた映画だった。
また、今作品「アニマル・キングダム(2012)」においては、タランティーノ監督が評価したことで有名だ。
それらを聞いただけで、この映画も強烈なインパクトがあるだろうと容易に想像させてくれる。
物語は、17歳の少年が母を亡くし、祖母の家に身を寄せるところから始まる。
しかし、自分の母の兄弟であり、祖母の息子である叔父たちと、その友人は、警察からマークされている犯罪まみれの人間ばかり。
そして、それを見守り兄弟たちを仕切っているのは、本来ならば我が子の道を正すべき祖母なのだ。
祖母はジョシュアにいう。
「あなたのお母さんと私はケンカをしちゃったのよ」
実の娘と絶縁した理由が、あたかも他愛ないケンカだったかのように話すが、ジョシュアの母親が、犯罪一家という異常な世界で生きる道を避けたのは明白である。
とはいえ、そのジョシュアの母も死因は薬物の過剰摂取。
17歳の少年が、それまで如何なる人生を送ったのかは、冒頭で見せた彼の行動が全てを物語っている。
救急隊員が動かない自分の母を診ている間も、ついついテレビへと目線を移してしまうのだ。
犯罪一家といえば頭に浮かぶのは「マラヴィータ(2013)」だろうか。かつてはアル・カポネを演じたデニーロが元大物マフィアを演じていた。
FBIの証人保護プログラムで偽名を名乗り密かに生きていたものの、何かあるごとに露呈する家族の極悪っぷりがコミカルに描かれていた。
だが、この映画「 アニマル・キングダム (2012)」にコメディ要素はない。
実在した犯罪一家に基づいて作られているので、楽しむことはおろか、特異な絆で結ばれた家族の異常性に、ゾッとさせられるばかりなのだ。
その実在した一家とは、オーストラリアのペティンギル一家のこと。
ジャッキー・ ウィーヴァーが演じた祖母は、ペティンギル一家でいうキャスリーン・ペティンギルにあたる。
映画のなかで祖母スマーフの生い立ちは描かれておらず、自分の手は綺麗なまま裏で手を回す悪人体質だった。
しかし、実際の人物キャスリーン・ペティンギルは若いころから売春組織を仕切り、麻薬を売買していたそうだ。
右目はギャング抗争で失い、義眼が入っていたそうな。
子供たちの母親であり、ペティンギル一家のボスであるキャスリーン・ペティンギルが犯罪を重ねる姿を見て育った子供たちは、見事に立派な犯罪者へと成長したわけだ。
一家には、無罪放免となった警官2名の射殺以外に、数多くの殺人容疑がかかっている。
他には類を見ない極悪一家だと名高い。
日本でも想像を絶するような犯罪一家による監禁事件があった。
「悪」そのものよりも、その悪が育った「家庭」という場所こそ恐ろしさを感じる。
映画のなかのジョシュアの行動は、全てを終わらせることを意味したのか、それとも、また始まってしまうことを意味したのか。
作品自体に嫌悪感はないが、その土台となった事実には猛烈な不快感がある。
ガイ・ピアース演じる刑事巡査部長が、スマーフにいう。
「いつか破滅するぞ」
だが、実在する犯罪一家ペティンギル一家は、今もまだ健在らしい。
ライター中山陽子(gatto)でした。
アニマル・キングダム(2012)
監督 デヴィッド・ミショッド
出演 ジェームズ・フレッシュヴィル/ジャッキー・ ウィーヴァー/ベン・メンデルソーン/ガイ・ピアース
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