【月の輝く夜に】
若かりしニコラス・ケイジがシェールと共演し注目を浴びた心地よい映画
月の輝く夜に 映画あらすじ
ニューヨークのリトル・イタリーに住むロレッタは37歳の未亡人。白髪が混じった髪の毛を整えることもせず、ただただ地味に暮らしていた。
そんなある日、ロレッタはマザコンの幼馴染ジョニーからプロポーズされる。ロレッタは承諾してしまうが特に深い感情はなく、彼女の家族もその結婚に違和感を抱いていた。
ところが、ジョニーに頼まれたロレッタが、結婚式に招待するためジョニーの弟を訪ねたことで、思わぬ展開が生まれる。
月の輝く夜に 映画レビュー
70年代から音楽シーンで活躍していたシェールは、この映画「月の輝く夜に(1987)」で数多くの賞に輝いた際、史上最高に衝撃的といわれる透け透けドレスで授賞式に登場した。
そもそも、1979年に大ヒットした「テイク・ミーホーム」を歌う当時の姿も、相当に露出度が高くド派手なのだから、驚くほどでもないと思うが。
また、シェールはアメリカにおいて整形手術の先駆者であることでも有名だ。
(正直、もっと強烈な変化を遂げた人はたくさんいると思うけれど)
全身整形といわれてもなお、アカデミー賞とグラミー賞を獲得し、歌手、女優として頂点に輝いた彼女の人気は高い。
もちろん歌唱力や演技力があってのことだと思うが、彼女をいつも頂点に押し上げるのは、その存在感とスター性ではないかと感じる。
今作品は、そんなシェールが主演し高く評価された映画だ。
おまけに監督は、「 夜の大捜査線(1967) 」「 華麗なる賭け(1968) 」「屋根の上のバイオリン弾き(1971)」のノーマン・ジュイソン。
それを耳にするだけでも、この映画に興味がわくというものではないか。
なおさら、まだ有名になる前のニコラス・ケイジが、若く初々しい姿で演技を披露している。
シェールとニコラス・ケイジが2人並んだ様子は、もちろんのごとく猛烈に濃い。
うっすい顔した日本人の私にとって、その濃度は十年熟成特濃ソース以上のものがある。
揚げ物にかけるとしたらレモン2個、大根おろし1/2本分は必要かもしれない。
物語では、シェールが演じた未亡人ロレッタの、花が色づくように艶っぽい変化とともに、イタリア系一家のドタバタが嫌みなく描かれている。
ロニーがパン工場で働いていることとか、兄弟の確執とか、ロレッタの母親の“態度”とか、ロレッタの父親の行動とか、ジョニーのマザコン具合とか、どうでもいいような設定や内容が、(多少強引だけど)不思議とパズルにハマっていき、心地よいラストへとつながっていく。
シェール姐さんが主演なのだから、さぞかしブツ飛んでいるだろうと思いきや、バカバカしくて温かい、家族と恋のお話だった。
そして、このうえないサプライズや、ロマンティックな展開に魅了される。
個人的にお気に入りなのは、オリンピア・デュカキスが演じるロレッタの母親だ。
特に好きなのは、独りレストランで食事して、やがて誰かと意気投合する場面。
その時点で、彼女の役柄に同情心をわかせていたせいもあるが、酸いも甘いも、人生に期待しないことも知る熟練の女性でありながら、恋する女性のような愛らしい表情を見せたことが、なんともいえず印象的だった。
それを飾り気なく、とても自然に演じていたことが最大の魅力だ。
そして、彼女の存在が、この映画をより大人のラブストーリーにしてくれた。「オペラ」というキーワードと等しいぐらいに。
ロニーの純粋で熱いまなざしが、自分を不運な女だと信じ込んでいたロレッタの心に熱い炎を燃やす。
その炎は女の頬をうすい紅に染め、艶と潤いと、目の輝きを取り戻させる。
つまり、この映画は、女性としての自分に構わなくなった中年女性が、バンバン女性ホルモンを出し始める状況を描いている。
それを、ウットリする言葉で表現したくなるような、とてもチャーミングでロマンティックな映画なのである。
だからこそ、人気が高いのだろう。
そして、この映画を観たら多くの人が、パンの真ん中をくり抜き、そこに卵を落としてフライパンで焼く「エッグトースト」を食べたくなるはずだ。
筆者もご多分にもれず、このエッグトーストをつくってみた。
しかし、当時は一般家庭にオリーブオイルが浸透していなかったため、非常に脂っこかった印象がある。
だが、しばらくしてオリーブオイルでつくってみたが、やはり脂っこかった(笑)
満月の夜は、人の心を狂わせるという。
それが、凶暴な狼男へと変身させるのではなくて、ロマンティックな恋に作用するなら大歓迎ではないか。
ライター中山陽子(gatto)でした。
月の輝く夜に(1987)
監督 ノーマン・ジュイソン
出演 シェール/ニコラス・ケイジ/オリンピア・デュカキス/ヴィンセント・ガーディニア
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