【テルマ&ルイーズ】
女たちの爽快で絶望的な逃避行を描いたリドリー・スコット作品
テルマ&ルイーズ 映画あらすじ
アーカンソー州の小さな町でウェイトレスとして働くルイーズと、専業主婦のテルマは、田舎町での退屈な生活から逃れるため週末ドライブに繰り出す。
しかし、途中立ち寄ったバーで、テルマがレイプされそうになり状況が一変。
開放的で楽しいはずのドライブが、絶望的な女たちの逃避行にうってかわる。
テルマ&ルイーズ 映画レビュー
「モンスター(2003)」は、あの美しいシャーリーズ・セロンがビジュアルを180度かえて、連続殺人犯アイリーン・ウォーノス役に挑んだことで有名な映画だ。
しかし、この映画「テルマ&ルイーズ(1991)」も、アイリーン・ウォーノスと、その恋人ティリア・ムーアがモデルだったとは知らなかった。
だが、それも仕方ない。脚色され過ぎて全くの別物になっているからだ。
この映画を観て、連続殺人犯アイリーン・ウォーノスとその恋人を思い出す人は少ないはず。
むしろ連想するのは「俺たちに明日はない(1967)」の方かもしれない。
テルマとルイーズは物語の終盤でキスを交わすが、ルイーズ役のスーザン・サランドンは「性的なものではなく絆を確かめ合うようなもの」と伝えている。
とはいえ、モデルになった2人はレズビアンカップルだったのだから、当初はそのような関係で脚本に描かれていたかもしれない。
だが、映画を製作するうちに全く違う価値観が生まれ、新たなストーリーが出来上がっていったのではないだろうか。
いずれにせよ、誰をモデルにしていようが関係ない。この映画は、清々しいほどの絶望をクールに描いた問題作なのだ。
当時、この映画の評判を聞きつけ、内容を知らずにレンタルした記憶がある。しかも、両親と一緒に鑑賞という間違った選択をした気もする。
映画の中で、テルマ(ジーナ・デイヴィス)をそそのかすチャラい男を演じたのは、まだ無名のころのブラッド・ピットだ。
彼はこの映画からようやく役者として花が開き、オファーが増え収入も増えはじめたらしい。
なるほど、完全なる脇役ではあったが、とても印象深い役柄だった。
ブラッド・ピットは、美形で軽くて性質の悪い男を、とても上手く演じていたように思う。
なぜならば、彼が演じた人物に対し猛烈にムカついたから。
その、観客のムカつきは、ハル・スローコム警部(ハーヴェイ・カイテル)が代弁してくれていたが。
チャラ男(ブラピ)が、浅はかなぶりっ子テルマ(ジーナ・デイヴィス)のパンツをおろしていくのを、両親と一緒に気まずく眺めていたが、クールなルイーズ(スーザン・サランドン)とその恋人ジミー(マイケル・マドセン)のキスも尋常じゃなく長かった。
チュバチュバ、チュバチュバ、チュバチュバ、チュバチュバ。本当にどうでもいいことだが、名作とはいえこの映画を両親と一緒に観るのはやめた方がいい。
しかし、映画はここから面白くなる。
ぶりっ子テルマがクールで強い女に、クールで強いはずのルイーズが、か弱い女に変わっていくのだ。
途中から横暴だった夫をポカーンとさせるほど、ドンドンたくましくなっていくテルマに頼もしさを感じながら、このまま物語は盛り上がっていくのだろうと思っていた。
だが、そのピークは思いがけない方へと向かったのだ。
ハル・スローコム警部の、まるで砂漠の熱気に押され身動きできないかのような、スローモーションで駆けよる姿が印象に残るラストは、観客に衝撃と絶望と、そして、クールな印象を残した。
違う、そうじゃない、そっちじゃないんだ。
心のなかで、そう連呼しながらもバカなことに、
その愚かなカタルシスに少しだけ陶酔した。
いそいそと準備してドライブに出かけた2人の女たちは、最初から既にそこへと向かっていたのかもしれない。
ライター中山陽子(gatto)でした。
テルマ&ルイーズ(1991)
監督 リドリー・スコット
出演者 スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス/ハーヴェイ・カイテル/マイケル・マドセン
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